高卒2年目投手のリリーフ起用について
今季ここまで多くの高卒2年目の投手が1軍登板を果たしています。
今季の高卒2年目に当たる世代は、今井達也・藤平尚真・寺島成輝・高橋昴也の所謂「BIG4」が中心となる、高卒投手が豊作と呼ばれた世代です。
「BIG4」の4名はそれぞれ1軍で先発で起用されていますが、中には1軍でリリーフ起用され戦力となっている投手もいます。
その代表例がオリックスの山本由伸であり、広島のアドゥワ誠でしょう。
この両名は既に一軍で30試合以上の登板数を記録しており、片や勝ちパターンの一角としてパリーグのホールド王、片やロングリリーフからホールドシチュエーションまでユーティリティーな起用に応えるなど、一定の結果を収めています。
ただ、山本に関しては明らかに登板過多気味で、アドゥワに関しては役割の定まらない起用と、多くの方がその起用法に疑問を持っていることは疑いようのない事実でしょう。
高卒2年目の投手をこのようにリリーフでフル回転させる起用法は、その投手の将来に何か影響を与えてしまうのではないかと思っている方も多いのではないでしょうか。
本稿では、過去の高卒2年目の投手で同じくリリーフ起用された投手に焦点を当てて、その後の成績に影響を与えたのか等について見ていこうと思います。
まず、1軍でリリーフで10試合以上登板した高卒2年目の投手を過去40年分まとめたものが上記表①となります。
1980年代は、工藤公康・斎藤雅樹・渡辺久信など名の知れた投手が多いですが、この時代は有望な投手を2軍に漬け込むというよりは、1軍でよりレベルの高い打者と対戦させながら育成するという手法を取っていた、ということでしょうか。
1990年代に入ると、平井正史が高卒2年目にしてクローザーを務め、鮮烈な活躍を見せますが、その後は成績が低迷したことを反面教師にしたのか、育成メソッドの変化からなのか、1980年代に比べその数は激減します。
その流れが変わるのが、2000年代に突入する辺りになります。
この辺りの時代は、所謂ラビットボール(高反発のボール)が使用されていた時代で投手受難の時代である影響からなのか、投手の供給が追い付かなくなってきたのか、高卒2年目の投手が毎年のように1軍の舞台へと上がっています。
ただ、やはり身体作りやフォーム固め等が出来ていない状態で送り出されたからなのか、その後も活躍したといえる選手は五十嵐亮太くらいとなっています。
その後はパッタリ高卒2年目の投手の1軍への供給が止まりますが、再び供給が始まるのが2010年代に入ったころからです。
高校生投手のレベルの向上で、プロの投手との差が縮まったからなのか、トレーニング法の進化からなのか、2軍でじっくりと育成というメソッドを用いる期間が短縮され、すぐに1軍へ昇格するケースが増えています。(リリーフに限らず先発投手についても同様)
時代変遷について述べたところで、今度は高卒2年目の投手が本格的にリリーバーとして起用されることはその後の成績にどのような影響を与えるのかについて本格的に考察していきます。
ここで対象とする投手は、高卒2年目時に30試合以上リリーフ登板の経験のある投手とします。(表①で言うと太字+セル黄色のもの)
高卒2年目時の成績と、その後3年の成績をまとめたものが上記表②となります。
該当投手の成績を見ると、高卒2年目時の成績に対して順調に成績を伸ばすor維持する投手は少ないということが分かります。(ここでの成績の維持とは、高卒2年目時の成績から見て登板試合2/3以下になることなく防御率も+1.50以内に収まっているものと考える)
以上の条件に該当するのは、五十嵐亮太、山田喜久雄の2名となります。(もっと長期的に見ると牛島和彦も維持している)
やはりリリーフとして、数年に渡りクオリティーを維持していくのは難しそうです。
そのままリリーフとして生きていくにしても、再び活躍するまでにインターバルが必要となってしまうこともあります。
ここで言うと、今村猛は2年のインターバルの後の2016年に67試合登板を果たしており、平井正史は2003年に先発としてカムバック賞を受賞後、落合中日の貴重なリリーフとして活躍しています。
その他の活躍の仕方として、先発へと転向することで輝かしい成績を収める者もいます。
これに該当するのが、快速球を誇った伊良部秀輝・小松辰雄の2名でしょう。
伊良部秀輝は先発転向後、最多勝、最優秀防御率、最多奪三振のタイトルを受賞し、MLBへ挑戦するほどの投手となりましたし、小松辰雄も最多勝、最優秀防御率のタイトルを受賞するなど、リーグを代表する投手として活躍しました。
その一方で、高卒2年目時の成績がピークとなり、そこからフェードアウトする投手もいます。
ここで言うと、條辺剛や高橋一正はその典型例でしょう。
明らかに抜擢の早すぎた、反面教師としなければならない例です。
まとめると、高卒2年目時に残した成績からの向上or維持は容易ではなく、復活のためのインターバルが必要になったり、下手するとそのままフェードアウトしてしまう危険性すらあるため、将来大成するには先発へと転向した方が良いかもしれない、といったところでしょうか。
以上より、山本、アドゥワがリリーフとして今年のピッチングのクオリティーを数年維持するのは難しいのではないかと予想します。
しかし、この両名は昨年は2軍もしくは1軍にて先発を務めていましたし、先発適正もありそうですから(特に山本は先発でもいけるでしょう)、来季以降先発へと戻ることができれば、両名のキャリアは幾分違うものになるのではないでしょうか。
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