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2022年坂倉将吾の最適な起用法を探る

昨季リーグ2位の打率.315をマークし、一気にチームの主軸打者まで成長を遂げたのが坂倉将吾です。

捕手としてチームトップの62試合に先発出場しましたが、その一方で経験のない1Bでの出場も多くなるなど、本人が頑なにこだわる捕手以外で出場機会を得る形となりました。

加えて、秋季練習では3Bにも挑戦しており、首脳陣の構想の中では本格的に起用も考えられそうな様子です。
ただ、坂倉本人は1B出場時だと打撃のことしか考えることがないため、打撃成績が落ちてしまうと語っているように、捕手以外での起用は持ち前の打力を落としてしまう危険性もあります。

そうは言っても、會澤翼や石原貴規といったその他の捕手の存在を考えると、様々なポジションに挑戦する必要はあるかと思います。
ということで、坂倉の存在を最大限活かすにはどこのポジションでどれだけ起用するのが正解なのかについて、考察してみようと思います。

1.3B起用で見込まれる貢献度

どのポジションでどれだけ起用するのかを考えていく際に、唯一3Bのみが何のサンプルもないポジションとなっています。
そこで、まず初めに3Bに起用された際に、どれほどの貢献度が見込めるのかについて考えてみようと思います。

打撃面

まず打撃面についてですが、守備負担の大きい捕手から3Bにポジションを移すと、打撃成績にも好影響を与えそうです。
しかし、坂倉自身の打撃成績が1B起用時には低下しているように、必ずしもそうとは言い切れません。

加えて上記検証記事によると、決してポジションの負担の大きさが打撃成績の上下に影響しているとは言えないようです。
ということから、捕手起用時の打撃成績から必ずしも上振れするとは考えられないと言えそうです。

どれほどの変化があるのかコンバート例から計算してみたいところですが、サンプル数も多くなく、有意な数値を導き出せるとも考えられません。
また、「打撃しか考えることがない」ことで打撃成績を落としていることを考えると、同様に捕手と比べるとあまり考えることのないであろう3B起用時の打撃成績は、ざっくりではありますがおおよそ1B起用時と同等とここでは考えたい思います。

以上より、3B起用時の推定打撃成績は1B起用時のOPS.812相当と考えます。

守備面

守備面については、1B→3B時にどれほどのUZRの変化が想定されるかで、その貢献度を予測してみようと思います。

2021年の坂倉の1B/UZRは、473.1回を守り-7.6(UZR/1260に換算すると-20.2)でした。
「デルタベースボールリポート3」によると、守備位置を1Bから3Bに移した際に生じるUZRの変化は、-3.8(UZR/1260あたり)とされています。
となると、坂倉が3B起用された際に期待されるUZRは、昨年1Bを同じイニング3Bを守ったと仮定すると、-9.0という値が想定されます。

トータル

最後に昨年3Bのレギュラー格だった林晃汰の成績と比較してみようと思います。

※UZRは1260イニング換算

両者を比較すると打撃も守備も林の数値を上回っています。
机上ではありますが、坂倉の3B起用はチームにとってプラスに働くと考えられます。

2.ポジション別にもたらせられる貢献度から考えてみる

以上より、3Bでの貢献度は林以上ではないかと推定されます。
かと言って、3B起用に大幅な機会を割くと、NPBでもトップクラスの捕手としての貢献度を縮小してしまうことにもなってしまいます。
なので、各ポジションにおいてどれだけ起用していくのが、最も高い貢献量が出せるのかを考える必要があるでしょう。

※以下データは前提として昨年のポジション別打撃成績をベースとし、その成績を見込み出場打席に換算したものを使用しています。
※各ポジションの総打席数は、昨年のポジション別チーム打席数を出場割合ごとに分配しています。
※坂倉以外の打者の打席配分は、基本昨年のポジション別打席配分をベースにし、今年見込まれるであろう起用(3B田中起用増加等)も反映させています。
※マクブルームの打撃成績は、2020年MLB成績を見込み成績として使用し、最大出場イニングを全体の2/3と仮定してます。

各ポジションを一年間務めた場合

各ポジションを一年間務めた場合の成績を見ると、捕手時の成績が圧倒的に良くNPB全体でもトップクラスの成績を残す計算となります。
守備でマイナスの大きい1Bと3Bは大きな貢献をもたらせそうにはなく、坂倉がもたらす貢献を最大化する方策は、ひとまず捕手を一年間務めることになりそうです。

しかし、チームトータルで考えると、既存メンバーではマイナスの大きい1Bや3Bに坂倉が入ることでマイナスが小さくなることが想像されます。
加えて、捕手には會澤や石原で一定の貢献を見込めることから、一年間捕手を務めるよりも更なるプラスを見込める可能性も考えられます。
そこで、坂倉が各ポジションを一年間務めた成績に、その他のポジションで想定される成績も加えることで、本当に捕手を一年間務めるのがベストなチョイスなのかを考えていきます

上から坂倉が捕手のみを務めた場合、1Bのみを務めた場合、3Bのみを務めた場合をそれぞれ示していますが、坂倉が1Bや3Bを務めることで、確かに生じるであろうマイナス分を補うことは出来そうです。
しかし、一年間捕手として出場した際に得られる利得を1Bや3Bで多少目減りさせてでも、捕手を務める方がより高い貢献度を得られることが上記から分かります。

ただ會澤や石原がいる以上、捕手としての起用機会を全て坂倉に振ることは現実的ではないでしょうから、どれだけ捕手としての起用機会を維持しながら貢献を落とさないかが重要となってきそうです。

ということで、以下の条件別に数値を見ることで、どの条件で坂倉を起用するのが最も高い貢献度を得られるのかを確認していきます。
①50%捕手+50%1B
②50%捕手+50%3B
③50%捕手+25%1B+25%3B
④33%捕手+67%1B
⑤33%捕手+67%3B
⑥33%捕手+33%1B+33%3B

①50%捕手+50%1B

ここでは、捕手の出場機会の50%を坂倉、33%を會澤、17%を石原、1Bの出場機会の50%を坂倉、50%をマクブルームとそれぞれ仮定して、昨年の成績をベースに貢献度を算出してみました。

坂倉が3Bに入らないことによる損失も見るため、坂倉抜きの3B成績も合計してみると、この3ポジションで生み出させるWARは3.8と算出できました。
ここでは、昨年1Bに就くことの多かった松山、堂林といった貢献度がマイナスの選手の起用を抑えられているために、坂倉を捕手で起用するメリットを大きく落とさないままとなっています。

②50%捕手+50%3B

続いては、捕手の出場機会の50%を坂倉、33%を會澤、17%を石原、3Bの出場機会の50%を坂倉、40%を林、10%を堂林とそれぞれ仮定して、貢献度を算出してみました。

この起用法によるWARは2.9となっており、①の起用法よりは低く終わってしまう結果となりました。
坂倉を3Bに起用することでマイナスを圧縮することはできていますが、それでも林や堂林のマイナス幅は大きく、1Bのマイナス分もあり相対的にあまりメリットを享受できない形となってしまっています。

③50%捕手+25%1B+25%3B

捕手で半分起用された際の貢献度のラストとして、1Bと3Bに半分づつ起用された際のものを見ていきます。
1Bの出場機会の25%は坂倉、67%はマクブルーム、8%は松山、3Bの出場機会の25%を坂倉、60%を林、15%を堂林とそれぞれ仮定しています。

この起用法による総計WARは3.6で、②よりは高いものの①には劣る結果となっています。
それぞれのポジションでマイナスを圧縮しているものの、その他の選手の出場機会が増えてしまうことで、その効果は半減してしまっています。
ということで、50%捕手起用するならば、①の50%1B起用がチームとして最も高い貢献量を産むことができそうです。

④33%捕手+67%1B

続いて、昨年見られたような週3會澤、週2坂倉、週1石原といった起用法だと、どの程度の貢献度になるのか確認していきます。
ここでは捕手の出場機会の50%を會澤、33%を坂倉、17%を石原、1Bの守備機会の67%を坂倉、33%をマクブルームとそれぞれ仮定しています。

この起用法による総計WARは3.1となっており、①や③に劣る結果となっています。
多く起用される1BでのWARが伸びず、そこで貢献量を上積みできないのがこのような結果となった要因ではないかと考えられます。

⑤33%捕手+67%3B

④の1B起用を3B起用に置き換えたら、どの程度の貢献度になるのでしょうか?
捕手の出場機会の50%を會澤、33%を坂倉、17%を石原、3Bの守備機会の67%を坂倉、22%を林、11%を堂林とそれぞれ仮定しています。

この起用法による総計WARは2.6となっており、ここまででは最も低い数値となってしまっています。
坂倉の起用を増やしても3Bのマイナス分を埋めきれず、そこに1Bの大幅なマイナス分が加わって厳しい数値となってしまいました。

⑥33%捕手+33%1B+33%3B

最後に各ポジションを均等務めた場合はどうなのでしょうか?
捕手の出場機会の50%を會澤、33%を坂倉、17%を石原、1Bの守備機会の33%を坂倉、67%をマクブルーム、3Bの守備機会の33%を坂倉、50%を林、17%を堂林とそれぞれ仮定しています。

この起用法によるWARは3.7となっており、全体では3番目の好結果となっています。
均等に各ポジションに就くことが、マイナスの抑制に繋がっているようです。
ここでは3Bに堂林を仮定していますが、田中がここに入るとマイナスの大幅抑止となるため、場合によっては①より貢献度を大きくできるかもしれません。

3.まとめ

・貢献度トップ3
1.100%捕手
2.50%捕手+50%1B
3.33%捕手+33%1B+33%3B

・貢献度ワースト3
1.100%1B
2.100%3B
3.33%捕手+67%3B

昨年の成績をベースに算出すると、上記のような結果となりました。
現実的なところでは、捕手として多く出場しながら他のポジションの穴を埋める形、満遍なく各ポジションで貢献量を増やす形がチームにとって最善の選択であることが分かりました。
逆に多大な貢献を見込める捕手で起用しないこと、もしくは穴の大きなポジションを埋めないことが、貢献量を増やせないことも合わせて分かりました。

以上より、捕手で大きな利得を稼ぎながら、1Bで損失の穴埋めすることを優先すべきだということが言えそうです。
ただ3Bをこなすことによっても、一定の損失の穴埋めは可能なため、挑戦することはそれなりに意味のあることと捉えられると思います。

最後にあくまで昨年の成績をベースとしているため、1Bや3Bを務めるであろう選手たちの成長があれば、ここで見てきた構図ももちろん変わってくるはずです。
既存選手の奮起や成長にも期待しながら、参考程度に楽しんでもらえると幸いです。

・データ参照


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