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飛ばない金属バットの導入は打者のレベルアップにつながるのか?

日本の野球界において、高校野球以下のカテゴリーでは、現在木製バットではなく金属バットが使用されています。

プロ野球では木製バットを用いているわけですから、下のカテゴリーにおいてもわざわざ金属バットではなく木製バットを使用するのが最もなようにも思います。

また金属バットだと、「金属打ち」と呼ばれる金属バットでしかボールを遠くへ飛ばせないような打ち方が身についてしまうこともあり、打撃技術の向上という面でプラスには働きません。

しかも高校生という、ある程度身体が大人に近づいた状態の選手たちに金属バットを持たせるのは、打球速度が上がりすぎるなどして、かなり危険なようにも思います。

以上のように見ると、金属バットを導入していることは、あまりメリットのないし危険なことのように思えますが、そのような状況下でもなぜ長年に渡って金属バットは使用されてきたのか。

それは金銭的な問題が大きいでしょう

金属バットは滅多に折れるなどして使用不可能になることはありませんが、木製バットだと簡単にバットが折れてしまうため、必然的に金銭的負担が大きくなります。

このように木製バットは金銭的負担が大きいことを理由として、競技人口に非常に多い高校野球には中々採用されづらい状況です。

そんな中米国では、下記記事にあるように木製バットと同じ反発係数に調整された飛ばない金属バットの使用が義務付けられているそうです。

反発係数を抑えた金属バットがあるなんてことは私も初耳でしたが、確かに打者の技術的なレベルアップを促すには手っ取り早い方策なようにも感じます。

しかし、本当に米国と同様に日本でもこのようなバットを本格導入したところで、本当に打者のレベルアップにつながるのかという疑問も私の中であります。

今回はその疑問に対する私なりの考察について記述していきます。

NPBにおいても、過去にバットではありませんが、低反発なボールを採用した時期がありました。

それが2011~2012年の低反発統一球の導入です。

2010年以前は、各球団がそれぞれのホームゲームで使用するボールを決めて、それを公式戦で使用するという形でしたが、2011年にボールを国際大会仕様に近づける意図のもと、全球団統一のボールが使用されることとなりました。

そのボールは元々反発係数が従来よりも低い設定でしたが、実際の使用球は下限値を超える反発係数の低さで、とんでもなくボールが飛ばない事態となりました。(2011年939本と2010年の1605本からホームラン数が激減)

その結果、打者のレベルはどうなったのかと言うと、多くの打者は飛ばないボールに対して長打を狙うことを諦め、単打狙いに向かったように感じます。

実際にこの2年間でスラッガータイプの新たな選手の台頭は無かったでしょう。

強いて言うと、2012年に14本塁打を放った広島の堂林や10本塁打を放ったDeNAの筒香くらいでしょうか。

打者の技術の結晶であるホームランを狙わなくなったということは、技術の向上を諦めたとも捉えられますし、決してレベルアップにつながったとは言い難いでしょう。

また現在、韓国では高校から木製バットが使用されています。

上記記事によると、2005年以降の高校野球における木製バットの導入により、打者の指導法が変わり、遠くに飛ばすことよりもコンタクトに重きを置く指導となっているそうです。

その結果、高卒新人にして新人最多安打記録を作るなど、プロレベルに対応できる選手も出てきているようですが、スラッガータイプの選手が減ってきているということが言いたいのでしょう。

ここから、木製バットを用いることで、木製バットへの適応期間が短くなるというメリットはありますが、どうしても指導が飛ばすことよりもコンタクトに重きが置かれるため、ホームランバッターは出にくくなると言えるのではないでしょうか。

ということは、木製バットを用いることでレベルが上がってるとは言い切れないように思います。

このように、飛ばないバットやボールを単に採用するだけでは、打者のレベルが上がるとは言えないでしょう。

ただこのような施策を否定しているわけではなく、長打を狙うことを諦めるのか、飛ばないバットやボールでも長打を打つことのできるスイング・フォームを理論的に組み立てていくか、という考え方一つで、この施策が打者のレベルアップにつながるかどうかが決まってくるのではないでしょうか。

そのためにもプレイヤーや指導者が遠くへ飛ばすことをあきらめるのではなく、どうやったら飛ばない金属バットでも飛ばすことができるのかといった思考で取り組むべきではないでしょうか。

#野球 #プロ野球 #高校野球 #金属バット #低反発

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