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コロナがきてもコーヒーを伝え続ける。

過去最大の逆風が飲食店経営に吹いている今、僕たちが信じる美味しいコーヒーを伝え続けるために何を考えてどんなことをしているか、遡って書いてみたいと思います。


[思い]美味しいコーヒーを広めたくてはじめた店舗

僕は大学に入ってすぐ、チェーン店のカフェでアルバイトをはじめました。その時は苦いコーヒーが苦手で、ブラックでは飲めずミルク入りのラテを好んで飲んでいました。

「この苦味がわかると大人なのかな」と思いながらもカフェは好きだったので、いろんなコーヒー屋さんを回っていました。そして、そんな自分でも感動的に美味しく感じるコーヒーに出会いました。それが「シングルオリジンコーヒー」。生産者ごとに仕入れて浅めの焙煎で豆の個性を最大化した、超フルーティなコーヒーでした。

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▲好きすぎて海外までコーヒー巡りしました。これはロンドンのTAP COFFEE。海外のコーヒー屋さんを夢中で回った旅の記事も書いたのでよかったら。

「なんでこんなに果実の味がコーヒーからするんだろう!」と興味を持ち、自分もそんな美味しいコーヒーをつくってみたくどうしようもなくなり、借金して焙煎機を買って実家のリビングの壁に穴を開けて焙煎を始めてしまいました。

自分が感動した、いちごやオレンジの味がするワクワクするコーヒー、豆ごとに違いが楽しくて、軽くて透き通っているコーヒー。焙煎してドリップして友達に飲んでもらっているとみんな感動してくれて嬉しかったので、もっとたくさんの人にその魅力を伝えたい、と思うようになりました。広まるほど正当な対価がわたる生産者も増えるはずなので、社会的な意義にも燃えました。

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▲はじめて買った1kg焙煎機。


[学生起業]お店を出してコーヒーを伝えはじめる

そうして、いてもたってもいられず、追加融資を受けて吉祥寺にLIGHT UP COFFEEをオープンしました。僕が感動した美味しさをもっとみんなの日常に届けたいと思って、緑が綺麗な公園の前、穏やかな住宅街を選びました。

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「コーヒーってただ苦いだけじゃないんだよ」と伝えたくて、どんな体験がいいか考えました。僕はコーヒーを同時に飲み比べた時に「なぜこんなに味が違うんだろう」とびっくりしたので、初めてのお客様には味比べ体験をして欲しいと思って、看板メニューとして3種類のコーヒー飲み比べセットをつくりました。

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コーヒー苦手だと思っていた人でもコーヒーが飲めるようになったとか、自分の好きな味が見つかったとか、いろんな声をいただき、自分が伝えているコーヒーの魅力は共感されるものなんだと、実感と自信が沸きました。


自分が好きなコーヒーを、自分のお店をもって伝えることは本当に楽しいです。実際にカタチあるものでブランドをつくること、「美味しかったよ」とすぐにお客様からリアクションがもらえること、香りや味や色など五感で感動を伝える体験作り、第二の家ともいえる自分の拠点があること、そしてなにより大好きなコーヒーをつくること、どれもが他では変えることのできない最高の仕事です。

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[新サービス]もっと広げるためのスタートアップ

そこからさらに3店舗をオープンしたのですが、自分が思い描いていた、日本どこでも気軽に美味しいコーヒーが飲める世界、ワインと同じように文化が浸透して多くの日常に美味しいコーヒーが根付いている未来、とは現状は程遠く、いいモノはあるのに伝えきれないモヤモヤで苦しみました。店舗経営の資金繰りも容易ではなく、ビジョンと現実のギャップによるストレスでおかしくなっていました。


そこで今の現実に目を向けてみると、カフェの売り上げはどうしても土日に偏り、平日は働く人が来れないのが実情です。忙しく働く人ほどオフィスではコーヒーを飲むけど、カフェに行く時間はないので、オフィスに「美味しいコーヒー」を届ける仕組みを作れたら、働く人もきっと喜ぶし事業としても拡大できると考え、toBのコーヒーデリバリーサービス"WORC"(ワーク)をつくりました。

[コロナ到来]toBからtoCへの急速転換

店舗にエネルギーを注ぎ続けながら、2019年の年末に"WORC"をつくり、投資家も招き資金調達もしました。営業チームをつくったり、物流網を開拓したり、ポットでも美味しさが保つ方法を開発したり、「働く人のための美味しいコーヒー」を世の中に浸透させようと打ち込んできました。


そこで2020年頭、ついにコロナの到来です。

オフィスという、物理的空間に頼っていたモデルでのtoBコーヒーサービスは、この形では継続拡大が難しいと判断せざるを得ませんでした。

しかしそこでは挫折しませんでした。明確な環境の変化の中で変わらずコーヒーが飲み続けられているのをみて、むしろ不謹慎かもしれませんが、今やるべきことが明確になり心のモヤが晴れた気持ちでした。


例えばAmazonでコーヒー器具を検索していたら軒並み在庫切れになっていたり、Instagramではじまった「おうち時間」のハッシュタグ。僕たちがやりきれていなかった、家でコーヒーを楽しむ体験がまさに求められていると強く感じました。

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toCのブランド作りからはじまり、toBで多く広げようとしていたのが、toCの体験作りにもどりました。まだまだできることはあるよ、というメッセージだったのかもしれません。そんな風にポジティブに捉えて、目の前のできることをやっていこうと決めました。


[新商品開発]新しいコーヒー体験をつくる

「どうやったら美味しいコーヒーを楽しむ人が増えるだろう」と、僕はコーヒーの伝え方や体験について毎日考えていました。その中で壁だったのが、コーヒー豆は器具を持っている人しか買えないという、コーヒーの技術的・精神的なハードルです。

コーヒーは淹れる技術がややこしく、豆を届けても、淹れ方によって違いが出てしまうのが、楽しいところでもあり、難しいハードルでもあります。器具を揃えたり淹れる手間や時間が必要だったり。もちろんみんなが、これを楽しめるくらいコーヒーを好きになってもらえたら最高ではあるのですが。


淹れ方を伝えるために、note書いたり動画作ったりもしてみたり。


そんな中、僕はコーヒーを「なんか美味しい」と楽しめる、階段の一段目が必要だと考え始めました。

産地情報や味の表現なんて気にせず、頭ではなく心で素直に楽しんでもらえたらそれでいいという気持ちです。味を突き詰めている作り手側の立場と、コーヒーの知識は持っていないけど飲んだら美味しいと思う人、との間にギャップがあると思いました。

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そこで、コーヒーの階段の一段目になるような、器具や知識なんか何にもなくても楽しめる商品をつくろうと試行錯誤しつづけました。

ティーバッグ式のコーヒー「コーヒーバッグ」をつくってみるととても反響がありました。もっと気軽につくれるコーヒーを考えていたのですが、やっぱり家では抽出することに難しさがあるので、美味しく淹れるところまでバリスタがやってしまおうと考えて、美味しいまま家に届けられる方法を考えていました。

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最初は瓶詰めしたアイスコーヒーを密閉して冷蔵便で送るとか、いろんな案があったのですが、結局コーヒーは液体だから酸化して風味が飛んでしまうので、体験の質に限界がありました。そこで、それなら固体にしてしまおうと、エスプレッソの冷凍を考え始めました。

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エスプレッソはドリップの8倍の濃さがあるコーヒーで、お湯で割るとそのままブラックコーヒーになり、ミルクで割るとカフェラテになる、お店の根幹の味です。凍ったエスプレッソにお湯をかければ、溶けてちょうど良い温度のコーヒーになると思って試したところ、期待以上に美味しく、冷凍して日にちが経ってもずっとお店で淹れたての味でした。

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ミルクに入れて温めるだけのカフェラテが美味しすぎて、これこそ階段の一段目になるだろうと、「エスプレッソキューブ」という名前で商品化・販売を最速ですすめました。僕自信カフェラテが好きで、そこからだんだんブラックを好きになってきたのと同じ階段です。


コーヒーを食べる体験も楽しいと思い、コーヒーゼリーもはじめました。世界一美味しいコーヒーゼリーを目指して、まるでフルーツゼリーのような味わいの、コーヒーが持つフルーティな美味しさだけを凝縮させたゼリーをつくりました。毎週完売する人気商品になりました。

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コロナは本当に僕たちの暮らしや、当たり前だった日常を大きく変えてしまいました。僕は、美味しいコーヒーで人に幸せになって欲しいとコーヒー屋をはじめています。どの仕事もきっと誰かに幸せを届けることが目的なはずです。大きな変化があって、求められる幸せが明らかで強くなったからこそ、僕はより強い使命感を持ちました。

そして、アイディアを実行できるのは一緒にコーヒーをつくり伝える仲間がいるからで、本当に感謝が尽きません。

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飲食に限らず、できることが狭まってしまったた仕事も多いと思うのですが、裏を返すと、できることや求められていることが明確に浮き出ているんだと考えるようにしています。つらい出来事も多いのですが、ポジティブに、もっというと自分の都合のいいように解釈して、情熱を注ぐ時なんだと思います。

今だからこそできることをやりきって、時代が動いても、環境が変わっても、変わらない「美味しさ」と新しい「幸せ」を届け続けたいと思います。


川野優馬



さいごに

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