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変形性股関節症

今日は変形性股関節(以下、股関節OA)についての記事を書こうと思います.

◎一次性と二次性股関節OA

股関節OAには一次性と二次性があります.
一次性:明らかな原因疾患がなく,加齢に起因するもの
二次性:原因疾患に続発して生じるもの
→先天性股関節脱臼,寛骨臼臼蓋形成不全症など

◎疫学

☑︎一次性股関節OAの頻度は,統一された診断基準がないため, 研究結果によって差があるが概ね20%以下である.と報告されています.
(宮武 和正:変形性股関節症(人工股関節置換術):MB Orthop.30.2017より)

☑︎二次性股関節OAが80%程度を占めるが,二次性股関節OAの中で,我が国では寛骨臼形成不全に起因するものが80%を占める.
☑︎寛骨臼形成不全が重度であるほど,股関節OAの発症年齢が低くなる.
☑︎両側罹患例は全体の56%を占める.と報告されています.
(Jingushi S et al:Multiinstitutional epidemiological study regarding osteoarthritis of the hip in Japan.J Orthop Sci.2010より)

目の前の症例さんが,一次性股関節OAなのか二次性股関節OAなのか理解した上で理学療法評価することが大切だと思います.
そのためには,寛骨臼臼蓋形成不全症について理解しておく必要があります.今後記事にしていきます.

◎病期分類

帖佐 悦男:変形性股関節症の診断と治療.2006より引用

上記の画像の「前」は,前股関節OAを指しますが,前股関節OAは寛骨臼形成不全を
背景に有する場合のみに該当するとされています.
一次性股関節OAの場合は,正常,初期,進行期,末期に分類されます.
(宮武 和正:変形性股関節症(人工股関節置換術):MB Orthop.30.2017より)

進行期まで進行すると骨嚢胞が確認されます.
骨嚢胞は表層嚢胞と深層嚢胞に分けることができ,表層と深層嚢胞で骨嚢胞の成因が異なると言われています.

☑︎表層嚢胞は,臼蓋形成不全などにより単位荷重量が著しく増大した骨頭の関節軟骨の摩耗部直下に形成される.直接的に加わる過度の外力に抗しきれずに骨梁に骨折,壊死等が起こり発生する.

☑︎深層嚢胞は,荷重部に存在するものから外側非荷重部に存在するものにつれて,大きさが大きくなる傾向にある.また,骨頭内に存在する骨嚢胞の数も少なくなる傾向にあった.骨頭の外上方偏位が進み,荷重部に形成された骨嚢胞が境界部,外側非荷重部に移動するにつれて,骨形成が減少し,相対的な骨吸収が活発になることで骨嚢胞が巨大化していく.と報告されています.
(関水 正之:変形性股関節症における大腿骨頭骨嚢胞の病理組織学的ならびに骨形態計測学的研究.昭医会誌 第51巻 第4号.1991より引用)

この報告から,私は以下のように解釈しています.レントゲン画像で骨嚢胞が確認される症例にあっては,関節軟骨が摩耗し,軟骨下骨に荷重負荷が加わることで疼痛を惹起している可能性がある.
自分の担当している患者様が進行期や末期股関節OAの場合,主訴の疼痛は軟骨下骨を含めた関節内症状の可能性があることを念頭に置いて評価、治療を進めることが大切だと思っています.
変形があるから痛い,ではなく患者様の痛みを拾っている組織は何か?を考えることが大切です.

◎画像所見と臨床症状の関連性について

☑︎股関節OA grade2以上の患者を対象に,レントゲン所見と股関節痛の関連性について,男女ともに60歳以上で股関節痛と最も強い相関があったものは,関節裂隙2mm以下であった(オッズ比 男性3.3 女性3.2).
(Jacobsen S et al:Radiographic case definitions and prevalence of osteoarthritis of the hip.Arch Phys Med Rehabil 2004より)

☑︎股関節痛とレントゲン所見で相関があったのは,最小関節裂隙幅が1.5mm以下であった.また,検者間信頼性,検者内信頼性も良好であった.
(Croft P et al:Defining osteoarthritis of the hip for epidemiologic studies.Am J Epidemiol 1990より)

以上の報告から,レントゲン画像上で関節裂隙幅が1.5mm~2.0mm以下の場合は股関節痛を有するリスクが高いことが示唆されます.

上記2点をまとめると
レントゲン画像から,最小関節裂隙幅や病期を把握しておくと患者様の疼痛の程度や
関節内症状なのか関節外症状なのかを推定する一つの理学評価になります.
☑︎最小関節裂隙幅が1.5~2.0mm以下の場合は股関節痛が強いかもしれない
☑︎進行期や末期股関節OAに該当する場合,軟骨下骨由来(関節内)の疼痛が生じているかもしれない.骨嚢胞はその参考所見の一つであると私は考えています.
ただ,画像所見=臨床症状ではないことに注意が必要です.画像上の変形が強くても疼痛がない方や疼痛が強くない症例さんもおられます.あくまで画像所見は一つの参考所見として捉えて,画像所見と理学療法評価を併せて総合的に病態を解釈することが大切です.

以上になります.最後までご覧頂きありがとうございました.
次回は二次性股関節OAの原因疾患に該当する寛骨臼臼蓋形成不全症についての記事を書こうと思います.良ければご覧ください.

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