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寛骨臼臼蓋形成不全症

本日は寛骨臼臼蓋形成不全症についての記事を書こうと思います.
前回の変形性股関節OA記事で,二次性変形性股関節症の原因の80%を寛骨臼形成不全症が占めると記載しました.寛骨臼形成不全症について理解しておくと,目の前の患者様が一次性変形性股関節症なのか二次性変形性股関節症なのかを理解しやすくなります.

◎病態

C.Abraham:Biomechanical analysis of acetabular dysplasia: Foundations for improved clinical care.2014より引用
※Dysplastic Hip:寛骨臼臼蓋形成不全

☑︎寛骨臼臼蓋形成不全症は大腿骨頭に対する寛骨臼の被覆率が減少している病態であり,局所的な応力集中が生じる.と報告されています.
(小松 幹治:寛骨臼形成不全症における骨盤傾斜が股関節面に与える力学的影響.臨床バイオメカニクス.2021より)
また,
☑︎体重増加に伴い,最大応力が増加する.
☑︎健常者と比較して,平均応力が2倍になる.と報告されています.
(東藤 貢 ほか:股関節の応力状態に及ぼす臼蓋形成不全症の影響.臨床バイオメカニクス 31.2010より)
寛骨臼形成不全症を認める場合,健常者に比較して股関節に加わる応力が高くなり,変形性股関節症を罹患しやすいことが理解できます.

◎ヒトの進化の過程からみる股関節

ヒトは4足歩行から2足歩行に進化した過程で股関節屈曲位→股関節伸展位になりました.
本来は股関節は屈曲位で関節安定性が高く,股関節伸展位で不安定になりやすい構造をしていることが,股関節周囲の靱帯構造からも伺えます.
人体最大の靭帯といわれるY靭帯(腸骨大腿靭帯),その他,坐骨大腿靭帯,恥骨大腿靭帯など股関節周囲の靱帯構造は全て股関節伸展位で緊張します.

Elizabeth H et al:Patients  With Generalized Joint Hypermobility HaveThinner Superior Hip Capsules and Greater Hip Internal Rotaion on Physical Examination.2022より引用

iliofemoral ligament:腸骨大腿靭帯→伸展,内転,外旋で緊張
Ischiofemoral ligament:坐骨大腿靭帯→伸展,外転,内旋で緊張
Pubofemoral ligament:恥骨大腿靭帯→伸展,外転,外旋で緊張

◎まとめ

寛骨臼形成不全症では,構造的に大腿骨頭の被覆率が低いために,関節軟骨への応力増大することから,代償的に骨盤前傾位になることが多いです.また,骨盤前傾に付随して過度な腰椎前弯が見られます.
つまり,寛骨臼形成不全症を背景にした二次性変形性股関節症の患者様は,上記のアライメントから,腸腰筋,大腿直筋,大腿筋膜張筋などの股関節屈曲筋,腸肋筋や多裂筋などの腰椎伸展筋が拘縮している可能性があることを念頭に置いて評価,治療を組み立てる必要があります.

以上になります.
最後までご覧頂きありがとうございました.

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鵜呑みにせず,興味のある方はぜひ論文を読んで頂ければと思います.

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