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青少年保護育成条例を語ってみると



色々と苦労させられたサークル活動でしたが、同人バブルもアダルト規制
が始まり一気に下降線を辿ります。
これはそのまま同人活動全般のブレーキにもなりました。


東京都の「青少年保護育成条例」により同人誌も「有害図書」に指摘される
ことになります。もともと昔から、古くは「ハレンチ学園(永井豪作品)」のころから行政とPTAなどはエッチな漫画を規制しようとしていました。

これは何度も形を変えて繰り返し行われています。
規制するきっかけをいつも狙っているようなところがありますね。そんな規制でより良い生活が送れるわけではなく、権力を持つものが人を縛るために行って自己満足するだけのものに思えます。


まずはアダルト規制の経過から──。


すでに程度書きましたが、1980年代におこったロリコンブームから続いていたようで、同人誌では男性向け同人誌を委託販売していた東京都内の書店、「コミック高岡」・「まんがの森」新宿店・「書泉ブックマート」の店長及び店員が猥褻図画販売目的所持で警察の取締りを受けることになりました。

また、「ミニーズクラブ」等美少女系同人誌サークルが摘発を受けることになり、この他印刷業者なども含め女性3人を含む総計75人が逮捕または書類送検されていいます。

この「ミニーズクラブ」というのは代表者が女性だったらしく、自らは同人作品を作らず人気のある同人作家に依頼して同人誌を制作していました。どちらにせよ、同人イベントの限られた場所だけの頒布ではなく、商業出版と同じ書店販売へと販路を拡大したのが摘発を誘発した最大の原因です。

もしこれが同人イベントという限られた場所にとどまっていたら、案外今でも昔と同じ無規制な同人誌が作られ続けていたかもしれません。

これによりどの即売会も活動がやりにくい状態へと追いやられていきました。警察が同人イベント会場へ立ち入りする場合もでてきたからです(実際にありました)。

現在のコミックマーケットの会場は「東京国際展示場(東京ビッグサイト)」で開催されていますが、当時は「幕張メッセ」で開催されていました。開催場所がこの強い規制の動きとバッシングによって、幕張メッセから
追放されるというじたいになって、今の東京ビッグサイトへと会場を移して
きた経過があります。


それが「クールジャパン」の牽引役として、むしろオリンピックの影響が
あっても開催できるようにしたいと東京都から言われるようになるなんて、
当時の経緯を知っているものからすれば信じられないことではあります。

まさに時代が変わったということですが、内容も本質もまったく変わらない
のですが、行政というものはまったく信用できません。いずれまた、都合が悪ければすぐにでも「コミケ」や「同人」を悪者に仕立て上げることでしょう。


話は戻りますが同人バブルの原動力は18禁と二次創作でした。具体的に解説していけば、この時はまだ二次創作への規制の動きはなかったのですが、18禁は規制の動きはありました。

個人的にはアダルト規制よりも、版権問題の方が大きいと考えていましたし、これに関してはかなり指摘もしていました。

規制の動きは行政の強権によって、一方的に行われていたようにいう人は多いのですが現実は少し違っています。先に解説した同人誌は、とても同人誌と呼べるレベルの売れ方ではありませんでした。
それが規制の直接の引き金となっていったからです。

今はどう言われているかは知りませんが、売れせんサークルというものがありました。そういうサークルの作品では、万単位の部数が売れています。

その中でもごく一部でしたが、飛び抜けて売れていたのが、同人と呼んで良いかどうかも分からない、サークルと呼んで良いかどうかも分からない先に説明したようなサークルの作品でした。

これは我々のようなサークルとは真逆のサークルです。
自分たちではまったく作品を作らず、たんに編集するだけという出版社の
雑誌の編集と同じ制作方法です。

これも実は後ろにというか、小さな印刷会社が直接自らが同人誌を作っていました。即売会で同人誌を作っている人気のある同人作家をスカウトしてきて、原稿料を支払い制作しています。


通常の商業出版は出版社の編集部が雑誌や書籍を作り、それを印刷業者に依頼して製本するのですが、この場合は出版社が作るのでなく印刷会社が直接、自ら同人誌を作っていたのです。
つまり出版社なき自費出版ならぬ自主出版ですね。

こういう同人誌──同人誌とは言いがたいですが──ごく一部の店舗で販売されていました。この場合は即売会場ではありませんので、頒布ではなく完全に販売です。


不思議に思われるかも知れませんが、先に引用したようにごく一部の書店では昔から委託形式で同人誌が売られていました。こうした書店にはたいてい掲示板があり、どこでどんなイベントがあるなど掲載さていましたしビラなども置いてくれていました。

こういう所にイベント関係者やサークル関係者はビラなどをおいてもらって
自分たちの活動予定などを告知していたのです。まだインターネットなど言葉すらもなかった時代で、こういう所を利用させもらって情報収集や情報交換をアナログで行っていました。

今よりもこの頃の方が、活動しているという実感があって好きですね。今のようにネットで何でもできてしまうのは、便利ではありますが充実感はありません。それにテクノロジーの進歩は人を孤立させていくように思います。


まだ専門書店の「とらの穴」や「まんだらけ」などがない頃に、こうした
書店があったのです。こういう書店に先の同人誌が売られていてかなりの数が売れていました。

これには当時はビッグヒットしていた「CLAMP」作品も及ばないほどでしたね。普通の同人誌がどれだけ頑張っても太刀打ちできないほどで、部数の桁そのものが違いました。
これはマイナーな商業出版の雑誌でも及びません。

今の人たちは知らないと思いますが、1967年から1973年まで虫プロ商事から発刊された漫画雑誌で「COM(コム)」というマニアックな雑誌がありました。当時は「ガロ」と「コム」はマイナーですが二大マニア漫画雑誌でした。発行元からも分かるとおり、「COM(コム)」は「手塚治虫」さん直轄の雑誌でした。

正確な数字は分かりませんが、比べるまでもなく「ガロ」にも「コム」にも
これらの男性向け同人誌は発行部数でまさっていたと思います。エロ強しは揺るぎないですね。

「ガロ」も「コム」も分厚い別冊雑誌のような体裁でしたが、これらの印刷会社の自主出版の同人誌も月刊誌のような体裁だったと記憶しています。

こういう書店で販売できるタイプの同人誌でないと発行部数を増やせません。同人イベントと違い常時販売しているわけですから。どんなに人気のある同人サークルの同人誌であっても、同人イベント会場だけの頒布だとイベント数に限りがあるので部数にも限界があります。

ここで執筆していた同人作家たちの話によると、編集者がとにかく過激に
過激にと描写にうるさく注文をつけて作られていたようです。この時はまだ規制が始まっていませんから、性器描写はもろに描かれていたわけです。
いわば反則技だけを使っているようなものですね。

……それは売れますわな……。


普通の出版物では描かれていないものがあるのですから。
ただこれらに影響を受けたのか、全国どこの書店でも販売されているような
雑誌にも同じように性器描写をした漫画雑誌が僅かですが出始めていました。

それもパロディが掲載さているというように、同人誌かと思った記憶があります。先の摘発を受けた雑誌ほどあからさまでエグいものではありませんでしたが。


我々の同人誌とは真逆でした。
自分たちが作っていた同人誌の欠点は、この「エグ」さがなかったことです。もともとが創作系(オリジナル)でしたから、エロイ描写は控えめでした。同人誌の殆どは起承転結すらない作品が主でしたが、それらとは大きく違ってちゃんとした作品を作っていました。

得意でないというのもありましたが、まだアダルトのフォーマットが分からず、創作系から見ると18禁はバランスが悪いのです。バランスを整えると、どうしてもエロは控えめとなってしまいました。

欠点も見えていましたが、それでも部数は伸びてきていましたからそれらの
欠点を改善して次の段階へうつろうと考えてもいました。結局、いろいろなことははっきりと見えていたし、改善点も見えるしで部数がどれくら伸ばせるかも裏方作業で分かってきていました。
ですが実現できないまま終わっています。

今思い返せば、規制が始まるのは秒読み段階へときていたのかも知れません。結局、商業出版も含めて規制を誘発していたようなところもありました。

今に至るまでの同人誌の繁栄はすでに説明しましたが、同人誌の印刷をする小さな出版社の働きによって始まり、これらの印刷会社の行きすぎた行為で規制を誘発してしまってもいるのです。
正直なところ、同人サークルだけではここまでの影響力はありません。


この「青少年保護育成条例」のおかげで「コミケ」初め同人関係は段階的に混乱を極めていきます。今と違ってインターネットもありませんでしたので、様々な情報が錯綜していました。とにかく正確な情報がなかなか入ってこなかったですね。我々も情報収集に躍起になっていました。


意外なのですが、同人サークル全般に危機感が薄かった。まるで人ごとといった方が良いサークルも少なくなかったですね。我々を初め、もちろん危機感を募らせるサークルもありましたがそれほど多くはなかったように思います。

具体的に同人関係はどういう行動をとっていたのかは、とてもレベルの低い
ものでした。ここでも「解離」の力が働いており自分たちの作品がまたは自分たちのほしい同人誌が規制を受けるという、当事者意識が薄いのです。

むしろ仕方ないこと程度の反応をするサークルもあるくらいでした。
これらの中で一番慌てていたのは、印刷会社はじめ同人イベントの運営側の
人間でした。

どこをどう修正して作れば良いかなどもはっきりしたことが分からないまま
制作していたのですが、当事者意識の薄いサークルは今までとまったく同じ
修正なしの同人誌を作っていました。そしていざ印刷会社に原稿を送ってこれでは印刷できないと断られてから初めて慌てるという愚の骨頂を見せるサークルはとても多かったですね。

同人活動では、こういう「解離」からおこる当事者意識の希薄さは至る所で
経験していました。


ここで初めて大騒ぎするのですが、同人ファンも今までのまま修正なしで
作ってくれとサークルに強く要求してきました。自分たちが運動して規制に反対するとも言っており、この運動を口にしない同人ファンはいないくらいでしたね。

ですがいくらサークルが修正なしを作りたくとも、同人誌を印刷できないのであれば制作しようがありません。文句を言う相手がもともと間違っているのです。

実際に規制が広がっていくと運動どころか、自分はそんなことをいったこともないというように姿をくらます人たちばかりでした。あれほど口からつばを飛ばすほどに運動すると怒り狂っていたのにです。

さらにこの規制に協力するかのような同人女子たちの活躍です。
すでに同人誌の印刷会社には、BL同人誌の制作者たちやイベント運営の女性
たちがアルバイトで沢山つとめていることは解説しました。これらの女子たちが自分たちの判断だけで男性同人誌を断って返送してくる印刷会社も現れていました。

我々も経験があり、すでに規制には対応して修正してある作品だったのですがなぜ断られたのかの説明もなかったので問い合わせたところ、女性アルバイト社員が独断で断っていたことが分かりました。

それでも印刷会社側が女子社員を庇うようなことを言うので、今まで使っていた印刷会社でしたが他の印刷会社に仕事を依頼することにして、二度と仕事の依頼をすることはありませんでした。

この時の印刷会社の対応も印象的で、規制が始まったのはサークルが悪いか
のような対応でした。もちろん納得できるわけもなく、それもあってかなり突っ込んで調べるようになりましたね。同人の繁栄も規制も、すべて同人誌の印刷会社が原因であることが良くわかることになります


すでに何度も触れていますが、女子たちの感情的な面が大活躍していました。ヒステリックに男性同人誌を排除しようとするものも少なくありませんでした。まるで自分たちが作る「BL」同人誌は規制されないような感じでしたが、当たり前ことですが女性同人作家が作る「BL」同人誌も規制対象です。

今でも思いますが、自分たちの作る「BL」同人誌はアダルトではないと思っていたのかと思います。美しい純愛を描いていたのではなく、男性同士の性愛をそれもちゃんと濡れ場まで描いていて──男性同人誌に負けないエグいものも多くありました──どうして自分たちの同人誌はアダルト作品ではないといえるのかが分かりません。

オタクの自己中心的な行動は関わらないとわかりにくい面もあるのですが──一見すると穏やかで大人しい印象を与える場合が多いのです──女性同人関係者は端から見ていてもすぐにそれと分かるような感情的な側面がありました。ヒステリックさが際立っています。

女性同人作家とは殆ど交流がありませんでしたから深く掘り下げて解説できるところまで書けないのですが、女性の方が日常的に「解離」は強かったのかも知れません。

話をして物事を解決しようとする動きが全く見えなくて、ただ一方的に感情を爆発させているだけのようなところが強い。とにかくヒステリックな側面が強かったですね。


そんな同人誌の規制騒動ですが、同人関係者よりも、商業出版のプロの漫画家さんたちの方が危機感を強く持っていたのが特徴的でした。商業出版である雑誌などの方がこの問題を大きく取り上げていました。

それらもあって「コミック表現の自由を守る会」という漫画表現の法規制に
反対する団体が立ち上がりました。代表が故「石ノ森章太郎」さんでした。

自分を含めサークル仲間はこの団体へすぐに入会しました。
一般の方も入会できるので他のサークルさんも含めて入会をすすめました。
声をかけたのはかなりの数に及ぶのですが、結局この会へ入会した人は我々のほかはいませんでしたね。

それくらい当時の同人関係者はこの規制に酷く反対はするけれどいざ始まるとなにもしないどころか尻込みする人たちばかりでした。あれほど熱を込めて反対していたのに。


当時、摘発を受けた同人作家が、警察の一連の取り調べなどを漫画化していましたが警察も大きな事件とは思っていなかったようです。本音がでていたところがあって、まともに取り扱うようなものではないと思っていた節がありました。

これを強く押し進めていたのがPTAのような婦人団体です。そしていつも、時代錯誤というかまったく的外れな規制を押しつけてきます。

この時も、そもそも同人ファンというものはすでに説明していますが、年齢層が高いのです。社会人と大学生がおもで、高校生などおりませんでした。
40代、50代という年齢層も珍しくないほどです。時々、高校生が紛れ込んでいると運営側が話題にするほどです。

つまり普通に結婚もできるし風俗へも行くし、お酒も飲めるしで何ら年齢制限を受けるような年齢ではない人たちが殆どです。そういう相手に対して「青少年育成条例」という、いったいどこの誰を保護するつもりなのか分からない規制だったからです。

これが中高生を対象としたイベントであるならば、同人関係者も指摘されなくてもある程度の自主規制は考えていたと思いますし、反対はしなかったと思います。ここまで的外れで実態の伴わない話はないと思ったから反対したわけです。

家庭という保護された世界だけに暮らす生き物が考えそうな現実離れした
考えでしたね。耳に入ってくる情報があまりにも時代錯誤すぎていました。


商業出版関係の方たちが、アダルト規制のことで実際にこういう婦人会の代表者のところへ説明をしにいったという話を聞きましたが、会って話すらしない人たちばかりでとても一方的なものであったという話です。規制を押しつけてくるけれど話し合おうともしないのがこういう婦人会の特徴ですね

これは女性特有の反応というか、良く分かる話でした。
身近な人間のトラブルでも女性が関わっていた場合はこれがあります。個人的な経験でも同じですね。

とにかく一方的で人の話を聞こうともしませんし、申し合わせたようにあり得ない話までまじえて感情的な反応ばかりがかってきます。頭がおかしいのかと思ったことがあるほどです。今のネットで誰かをとにかく叩く人々と似ていると感じました。

このように実際のアダルト規制に関しては、解決をはかっていたのは同人関係ではなく商業出版の関係者でもあったのです。本気で「表現の自由」を守ろうとしていたのだと思います。

思い返せば、「表現の自由」という言葉は同人関係者やファンも含めて
誰もが口にしていましたが、それが「憲法第21条」であることは一度もきいたことがありません。

憲法第21条という条文があることも知らなかったのだと思います。

この時ばかりは、ファーストガンダムでギレンザビがガルマの国葬のさいにいった演説の一節を「あえて」同人ファンを含めた同人関係者に言いたくなりました。


 

ご支援は、創作活動再開と新しい創作活動などのためにありがたく使わせて頂きます。