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第13話 好きな人の笑み


最近は前好きだった塾の先生のことを考えることもなくAさんにぞっこんしている。まぁ、そんなこと口が滑ってもAさんには言えないけど。
Aさんのことを好きになってからは、Aさんへの余裕がなくなった。いつだってAさんのことを考えてはにやけたり苦しくなったりする。
そんなAさんへの気持ちが大きくなる中、今日もAさんに会いにいく。
今日は特にこの間アップされたAさんの動画について話したくて、レッスンを申し込んだ。
最近はレッスンが始まる時間が近くなるにつれ心臓の音がよく聞こえるようになった。いてもたってもいられなくなって、メイクを入念にチェックしたり、英単語帳を開いたりするが、なかなかそれどころではなく全て全く集中出来ないまま、レッスンの時間が来る。

「○○ちゃん〜」
「Aさん〜!!」
「なんや、今日いつもよりテンション高い?笑」
「そ、そんなことないですよ〜!笑」
「そうかぁ〜?笑 ま、ええか!行こか〜」
「はーい!」

レッスン部屋につき、私はルンルンでグラウンドピアノの椅子に座る。その隣にAさんも座る。
早速ずっと話したかった話題をAさんにふる。

「そういえば、この間のAさんの動画見ました〜!」
「お、見てくれたんや!どうやった?」
「もうほんとにAさん可愛すぎてやばかったです!」
「え?可愛かったん?笑」
「はい!可愛かったです!なんかニコニコでとっても可愛かったです(*´`)」
と言って私は動画内のAさんの動きを立ち上がって真似してみた。

「動きってこんな感じですよね!?」
と少しオーバーめに可愛かった動きを再現する。
するとAさんが立ち上がり
「○○ちゃん〜?笑」
と言いながらこちらへ近付く。
そのまま逃げることも出来ずに壁に追い詰められる。
視界がAさんでいっぱいになりAさんを見上げ壁にもたれる形になる。
顔の横にはAさんの腕がある。
つまり壁ドン状態。

「まだ俺の事可愛いって言える?」
とイタズラな笑みを浮かべる。
思わず目を逸らしたくなり、顔を背ける。が、Aさんに顎を持たれ強制的に目が合う状態の所まで持ってかれる。
「目そらさんで?」

「っ…///」
照れて黙ってしまった私を見て
「もうこれで俺の事可愛いって言えへんな笑」
といい私を解放する。
そのまま私は力が抜けて崩れ落ちてしまう。
「ちょ、○○ちゃん!?大丈夫!?笑」

「Aさん〜…刺激強すぎますって…///」
「そうかそうか笑ごめんな〜?笑」
といい、優しく手を差し伸べるAさん。
さっきまであんな意地悪してきた人とは思えないぐらい優しい顔をして手を差し伸べている。

(あぁ、またAさんに沼っていく…)
なんて思いながらへなへなとグラウンドピアノに座る私だった。

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