第4話 人生のある瞬間

ハードな午前中を終え塾へ急ぐ。
「あ〜午前中部活の後の塾は泣きそう」
なんて1人でブツブツ言いながら、自転車に乗り込む。

必死に重いペダルに足をかけながら涼しい塾へ向かう。夏休みからずっとこの生活が続くと考えると足取りがより重くなる。そんなことを思っていたら塾に着いた。少し錆びた自転車の鍵を回しロックをかける。
(先生…会いたいよ)
そんな思いで塾に入る。
けれどそんな願いが叶うはずがなかった。

涼しい塾で分厚くて重い参考書を開きながら休憩する。これから数時間ずっとこの参考書の光景が広がる。そう思うとなんだか憂鬱で思わずスマホを開く。意味深に響くインスタの通知音。
何となくインスタをらすぐに開いてみた。
「地方レッスン…」
ストーリーに表示されたその言葉。
そこにはついこの間出会ったばかりの彼がいる。
「良かったら、君もレッスン来てくれへんかな」
その言葉がよぎる。

【レッスンのご予約はこちら】

そんなURLをタップする。
パッと表示された予約項目。
過去の自分。苦い過去。
けれど、そんな過去を変えたい。
今のままの自分じゃ嫌だ。
またピアノを弾きたい。

彼なら変えられるかも。
そんな思いで予約のボタンを押す。
これが私の人生に大きく関わる瞬間だった。

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