秋田犬は待っている

YouTubeでこんな動画を見つけました。

2時間近くある長い動画です。この中で特に出てきたのが、「秋田犬あきたいぬ」でした。

秋田犬の思い出

以前から書いてきましたが、私も子供の頃秋田犬を飼っていました。祖父が亡くなって祖父が飼っていた雑種の犬も後から飼うことになりましたが、子犬の頃から自分たちで名前を付けて犬を飼うのはやはり特別な体験です。

ただ、素直に喜べなかったのは、親が犬を飼うとも言っていなかったのに、突然犬がやってきたことでした。そして、学校の図書館か家の図鑑で秋田犬について調べたら、大型犬の寿命が短いことを知り、非常にショックを受けたことを覚えています。実際小学校低学年で飼い始めて私が高校生になった頃に癌になって逝ってしまったので平均寿命くらいであったでしょう。

名前を付けるのにワクワクした気持ちより、番犬のために大型犬を飼ったというのにもやもやした気持ちを覚えました。しかし、確かに秋田犬はエネルギッシュで番犬として優れています。体力があるので、見知らぬ人が来たらいつまでもワンワン吠えています。

「近所迷惑じゃないの」

と親に言ったことがありましたが、お客さんが来た時に吠えるのは良いのだと言われました。20年以上前の田舎のことです。それにしてもうるさかったでしょう。

両親にとって誤算だったのは、犬を飼ってしばらくして母が癌になったことでした。咽頭癌で余命半年と言われました。幸いにして60代になった今でも生きています。ただ、40代で上咽頭癌、60代で再び中咽頭癌になりました。その間にも脳溢血が2回などとにかく数々の大病を患いました。

仕事についてはエネルギッシュでも、体力はそれほどありません。そもそもうちの母は動物も運動も子どもの頃から嫌いな性質でしたので、母の入院中から自然と子どもだけで犬を散歩する機会が増えました。

番犬のための犬ですから、子どもだけで近所を散歩する分にはますます安全です。ただ、力の強さはいかんともしがたく、何度かリードが離れたことがありました。遠くに行ったことはありませんでしたが、自分が行きたいところを冒険して飼い主を待っているので大変でした。お腹が空くので自然と家の方向には向かうものの、ちょっとこっちきてあっちきての寄り道が長い。秋田犬は寒さに強いですから、冬にリードが離れた時はつらかったですね。

それにしても子どもは気まぐれですから、犬の散歩も毎日というわけにはいきませんでした。父が仕事の関係で家にいないことが多く、力の強い秋田犬と全力で遊べる人がいなかったのはかわいそうだったと思います。

雌で小柄とはいえ、しゅっとしているということは動きは機敏ということで、150センチの私の頭上を飛び越える勢いでした。そんなに活発な方ではなかったとは思います。けれども、散歩が本当に好きで、今のように犬にカッパ着せて散歩するという文化が知られていたら、当時そうしていたと思います。雨の多い地域でしたから、雨の日は昔の牛小屋の中に入れていました。

秋田犬と言えば、有名なのが忠犬ハチ公ですね。

まだうちに秋田犬が来る前にテレビで見て、ボロボロ泣いてしまいました。学校の宿題でもないのに、弟を焚きつけて二人で感想文を書いた覚えがありますから、多分小学校2年生の時だったでしょう。久々に見ようとamazonで探してみたら、出演が仲代達矢さんになっていたので、多分見たのはこの映画版の「ハチ公物語」ではなかったような気がします。30年近く昔のことなので、記憶があいまいです。

それで、話を戻すと、海外で秋田犬が飼われるようになったのは、この「ハチ公物語」がハリウッド映画としてよみがえり、忠犬ハチ公が世界に知られたからなんですね。

「HACHI 約束の犬」

あらすじ
アメリカ、郊外のベッドリッジ駅。寒い冬の夜、迷い犬になった秋田犬の子犬を偶然保護したパーカー・ウィルソン教授(リチャード・ギア)は、妻の反対を押し切り、その子犬を飼うことにする。首輪についていたタグに刻まれていた漢字から「ハチ」と名づけられた子犬は、パーカーのあふれるような愛情を受けてすくすくと成長していく。いつからか、夕方5時になると、ベッドリッジ駅で帰宅するパーカーを出迎えるのが日課となったハチ。一人と一匹の間に育まれた深い愛情と信頼は、ずっと続いていくと思われたが・・・。
amazonの紹介文より引用

あらすじを読むだけでもう胸が痛い・・・と思っていたら、ん?と途中で涙が引っ込みましたね。そもそも日本が舞台ではない時点で事実とは異なるのですが、迷い犬とか家族が飼うのに反対するとか、ちょっと脚色があるようです。

ただ、秋田犬がどこの国に行っても辛抱強い犬であることには変わりがないと思います。そして、飼い主を決して忘れません。うちの犬も普段家にいない父が帰ってくると飛び跳ねて喜んでました。その喜びようときたら、普段餌をやって世話をしている私たちとえらく態度が違うなと感心してしまうほどです。

動物動画でウクライナに旅立った秋田犬の飼い主家族のお父さんは船乗りでした。仕事で2か月も家を空けることがあるそうで、秋田犬はそんなお父さんを待つのにうって付けの犬だなと思います。広々とした豪華なマンションでこれなら室内飼いでも大丈夫そうだなと思えるうらやましい環境でした。

駅で教授を待ち続けたハチのように、きっと船乗りのお父さんを黒海のビーチにたたずんで待ってくれることでしょう。
このテレビ東京の動画の放送がいつだったのか分かりません。
うらやましいような豪華なマンションは無事でしょうか。ウクライナの秋田犬が、船乗りのお父さんだけでなく、瓦礫の中で家族全員の帰りを待つことがないよう祈ります。


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