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我が家の庭の風景 part.126「気持ちばかり」

 台湾バジルを育てている。気持ちばかりのものだ。
令和六年四月三日午前八時五八分、台湾地震が起きた。台湾は日本で災害が起きるとさんざん寄付をしてくれている国である。九州在住の私としては中華料理店などで台湾料理にもなじみがある。私自身はそれほどの災害の被害者になったことはないが、台湾のご親切に報いなければならないという気持ちがどこかある。
かといって、私自身は自分の家の猫のことにせいいっぱいで寄付どころではない。飼い主のいない我が家の庭に居着いた猫たちの避妊手術のために寄付を募って、台湾地震を支援するプロジェクトがあることを知った。ぜひ寄付したいとすぐに思っても、それくらいなら自己資金で猫ことをしたらどうかと誰に叱られるわけでもなく気づいた。誰かに救われたい人間が、誰かを救うことなど夢のまた夢だ。
 寄付できない贖罪のつもりだったろうか。代わりに台湾バジルを春から育てている。七月に追加で購入した種も七月末には芽吹いた。
 一般的にパスタなどに使われるバジリコとはだいぶ見た目が違う。まず思っていたより葉が小さい。バジリコで香が似ているか分からない。それほどたくさんないので、料理に使うのはためらっている。第二弾の種が育ったらと考えていたが、2,3の株しか芽吹いていない。挿し芽で増えるだろうか。こぼれ種か挿し芽で増えなければ、台湾バジルを育て続けることはできない。他のよくほこって利用しやすいハーブが優先になる。
 私は、結局薄情なのだ。猫のために人間に尽くせないというほどでもない。自分でできるわずかばかりのことにもすぐ飽きて続かない。あるいはお金を割くことができない。
 あれもしたい、これもしたいという気持ちばかりあっても実行できなければ意味がない。これはお金で解決できることはなく、台湾バジルを育てているようにできる範囲のことは何かしらあるのだ。けれども、それを継続する気力は自分次第だ。
 ほかに寄付サイトを使わなくても売り上げの一部を台湾地震の寄付に使う中華料理店やラーメン屋なども九州にはある。例えば思想的な部分でも、オリンピックで「チャイニーズタイペイ」と呼ばれる台湾を台湾は台湾だということで応援する気持ちをSNSで表明することもできるだろう。
 私にとっては何もできない私の贖罪を台湾バジルに込めている。その気持ちは結局炎天下に放置している台湾バジルの状態に現れている。鉢に植えっぱなしで土も足さず、水やりもろくにせず、地面に植え替える気もない。それでも、気温が上がるほど生き生きと育っているようだ。怠惰な私とこの夏の暑さにあったハーブだ。
 台湾バジルが勝手に元気でいるだけで、私の気持ちが慰められる。


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