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窓辺の猫 第五十五回 「野良猫もパソコンは見る


 どうも野良猫に翻弄されている猫の飼い主です。飼っている猫はそっちのけで夕方から深夜や早朝。猫の捕獲に格闘しています。

 動物愛護センターは遠いので、キャリー捕獲器は自分で買いました。飼い猫たちのを使うと、ノミダニがうつるのが怖いからです。ところがホームセンターで犬猫の捕獲に捕獲器を使うのは法令違反ですと捕獲器に掲示されていました。ちゃんと保健所に確認を取ったのですが、よくわからないので、とりあえずキャリーで捕獲することにしましたけれども、大変すぎて、手放した捕獲器をやっぱり手元に残しておけばよかったなと思いました。

 何のためらいもなく、キャリーに入ってくれた雄猫はそこにご飯があると覚えたらしく、すぐにキャリーに入ってしまいます。動物病院に行ったら、すぐに麻酔を打たれて、怖いと思う間もなかったのかもしれません。正直、他の猫の捕獲の邪魔だと思っていたら、他の猫たちはその雄猫を頼りにしているらしく、真っ先に雄猫がやってくると、その後からメス猫たちがやってきます。

 4匹の避妊手術を計画していて、どれも1度は捕まえたのですが、事情があって2匹逃してしまいました。5月末時点では避妊手術が実施できているのは2匹です。そのうちに近所に長毛の白猫が繁殖しているのを区長さんに聞きました。今はボス猫が縄張りを主張して、他の猫は追い払っています。自分だけのハーレムです。なつかれたら困るなと思いつつ、いなくなられても困る。本当に困った状況です。

 5月雨の降った土日に、月曜日に動物病院が避妊手術ができると聞いたので、両日全部を使って捕獲を試みました。寝ないで頑張ろうと思ったのですが、寝ないのは無理でした。けれども、野良猫たちも心細いのか、キャリーの中のごはんにつられていただけか、頻繁に側にやってきました。

 猫たちがよくいる蔵にもともとあった机にパソコンなどを持ってきて、暇をつぶした48時間。途中、お腹が空いて家の中で食べ物を漁って戻ってきたら、先ほどまで私が座っていた椅子に野良猫が座っていました。うっかりノートパソコンを開いたままだったようで、パソコンの画面をじっと見ていました。パソコンに乗られなくてよかったです。

 日曜日の夜雨音を聞きながら、もう月曜日の避妊手術は無理だと絶望して、暗闇の中で猫たちを待っていたら、かさかさと何かが目の前を通り過ぎました。それを追いかけて白い猫も通り過ぎました。人間が動く気配がすると、猫はさっと逃げ出して、どこかへ行ってしまいました。けれども、闇の中で、何かかさかさする音が、まだずっと続いていました。大きな蜘蛛にしては、変な音だと懐中電灯の明かりを頼りに、恐る恐る見に行くと。
なんとサワガニがいました。近くの川まで数百メートルはあるのですが、雨で長旅をしてきたのでしょうか?
 サワガニが視界から消えるまで見守って気が済んだら、やっとその日の猫の捕獲をあきらめる踏ん切りがつきました。そして深夜に父が散らかしている蔵のゴミの片付けを少し。まあどうせ片付けたってまた散らかすのですが。
 猫に翻弄された5月でした。本来であれば、1回全部捕まえたんだから、避妊手術は4匹全部終えていたはずなのです。次の猫を産む懸念も高まっていて、気が気ではありませんけれども、もともと6月まではかかるだろうと思っていたので、気長にやります。大体猫が増えてしまったら、6月所の話ではなく、数年がかりになるのでしょうから。

 それにしても、そんなに長毛の白猫ばかりどうして増えてしまったのでしょう。よそのお宅はどうされているのか気になりますが、余計なお世話ですね。

 悔やまれることがいっぱいありますがこれも人生の彩りの一部でしょうか。我が家の室内飼いの猫たちは、家の中を長時間留守にすると、翌日とても甘えてきます。それが私の徒労をねぎらってくれているようで、うまくいかなくてささくれだっていた心が少しだけ宥められました。


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