注意集中を高める②-注意の準備性-
こんにちは!
今回は前回の続きとして「注意の準備性」というテーマでまとめていこうと思います。
↑前回の記事はこちら
不安に起因する注意の狭窄
「注意集中の準備性」をスポーツ心理学的な観点も加えて考えていく中で、今回は「不安」という感情と併せてまとめられていたものを参考にまとめていこうと思います
上図の左側は、覚醒水準であり、いわゆる脳の活性状態のことを指します。
スポーツ場面でもよくつかわれるもので、覚醒水準を適切な状態に保つための1つの手段としてウォーミングアップなどを実施します。
注意集中の観点から考えてみても、低い覚醒水準は注意集中を向ける対象が絞れていないために、色々なことに対して注意を向けてしまい、(練習中に今日の晩御飯なんだろうな。テストやばいな。等)逆に高すぎる注意集中は、目の前のことしか見えなくなってしまう状態を指します。(フリーのシュートを連続で外してしまった。やばい。等)
右側は不安の程度であり、不安が高いほど色々なことに注意集中が向いてしまい、(自分のマークの選手は、マルチプレイヤー、シュート?フェイント?パス?等)逆に、低すぎる不安は適切なものに注意を向けることができない一因にもなってしまいます。(自分のマークマンしか見ていない等)
「不安」の結果による自己への集中
上記の例では、「不安」に対する他者への注意を例に挙げましたが
「不安」感情がパフォーマンス低下に影響を与える一番大きな影響は自分自身に注意集中が向いてしまうことです。
連続でフリーのシュートを外してしまった結果、自身の何が悪かったのかを自分の中だけで考えてしまう等
スポーツ場面においては、このような「考える」という思考がパフォーマンス低下につながってしまう可能性があります。
もちろん、スポーツは考えることで相手との駆け引きを楽しむ側面もあるとは思いますが、過度な思考はパフォーマンスの低下の一因になります。
とはいえ、「そのようなことを考えるな!」というのも無理な話で、そのような場面をどれだけ想定しながら普段の練習などを行えているのかということも非常に重要になります。(メンタルトレーニング等)
スポーツ場面で生じる過度な注意集中-「パニック」と「あがり」がなぜ生じるのか-
「不安」という感情が、注意を狭めたり、自己への注意集中を生じさせてしまうのは、前述している通りですが、スポーツ場面ではそのような状況を「パニック」や「あがり」という言葉で表され、競技に対する高いプレッシャーによりもたらされると考えられていますが、この2つは実質的には違うものであり、これら2つの違いをしっかりと理解しておくことで自身が指導する選手へより適切なサポートを行うことができると思います。
パニック
パニックとは辞書的な意味では
「突然の、理性を失わせるような、ヒステリーを引き起こすような恐怖」
とされており、先述している図の一番上の状態を指します。
スポーツ場面で起こるパニックに関しては
極度の情動状態によって自分自身で情報/理性を処理できないほど、注意が狭くなりすぎた状態になってしまう結果として、すべてが本能によって圧倒されることで、トレーニングしてきたことなどが一切できなくなる状態のことを指します。
例を挙げるとすると、途中出場した選手などがよく陥るのではないかと思います。
練習では、難なくできていたプレーやスキルなどが過緊張などのあまり、パニック状態として現れた結果、何も考えることができなくなってしまい、ミスなどを多発してしまうといった状況がスポーツ場面におけるパニック状況なのではないかと思います。
どのような対処法がある?
このような状況に陥った選手に対して指導者ができることは
ということが効果的であるとまとめられていました。
パニック状態にある選手は考えることができていないことが多いので、まずは落ち着かせた上で、その選手に求めていること。そのために普段の練習でやってきたことは何のなのか。という問いかけをすることで、選手の中で考えることができる機会が生まれ、徐々にパニック状態は緩和していくとまとめられています。
あがり
対する「あがり」はいわば、「パニック」とは正反対の事象であるといわれています。
上述しているように、「パニック」は思考の停止であるのに対し
「あがり」というのは、考えすぎによって生じてしまう現象です。
スポーツ心理学が学問として発展していく中でも、大きなトピックとして長年研究が進められているテーマの1つでもあります。
「あがり」によって考えてすぎてしまうことにより、スキルなどが自動化の段階から意識下の段階へ逆戻りしてくることがあります。
ひどい場合は、足と手の出し方を忘れてしまう等
これは実体験ですが、ハンドボールの公式戦(大学デビュー戦?)で7mスロー(サッカーでいうPK)を打つときに
考えてしまうがあまり、シュートを打つ感覚を忘れてしまい、手からボールが離れず、枠外にシュートしてしまった苦い思い出があります(笑)
どのような対処法がある?
それでは、そのような「あがり」にはどのような対処法があるのでしょうか
それが現段階では、研究的な観点からもはっきりとこれが良いということは中々発見できていないそうです。
「パニック」であれば、思考が停止してしまっていることが大きな原因なので、思考することを促すアプローチをすればある程度、緩和されるものの
「あがり」に関しては、考えることを辞めよう。と言葉でいうのはかんたんなものの、いざ実践するのはかなり難しいことです。
現段階で、効果があると個人的に感じているのは、「これだけに集中する」という集中の対象を限定することが最も効果的なのではないかと思います。
日常やスポーツ場面では、様々な要因が連続して生じているので、考えることを列挙していくときりがないと思います。
しかし、その中でも現状や自分自身・チームの目標などをベースにし、「今、自分自身に出来ることはなんなのか。」ということをクリアにしていくことが最も効果的なのではないかと個人的には考えています。
1スタッフとして
このような観点から考えても、アナリストや監督・コーチなどを中心として行われる試合前の対戦相手の分析などは非常に重要かなと感じています。
客観的な数値を基に、自分たちがチームとして目指すべきものを決め、それに対して各個人が自分自身が何ができるかを考え、実行するためにもこのような事前準備が大切になってくると思います。
事前にやるべきことを明確にしておくことで、「パニック」を予防し
劣勢状態やアクシデントが生じた際に生じる考えすぎによる「あがり」を、事前にミーティングしていることを発することで、再度、やるべきことに集中できるようになる。ようなイメージ
メンタルトレーニングでは
また、このような「あがり」に対処する方法として
「今、この瞬間に集中する」
ことをスキルとして身に着けるためのメンタルトレーニングとして
マインドフルネスやACTという技法があります。
詳しくはまたまとめますが
自分自身が現在、論文と併せて読み進めているものは以下の2つです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
このように、注意集中には準備性というものがあります。
スポーツ現場で、試合に向けての準備を進めていくことはもちろんのことだとは思いますが、何をするべきなのか。などといった視点で注意集中に対してもしっかりと準備をすることができているのかということを自分自身も再度、まとめていくことで考えなおすことができました。
また、繰り返しになりますがメンタルトレーニング含め、注意集中に関してもスキルであり、日頃からトレーニングをしていくことで、スキルを獲得・向上させていくことができます。
一朝一夕にいくものではありませんが、地道にトレーニングをできるような環境設定をしていくことも指導者に求められる1要因なのかなと思いました。
自分自身も、まずは自身で実践し、指導に活かしていけるようにしたいと思います。
次回は、「注意の選択性」というテーマで一流選手はどういった注意集中を行っているのか。ということを中心にまとめていければと思いますので、次回以降も、是非、ご一読いただければと思います。
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