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第三夜・あなたの知らない?酸素の素顔!ウラ顔!(2020.2.11&24)

昨年11・12月に引き続き,2月に第3夜を開催。
今回は11日の昼を予定していたものの,以前来られていた受講生の方からのご要望で,24日の夜にアンコールライブを開催。
結果,11日には4名,24日には7名+会場スタッフ1名の方がご参加。
さて,今回のテーマは"酸素"。
身近にある物質だけれども,意外とその性質が知られていなかったりする。

酸素について思いつくことは?

オープニングは酸素について思いつくことを,受講者の皆さんにいろいろ挙げていただいた。

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酸素といえば「生きるために必要」「燃焼に関係する」ということを真っ先に思いつきがちであるものの,深い意見をいろいろ挙げていただいた。
ここまで挙げていただけたら,講座をやらなくてもいいレベル(笑)
それくらいに深いものばかり。

燃焼と酸素

今回はスチールウールを空気中で燃やした場合と,酸素が多い中燃やした場合とで,その燃え方を比較した。
その結果,酸素が多い場合の方がよく燃えていた。
このとき,酸素自体が燃えたものと誤解しがち。
本当は,外から熱を加えたことで,鉄原子と酸素分子が激しくぶつかり合うことで自ら熱や光を発生する。
そして,その熱や光は周りにも広がり,どんどん燃え広がっていく。
これが燃焼のしくみなのである。

燃焼に必要なものは3つ。
① 燃料(例:スチールウール)
② 酸化剤(例:酸素)
③ 熱源 ・・・ 原子・分子の運動を激しくするために必要

燃焼と呼吸の違い

一般に「呼吸」とは,酸素を外から取り込んで,二酸化炭素を外へ吐き出すと考えがち。
もちろん正しい。
でも,呼吸の本質は,酸素を体に取り込んで,栄養分からエネルギーを取り出すということである。
図で表すとこんな感じ。

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この図において,栄養分はブドウ糖を例にしている。
ブドウ糖と酸素が反応することでエネルギーを生じるが,それはATP(アデノシン三リン酸)に蓄えられる。
そして,副産物として二酸化炭素と水を生じるのである。

※ちなみに,酸素を取り込まなくてもATPを合成する"嫌気性"の生物がいるが,発酵という過程でそれは行われる。
こんな感じ。

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話をもとに戻すと,燃焼も呼吸も酸素と反応することは共通している。
しかい,燃焼においては,一度に生じた熱が外へ逃げていくが,呼吸においては,少しずつ生じた熱をATPに蓄えていく。
ここが大きな違いになる。

酸素の濃度が変わったら?

地球の大気中に含まれる気体を多い順に並べたらこんな感じ。
① 窒素(約78%)
② 酸素(約21%)
③ アルゴン(約0.9%)
④ 二酸化炭素(約0.04%)

もし,酸素がこれよりも多くなったらどうなるか?
 血液中に酸素が過剰に存在する
  ↓
 二酸化炭素を排出する余地がなくなる
  ↓
 昏睡状態に陥る
  ↓
 死に至る
・・・とされているとか。
※これをCO2ナルコーシスという。

酸素はなぜO2と表されるか?

これはまたややこしい話になるものの,活性酸素を理解する上で必要なことなので,説明をざっくりと。
(受講生の皆さんには分かりづらかったかなあ?)

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酸素原子には+の電気をもった陽子,―の電気をもった電子がそれぞれ8個ずつ含まれている。
電子というのは同心円状に層をなして存在している。
酸素原子においては内側(K殻という)に2個の電子,外側(L殻という)に6個の電子が配置されている。
そして,L殻に入った6個の電子の中には,2個の電子がカップルになった「非共有電子対」が2組,カップルでない2個の「不対電子」が存在している。
(上の図の左側のように原子モデルをいちいち丁寧に書くと面倒くさいので,右側にある電子式という形で表すこともある。)
このL殻には電子が最大で8個入るが,ピッタリ入っていないと落ち着かないという気難しいところが,ここにいる電子たちにある。
今ここで,2個の酸素原子どうしが結びついて,酸素分子O2になるときを考えてみよう。
それぞれの酸素原子はこう思っている。(?)
「もう2個電子があれば満たされるのに・・・」
さあ,この問題を解消して,O2になるにはどうすればよいか・・・?

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そうです!
上の図にあるように,それぞれ2個ずつ持っている不対電子を互いに「共有」しあえば,両方の酸素原子のL殻には,それぞれ「見かけ上」8個の電子を持ってるように見えるんです!
このような結合を「共有結合」といい,この共有結合によって見事O2が出来上がり!
何という素晴らしい知恵!(笑)

活性酸素

今回の大人の化学教室で酸素をテーマにしたのは,活性酸素とは何者なのかを知りたかったのがきっかけ。
この活性酸素を調べてみると,実に奥が深い。
何と言っても,種類がさまざま。

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何じゃこりゃ?
そもそも酸素分子O2が共有結合をするときは,互いの不対電子を2個ずつ出し合い,安定な状態になる。
しかし,上の図を見てみると,酸素原子どうしが1個の不対電子しか出し合っていない。
それで一人ぼっちの不対電子が残り,不安定な(反応性の高い)ラジカルと化していく。
ざっくり言うと,活性酸素はラジカルの状態になり,さまざまな物質を攻撃してしまうということである。
攻撃対象が生体成分になると白内障,動脈硬化,虚血,がんなどを引き起こしてしまうとか。

活性酸素は呼吸の過程で必ず生じる。
正常であれば,それらは体内に含まれる抗酸化物質(スカベンジャー)によって消去される。
抗酸化物質にはビタミンC,ビタミンE,カタラーゼ,ポリフェノールなどが含まれる。

しかし,活性酸素は必ずしも人体にとってマイナスに作用するものではない。
白血球の一種であるマクロファージをご存知だろうか。
マクロファージは体内に異物が入り込んだ際,それらをことごとく食い殺す作用(=食作用)がある。
その際にマクロファージは活性酸素を用いているのである。

講座のあとで〜YUMのつぶやき〜

酸素や活性酸素の性質について調べようと高校化学の参考書や化学の専門書を調べてみても,意外と記述されていなかった。
それでも調べてみたところ,医学や栄養学の本でかなり扱われていた。
なぜ化学の分野で詳しく述べられていないのだろうか?
今もまだ引っかかるところ。

11日の回では血中酸素濃度計が話題となった。
指を機器にはさむことで,血中の酸素濃度が測れるという話をこのとき初めて聞いた。
何でそんなことができるのかな?

24日の回では看護師の方もいらっしゃったということがあって,CO2ナルコーシスの話でだいぶ盛り上がった。
O2・CO2と生命の関係は奥深く,体の状況によって酸素の補給のしかたも変わってくるんだとか。

今回も2回に分けての開催(2days Live?)でしたが,それぞれの回では,特に健康と酸素の関係について,こちらが知らないような深い話も聴くことができました。
酸素は奥が深い。

今回ご受講いただいた皆様,ありがとうございました。

回を重ねていくうちに,参加者・リピーターの方が少しずつ増えていってます。
これからのご参加,お待ちしています。

参考文献

「酸素のはなし」(三村芳和著・中公新書・2007年)

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「生命にとって酸素とは何か」(小城勝相著・講談社ブルーバックス・2002年)

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O2・活性酸素物語(近藤元治著・南山堂・1997年)

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