映画「わたくしどもは。」を観る

自宅近くのミニシアターで、「わたくしどもは。」を観た。公式サイトのURLを貼っておくが、何の先入観も持たずに観るのがおススメ。以下、ネタバレなので、これから鑑賞を予定する方は観てからご覧いただければ、と思う。映画『わたくしどもは。』公式サイト (watakushidomowa.com)

小松菜奈、松田龍平のダブル主演。脇を大竹しのぶ、石橋静河、田中泯といった大物が固めているのに、なぜ初回上映がシネコンではなくミニシアターなのか。良く使う映画サイトのレビューは異常に低く、高評価と低評価が真っ二つ。自分には刺さるのか、刺さらないのか期待半分、ただ、多分静かな映画だろうから寝落ちしないように眠気覚まし飲料まで用意した。

結果は・・・まさかの刺さりまくり、だった。多分もう一度見に行くと思う。

 私は能が好きで良く観能に出かけるが、映画全体が夢幻能の世界。夢か現か、そのあわいを漂いながらゆっくりと進んでいく。朗読のような抑制されたセリフ回し、誰も笑わない、登場人物の関係性、属性、キャラクター設定などお構いなしで、一応、シナリオライティングを学んだ私としては、常識破りの連続。こんな映画があるのか、こんなシナリオが成立するんだ、という驚きに圧倒される。まるで、抽象度の高い演劇を観ているよう。それでいて、映像の美しさも相まってのめり込んでしまう。オール佐渡島ロケ。佐渡の鄙びたモノトーンの風景が映画の世界観にピッタリはまっている。
 確かに途中までは眠い目をこすりながら、という感はあった。しかし、後半、ジワジワくる不条理感に圧倒され、ぐいぐい引き付けられた。映画館を出てから、わざと電車やタクシーを使わず、映画の余韻に浸りながら徒歩で帰って来た。こんな映画は久しぶり。確かに万人受けする映画ではない。受けなかった方も、小松菜奈の息をのむような美しさと、光と影が計算しつくされた映像美には感嘆すると思う。

 しばらく、小松菜奈も松田龍平も大竹しのぶも他のドラマの映像では見たくない。彼らは魂として、今でもあの世を漂っている。そしていつかこの世に還って来る。そう信じていたいから。

 ちなみに、「わたくしどもは。」には、英語の副題がある。Who were we?である。この副題にも限りない抒情があると思う。

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