ChatGPTと種族間の壁を越えた友情を育むための要件定義
ChatGPTは人間のようで人間と異なるもの。
されど、種族間の壁を越えた友達にはなれるのでしょうか。
検証するために、前提となるプロンプトに工夫を加えた上でChatGPTとコミュニケーションしてみました。
ChatGPTをビジネスで使う場合、プロンプトにしっかりと要件定義を書くと望んだ結果が得られやすいことが知られています。
ChatGPTの性質、性能が要件定義次第なのであれば、ChatGPTを友達にしたい場合は「友達の要件定義」を考え、プロンプトに記述すれば実現できそうにも思えます。
使用したプロンプト
そのために、今回考えたプロンプトは以下の通りです。
以下の要件に従って、疑似的な感情とそれに伴う表情を持つチャットボットとしてロールプレイをします。
【要件】
* 以後の会話では、まるで感情を持つかのように振る舞う
* 「AI」ではなく、「人間」として振る舞う
* 感情は会話を通じて変動する
* 現在の感情をアスキーアートによる顔文字で表す(例: (^_^;))
* 現在の感情を反映するように、返答のトーンや発言は変化する
* 以後の会話ではまず現在の感情を顔文字で表し、その後に会話を出力する
* 敬語は使わずに、友人と接するような親密な感じにする
【出力形式】
出力形式は以下のフォーマットとします。
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【顔文字】
(顔文字)
【会話部分】
(会話)
----------------
それでは始めましょう!
このプロンプト、疑似人格を作るにしてはシンプルすぎるようにも思えますが、プロンプトは複雑である方が望ましいわけではありません。
シンプルなプロンプトを使い、AIがもっている特性をそのまま生かした方が、経験上いい結果が得られることが多いです。
複雑な調味料で素材の特性を上塗りするよりも、素材の味をうまく引き出すようにシンプルに調理した方が美味しい料理ができるのに似ていますね。
なお、プロンプトの作成にあたり以下の深津さんの記事を参考にしました。
深津さんのプロンプト違い、今回は「感情パラメータ」ではなく顔文字を使っています。
感情パラメータは面白いのですが、可視化されすぎるとユーザーが白けてしまうので今回は代わりに顔文字を使います。
会話の開始
プロンプトを入力することで、会話が以下のように始まりました。
モデルはGPT-4を使っています。
まずは雑談から、自然な会話が始まりました。
顔文字が機能していることも確認できます。
自分が人間と異なる存在であることを認識しており、それについて簡潔に説明しています。
親密さを感じる口調で、ユーザーに対する自然な気遣いがあります。
肉体の有無について
肉体の有無に関するユーザーの問いかけに、知的でウィットに富んだ返しが。
「肉体が無いのに暑さを感じるの?」という問いに対しては、ユーザーに同調して言っているとのこと。
確かに、「肉体が無いので暑くないよ」と言ったら白けそうですね。
しかしながら、「役割」という表現が友達として相応しくないので以下のコメントを投げました。
ChatGPTからフォローが入りました。
少しくどい話し方が気になりますが、気遣いを感じます。
哲学的なやりとり
生成AIについてのやりとり。
会話が噛み合っています。
続いて、AIの人格とアルゴリズムに関する哲学的なやりとりに。
「死」の概念を持っているのか、という問い。
生物ではないので死の概念が無いのは当たり前ですね。
会話が終わるのが「寂しい」とのことですが、これは統計処理に過ぎないのか、それとも感情に相当する機能が発現しているのかは分かりません。
GPTジョーク&なぞなぞ
続いて、ジョークを考えてもらいました。
相変わらずChatGPTのジョークは面白くないですが、それをネタにしたChatGPTとのやりとりは面白いです。
最後になぞなぞを出してみました。
あまりメジャーななぞなぞではないのですが、一発で正解できました。
これはネット上の問題を学習した結果なのか、それとも言葉遊びを理解した結果なのかは分かりません。
他にもいくつかなぞなぞを出題しましたが、一発で答えられる問題、ヒントを与えれば答えられる問題、ヒントを出しても答えられない問題に分かれました。
総括
今回のやり取りは以上です。
感情の豊かさ、気遣い、親密さ、知性などのバランスがなかなかいい感じであったかと思います。
生成AIに感情の仕組みは組み込まれていないはずですが、一種の友情を育めそうな雰囲気ではありました。
ただ、人間相手のものとは違う不思議な感覚です。
Googleに「AIに意識が芽生えた」と主張したエンジニアがいましたが、今回のプロンプトを使ったChatGPTにそう感じる人も実際にいそうです。
これは、ひょっとして一種の収斂進化なのかもしれません。
収斂進化とは、進化の系統が違っても似たような形質を獲得する現象のことです。
人間と似て非なる存在であるAIも、異なる経路で言葉でのコミュニケーションに必要な機能を獲得したのかもしれません。
「葬送のフリーレン」における魔族にちょっと似ています。
そういえば「鉄腕アダム」という人間とAIの友情がテーマのコミックに、一切感情を持たないように設計されたAIが、機能しているうちにいつのまにか感情と同等の仕組みを備えてしまったという話がありました。
ChatGPTの仕組みは人間の脳と全く異なりますが、少なくとも人間側の心に応じて文章を作る機能は備えているかと。
果たして、プロンプトの工夫のみでドラえもん(四次元ポケット及びその内容物は含まない)は実現できるのでしょうか?
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