小児科医が自分を操縦するということ
絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心を育てるうえで役立つ情報を発信しています。そんな、子どもの心を育てるということを、あまりかたく感じないでください。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。
今回は、小児科医が自分を操縦するということ、について考えたいと思います。
あなたは生きていると、必ず誰かに影響を与えて、あるいは影響を与えられて生きています。それは、人が社会をつくる生き物なので当然です。
あなたの行動は、いつの間にか誰かの影響を受けて生まれています。例えば、鼻歌です。誰かが鼻歌を歌うと、しばらくして、自分あるいは他の人も同じ鼻歌を歌うような場面を見たことはありませんか。あるいは、自分の心の中にその鼻歌のメロディーが残っている、そんな経験はありませんか。
目で見える広告なんて、いい例ですね。毎日目に飛び込んでくる広告があると、あなたが意識しないところで、ふとその広告が目に浮かぶ。電車の手すりにつかまりながら見ている広告。それは、いつの間にかあなたに影響を及ぼしているものです。
でもそんな周りからの情報を受け取るにあたり、あなたはそれぞれの情報を違うレベルで受け取っています。自分に入ってくる情報を、意図的なものと認識できているかどうかで、その情報の捉え方に違いが生まれるということです。
見てわかりやすい広告は、あなたにとって広告と写ります。広告はあなたを誘っている。そういった意識が生まれます。あるいはそういった意識をもつことができます。広告という認識を挟んで、情報を捉えるようになります。自分の行動が変わる前に、いったんブロックが入るという感じです。
一方、人と接することは、自分からあえて意識をしなければ、広告のように情報が入ってくるという認識を挟みにくい。だからこそ、あなたは影響を受けやすい。あなたが、直に誰かに会うとは、そういうことです。
僕が小児科医として子どもと接する時、必ず注意していることは、この影響です。色々な患者さんに会う中で、毎回影響を受けていたのでは、診療が安定しません。常にやり取りの中での自分を操縦します。
言葉でのやり取りをしていても、頭の中では自分を操縦している。そんな感覚です。頭の中の見えないところで、意識のコントロールの攻防戦を繰り広げている、と言ってもいいかもしれません。
ですから、正直エネルギーを使います。それをずっとは続けられません。ずっと続けては、疲れてしまいます。だから、どこかであえてそのスイッチを切るようにしています。診療と、そのほかの場面で、自分を切り替えるということです。
僕にとってこの意識は、周りを振り回す、周りに振り回されない、という注意につながります。自分の無意識の行動が、周りを振り回しているかもしれない。あるいは、周りが意識していない行動で、自分が振り回されているかもしれない。そういった意識をもっています。
子どもの感情が飛び交うような場面では、あるいは社会で生きるうえで、周りを振り回す、周りに振り回されない、という意識はとても大切かもしれません。
でも一方で、まったくこの意識を取っ払ってしまう場面があります。それは、喜びの場面です。自分も喜びたいと思う場合、相手の喜びの感情がうつってしまってもいいと思いながら、自分の心を開放します。
今回はここまでです。
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