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子どもとタオル

今回は、大切なタオルやぬいぐるみを肌身離さず持っている子どもについて、お話したいと思います。そこで大切なキーワードは、愛着と移行対象です。

移行対象のお話をする前に、以前にもこのチャンネルの放送で触れた、愛着という概念について確認しておこうと思います。愛着とは、イギリスの精神科医ジョン・ボウルビィが提唱した概念です。それは、子どもが特定の人間に対して持つ愛情による絆のことです。より正確には、愛着とは、子どもが、恐怖、危険、不安などを感じた時に、特定の人間との心の距離を維持したり縮めようとする性質や傾向のことです。

ただ、性質や傾向と言うとわかりにくいため、子どもが求める他人との絆(きずな)と理解していただければと思います。特に子どもにとっては、親との絆が重要です。つまり、愛着の対象として、親の存在が欠かせないのです。

子どもは心が不安定な状況になると、愛着対象である親との絆(きずな)を求めて、その不安定な心を落ち着かせようとします。そうやって、子どもは、一つひとつの物事を克服して経験に変えていくのです。つまり、子どもが様々な経験を重ねていくには、親との愛着関係が欠かせないということです。

子どもは成長するにしたがって、外の世界を経験するようになります。外の世界を経験して、様々な体験をするからこそ、色々な能力を身につけていきます。そういった初めての経験を積む時には、不安がつきものです。そんな不安を乗り越える時に支えとなるのが、親との愛着関係です。不安が高まれば、親の元へ駆け寄り安心する。そうやって勇気をもらいながら、また頑張れる。その行動を何度も何度も繰り返します。

そして、子どもにとっての外の世界というと、幼稚園・保育園、そして学校などがあります。こういった場所で過ごそうとする時には、不安が生まれます。なぜなら新しい物事にたくさん触れ不安も感じる一方で、親から離れる必要もあるからです。このように、愛着対象である親と離れる時に生じる不安を、分離不安と言います。要するに、親から離れることに不安を感じるということです。

外の世界へ出る時に子どもが親と離れるにあたり、分離不安が生じる。でもいつまでも親が一緒にいるわけにはいかない。その際に、愛着対象であった親の代わりを果たすのが、移行対象です。この移行対象は、イギリスの小児科医・精神科医のドナルド・ウッズ・ウィニコットが提唱した概念です。

子どもは、親の代わりに、毛布、タオル、ぬいぐるみなどに対して、特別な愛着を感じるようになります。いつも特定のタオルを大切にしながら、幼稚園に登園する。タオルがボロボロになっても、常に持ち歩こうとします。そうやって親以外のものに、安心感を求めるようになるのです。

移行対象であるタオルを、無理矢理取り上げるとどうなるでしょうか。子どもは、移行対象であるタオルを持つことによって、不安を克服しようとしていました。その不安を克服する支えを強制的に失ってしまうと、不安が高まってしまうのです。

いつかは、移行対象であるタオルとも卒業する日がやってきます。それは、家に帰れば親がいるという時間や空間の認識が進むからです。そして、心の中に親という存在を感じることができるからです。

ですから、タオルをずっと大事にしている子どもをみたら、不安と戦いながら、一生懸命頑張っているのだと理解してください。そして、それを無理に取り上げようとせずに、移行対象であるタオルから卒業するのを楽しみに待っていてください。

実は、こういった移行対象からうまく卒業するのには、乳幼児期の親から子どもへの関わりが欠かせません。子どもに様々なことを経験させてあげながらも、不安が生じたらしっかり寄り添ってあげる。そんな関わりによって、様々なことにチャレンジをする心が育つのです。そんな心が育つからこそ、移行対象からもうまく卒業できるようになるのです。

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