外の世界でつくられるあなた
絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心を育てるうえで役立つ情報を発信しています。そんな、子どもの心を育てるということを、あまりかたく感じないでください。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。
今回は、外の世界でつくられるあなたについて考えたいと思います。
人は成長するに従って外の世界とつながりながら、自分という存在を認識します。人だったり、物だったり、色々なものとつながりながら、外の世界から見た自分という存在を固めていくのです。それはまるで、鋳型のような世界です。外の世界のつながりをつくりながら、鋳型のようにあなたの周りを固めていきます。そして様々なつながりをつくることで、びっしり詰まったあなたという鋳型が出来上がるのです。それが、外の世界から見た自分です。
そう考えると、あなたには、あなた自身から見た自分と、外の世界から見た自分がいることがわかります。つまり、あなたには、2つのあなたが存在するのです。あなた自身から見た自分は、あなたにしか感じられないものです。一方で、外の世界から見た自分は、外の世界でつながった人や物との関係の中でつくられる集合体のようなものです。
あなたには、そういった2つの自分があります。
ところであなたは、怪我をしたことはありますか?あるいは、心が傷ついたことはありますか?あらゆる世界で生きていくと、様々な経験を通して、そういった傷を負いながら痛みを感じるものです。では今度は、あなたではなく誰か他の人の痛みを、あたかも自分の痛みのように感じたことはありますか?例えば、あなたにとって大切な人が辛い目にあっている時に、あたかも自分の痛みのように感じたことはありますか?
あなたが、人とつながることができていれば、他人の痛みを自分の痛みとして感じた経験があると思います。つまり、もしもあなたが誰かとつながりをつくれればつくれるほど、その人の痛みを自分の痛みのように感じるはずです。しかも、その人とのつながりが強ければ強いほど、その人の痛みを自分の痛みとして強く感じてしまうものです。
ここまで、あなたには、あなた自身から見た自分と、外の世界から見た自分がいることをお話ししました。そして、外の世界とのつながりが強ければ強いほど、外の世界の現象を自分のものとして感じられることにも触れました。最後に、あなたにとって影響力が強い自分はどちらかということを考えたいと思います。
あなた自身から見た自分と、外の世界から見た自分、という2つの自分のうち、あなたにより強い影響を及ぼすのはどちらの自分だと思いますか?より正確に言うと、もしもあなたがしっかり外の世界とつながりをつくれる人であれば、どちらの自分があなたに強く影響を及ぼすでしょうか?
それは、外の世界から見た自分です。
もしもあなたが誰かとしっかりつながりをつくれたならば、その人の痛みをあなたはどんな風に感じるようになると思いますか?それは、あなた自身が負った痛みの何十倍も何百倍も耐えがたい痛みとして感じるようになります。そうです、あなた自身の痛みよりも、つながりをもてた外の世界の痛みの方が、より強く感じられるようになるのです。
このように、人はつながりの中で生きる生き物です。そういうものなので仕方ありません。ですから、あなたが子どもとのつながりをつくればつくるほど、子どもの辛い様子は自分の痛みとして感じられるようになります。それは、痛みだけではありません。子どもの幸せが、自分の幸せとして感じられるようになるのです。
そう理解していただくと、子育てをするあなたが幸せになる方法がわかると思います。それは、子どもとの強いつながりをつくりながら自分の外の世界を固めていき、そして子どもの幸せを増やすことです。そうすることで、あなた自身の中でつくろうとする幸せ以上の幸せを感じられるようになるのです。
そうやってつながりをつくりながら、自分の心を豊かにする。今日のお話を理解していただくと、親としての幸福度が桁違いに増えていきます。
今回はここまでです。