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社会が、こうなったらいいな

絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心を育てるうえで役立つ情報を発信しています。

子どもの心を育てる活動を行う中で、昨日は、オンラインでラジオに出演させていただきました。そうやって色々な方々にお会いすると、子どもが生きやすい社会を実現したいと思っていらっしゃる方がたくさんいることを実感して嬉しくなります。

そんな今回は、子どもに対してこんな風に接することができる社会になるといいな、ということをお話したいと思います。

皆さんの中にも、できることや、できないことがあると思います。大人になるまでに色々な経験を積んで、できなかったことができることに変わる。そういった体験をするからこそ、「今はできないけれど、これからできるようになるだろう」という見通しを持てるようになります。

その見通しは、自分の行動に対してだけ当てはまるものではありません。他人の行動であっても、「色々な経験を積むうちに、今できないことも、できるようになるだろう」という見通しを持てるようになります。そうやって、自分や他人の行動の見通しが持てるからこそ、自分の心は穏やかになります。

そうやって、自分あるいは他人の行動に対して、寛容な心を持てるようになること。それは、心の余裕とも言えるかもしれません。見通しを持って、寛容な心で、心の余裕を持って人に接する。このことは、子どもに接するうえでとても大切なことです。

例えば、世の中には、学校のトイレを利用できない子どもがいます。それは、「トイレに行くことが恥ずかしい」という気持ちがあったり、「使い慣れている自宅のトイレと、学校のトイレは事情がちょっと違うから不安」という気持ちがあったりするからです。

そんな子どもが学校でトイレに行けないと、生活に支障をきたすことが少なくありません。しっかりトイレで用を足すということは、意外と大切なことなのです。そして、そういった課題を持つ子どもは、珍しくないのです。そんな子どもに対して、困難を解決した先にある見通しを感じながら対応すること。それが、とても大切です。

あるとき、こんなことがありました。その子はもともと、自分の意見を相手に伝えることや、自分に言われたことを理解することが、少し苦手な子でした。仮に、ここではA子ちゃんと名付けましょう。そんなこともあって、A子ちゃんは、学校でトイレに行くという行動ができずにいたのです。

トイレに行きたい時に、トイレに行けない。そうやって我慢すると、お腹の動きも鈍くなります。食欲にも影響します。でも、それだけではありません。ずっと我慢するということは、子どもの心にもいい影響があるわけがありません。次第に学校で生活することが億劫になっていた。そんな状態でした。

自分の行いたいことを、行えずに我慢する。そんな生活は、大人であっても嫌になります。会社に行ったら、嫌な上司にガミガミ注意を受け、自分を出せずに我慢する毎日だったら、会社に行くことが億劫になります。

ですから、親御さんや学校の先生と話して、その子どもの気持ちを引き出していただくようにしました。例えば、定期的にトイレに行く声かけをしてあげる。それは、お友達の目の前ではなくて、そっと声をかけてあげる。最初は、落ち着いたトイレがよければ、クラスの近くにあるトイレではなく、別のトイレを使わせてあげる。

そういった、子どもの心に寄り添う対応をしていただきました。そうすると次第に、A子ちゃんは定期的に学校のトイレを利用できるようになりました。学校での笑顔も出てきたそうです。

こういった子どもは、実は珍しくありません。このお話には、続きがあります。次の年のことです。そのA子ちゃん以外にも、なかなかトイレに行けないB子ちゃんがやはりいました。ある時、もともとトイレに行けなかったA子ちゃんが、保健室で、今トイレに行けずに困っているB子ちゃんを見かけることがありました。

その時、A子ちゃんの口から出た言葉。それが、「大丈夫。あそこのトイレ、いいよ。使ってみてごらん」という言葉です。偉そうな貫禄たっぷりの態度で、A子ちゃんがB子ちゃんにアドバイスをしたそうです。それを見ていた保健室の先生は、思わず笑いそうになってしまったそうです。でも、A子ちゃんの成長を感じることができて嬉しい気持ちもあったということでした。

子どもに対して、こんな風に接することができる社会。それは、子どもの心に寄り添いながら、そっと支える社会です。しかも、その子どもが困難を達成できた時には、偉そうに見栄を張る場面もあるかもしれません。そんなところも含めて、子どもの成長として、微笑ましく感じてくれる社会。そういった社会が大切と思っています。

それは、大人の社会でも同様です。例えば、医師になりたての若者は、1年目であろうと、2年目であろうと、医療の世界を知らないことには変わりはありません。そんな若者であっても、2年目になると、医師になって最初の1年間の経験を積んで成長しています。そんな1年目の経験を通して、新しく医師になる人たちを指導してくれます。中には偉そうに指導してくれている2年目の医師もいます。

そんな時に僕は、その光景をとても微笑ましく感じます。まだまだ色々なわからないことがあって、不安なこともあるだろうけれど、それでも生きていこうとしてくれている若者たちを見ると嬉しくなります。できないことを指摘するばかりではなくて、できるところに気づいてあげること。それは、相手の人生も豊かにしますが、自分自身の人生も豊かにしてくれます。

今回はここまでです。

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