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フィレンツェの空 6/6/2021
6月になった。
いつも思うけど、時が過ぎるのは早い。
配達されるはずの荷物に翻弄された日々も、過ぎ去ってしまえば、
喉元過ぎて熱さを忘れている。
5月の末、私はイタリアの郵便局に振り回されていた。
「配送料無料サービス」に魅かれて、オンラインショップでポチったのが、事の始まりであった。
普段、実にアナログ的なこのイタリアも、ここのところの、いろいろなオンライン化には、目を見張るものがある。
ポチッと押して、早ければ翌日、遅くとも1週間程でモノが届くのは、イタリアにおいて、ほぼ奇跡的な感じがして、まだ私が来たばかりの頃、20年前には、考えられなかった事である。
実際、オンラインショップで買い物を楽しむようになって、数年経つけれども、モノが届かないということは今までなく、なんだかんだで手元に届いていた。
「お届け中です」
トラッキングで商品が届くと知ったその日、私は家で待ち続けていた。
だいたいいつもはお昼前、遅くても午後の4時までには届く事が分かっているのは、地域によって配達の時間が決まっているからで、
でもその日だけは、1時が2時、2時が3時と、ズルズルと時間だけが過ぎていった。
夕方過ぎの6時、いよいよ来ないだろうと思い、買い物に出たのが運のつきだった。
そこに1本の電話が入る。
それは、配達員からだった。
「不在でしたら、明日の午後2時から4時までの間にお届けします。」
無茶苦茶、感じの良い配達員からの電話を信じて、
翌日、しがみつくように、家でじっとして、私は待ち続けていた。
だがしかし、インターホンが鳴った形跡も、電話がかかってくることも、
その日は無かった。
その夜に、1本のメールが届いていたことを知ったのは、翌日の朝。
「お荷物のお届けについての問題解決には、以下のいずれかにアクセスしてください。」
私が注文していた商品は、郵便局の提携の宅配業者に委託されたものだった。
おかしなことに、ネット上では、「昨日の夜、配達員が届けに来たが不在だった…」という扱いになっていた。
ビックリしてしまうけど、イタリアでは、「あるある」な話である。
案内によって、ページを開くと、郵便局のホームページにたどり着いた。
アクセス方法は4つ。
・電話
・メール
・チャット
・窓口
このどれを使っても、解決方法はただひとつ。
電話で問い合わせる…という事だったのには、笑ってしまう。
私は、どれも試してみたのだった。
窓口にも行ったし、提携の宅配会社にも問い合わせをした。
でも結局は、電話をするしか方法はなかったのである。
イタリアの、どの機関にでも存在する、フリーダイヤル。
私は、これが非常に苦手である。
誘導されるように、幾つかのカテゴリーを選択していくのだけど、
上手く、オペレーターに繋がるのは、奇跡に近い。
仕方がない、意を決して、電話をしてみた。
オペレーターに繋がる番号を導き出すまで、しばし、格闘した。
ようやく、繋がった…と思ったのに、ブチっと切られた。
再び試す。
「ただいま電話が混み合っています。しばらくしてからおかけ直しください。」
今度は、自動音声が流れて、一方的に切られた。
少し経ってから、またかける。
「もしもし?」
蚊の鳴くような小さな声で、聞いた瞬間、ダメだこりゃと思う。
案の定、どさくさに紛れて、相手から切られた。
もう、こうなると、ほぼほぼストーカー状態になる私。
何度も試し、ようやく繋がったのは、かけ始めてから2時間くらい経ってたかと思う。
「もしもし、こんにちは。どんなご用件でしょう?」
やっと、マトモな声に出会った。
声色で、その為人って分かるんだな…
その時、そんな事を思った。
結局のところ、ようやく繋がったマトモなイタリア人に言われる。
「差出人に確認してみてください。こちらからは、配送先不在という事で差出人の決裁を委託しています。全ては、差出人の意向によります。」
マトモなイタリア人の返答で、なんだかスッキリする自分がいた。
実はもう、差出人にも問い合わせ済みで、後は、その返事を待つばかりとなった。
毎回のことながら、イタリアの郵便局には、驚かされる。
人によって、言うことも違う。
真剣になればなるほど、はまり込んでいった負のスパイラルにも、
全ては、「ここはイタリアだからね!」と言うイタリア人。
それでも、「捨てる神あれば拾う神あり」。
だから続いている、イタリア生活。
結局のところ、商品は、私の手元に届くことはなく、商品は返送されることとなった。
6月最初の土曜日。
空はなんとなく、どんよりしているけれど、
日中の温度は上がりつつある。
夏は確実に、やってきている…らしい。
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