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かかりつけの本屋

「向田邦子が好きな中学2年生だったら、自分で選んで書けると思いますよ、読書感想文」という診断の通り、今年の夏休み、中2くんはその本屋さんで、自分で本を選んだ。

私もその本を読んだ。めちゃくちゃ好きなタイプの本であった。単に親子だから脳が近いのかも知れないが、それにしても嬉しかった。本屋の店主さんに感謝した。

中2くんが中1の頃、学校での読書タイム用に何か良い本はないかと聞かれた。私の好きな米原万里や田丸公美子は、下ネタが少しだけキツめなので、いちいち質問されてしまっては億劫だ。東野圭吾の学生時代のエッセイ『あの頃ぼくらはアホでした』の下ネタであればまだ柔らかいので、勧めた。気に入ってもらえたようで、また何か選んで欲しいとリクエストがきた。そこで渡したのが、手持ちの向田邦子のエッセイ『無名仮名人名簿』だった。

中学の教科書に載っていた『字のないはがき』は今でもよく覚えている(教科書に載るくらいなので、下ネタへの配慮フリーである)。中学生の私には大人の領域のように感じられて近寄り難かった地元の本屋の文庫本コーナーに、向田邦子の名を見つけたときの高揚感も思い出せる。果たして、これまた中2くんにヒットしたようで、読んだ日は帰宅してすぐ「お母さん!向田邦子、面白い!」と報告してくれた。

私の選書は中2くんの信頼を得てしまった。「お母さん、夏休みの読書感想文の本も選んで」というリクエストがきた。向田邦子でええやんけ。

せっかくなので、行きつけの本屋さんにアウトソーシングを試みた。いつもパソコンと向き合っている店主さんと話してみたかったので、いい口実だな〜なんて下心もあった。決して広くない店内の限りある漫画コーナーに、ヤマシタトモコ『違国日記』が全巻揃っていたり、その『違国日記』で東郷くんが千代ちゃんから借りたチョン・セラン『フィフティ・ピープル』も置いてあったりする本屋さんですよ。

で、冒頭に戻る。話長くてすみません。ご明察とか、ご慧眼とか、何だか上からっぽくて使ったことのない言葉だが、こういうときに言われるのだろうか。それより、長く診てもらっているかかりつけの小児科のお医者さんに、大丈夫ですよと診断してもらったような感覚だった。

診断を受けた時、中2くんは同席していなかった。後日そのままの言葉を伝えたら、案の定、とても嬉しそうにしていた。

改めて2人でその本屋を訪れ、中2くんが自分で選んだのは、『子どもの算数、なんでそうなる?』谷口隆の本でした。合わせて広瀬友紀『ちいさい言語学者の冒険』もオススメです。いずれも岩波科学ライブラリーの本で、専門家が自分の子どもたちをそれぞれの専門分野から観察・分析しており、世界をより細かく感じる視点を与えてくれる、と思うのです。です!

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