見出し画像

かかりつけの本屋:うまい返し編

夕飯の時間には、子供たちの観たいアニメを流す。ご飯の時はテレビを消しなさい、の逆です。だって面白いし楽しいんだもん。

特に某スポーツアニメは何度も繰り返し観ており、子供らが暗記しているのは主題歌や台詞だけではない。『映像研には手を出すな!』で学んだ尺伸ばしの手法実践編と言えそうな、動きの少ない箇所、再利用の箇所、またはYouTubeで調べ上げた作画ミスの箇所など、粗探しではなく(粗探しだけど)それらさえも楽しませて頂いている次第でございます。ありがとうございます。

ある夜、その某アニメの第何期か、絵の乱れがピークの回の視聴中、顧問の先生とコーチの会話のシーンで「先生のこの顔、変」と子供が呟いた。私はそれに対して

「ね。私が描いた絵みたい」

と返したのだ。すると中2くんが私を見てニヤリとして、言った。「その返し、うまいね。ひとつの文にふたつの意味が込められているね。ディスりを肯定しながらも、自分のことを棚に上げていないというね。うまいね」

ええ。意識しましたとも。ディスりを窘めたいわけではないが、かといって、また流すのもどうかと思ってな。根が真面目だからな。褒められて嬉しいぞ。

話は変わりますが、個人的にかかりつけの本屋さんと呼んでいる、行きつけの本屋さんが幕張にあるのですが。

私はいつも、店主さんに何を話そうか(漫画のことが多め)考えながらその本屋に向かう。至福の時間。会計のときに話しかけると、こちらに向き直って聞いてくれるのだ。いつもありがとうございます。かもめブックスに連れ込んだ友人が楽しそうに本を選ぶのをこっそり見つめて楽しんだ話をしたときは「本屋にそんな楽しみ方があるとは!」と本屋っぽい感想をゲットしたり。

その店主さんが、近々本を出版されるという。『ユートピアとしての本屋』素敵なタイトル。ほんまユートピアやで。

その本には、きっと店主さんの考えていることが沢山書いてあるのだろう、タイトル的に小説ではなさそうだし。読みたい。でも、私が喋るのは漫画のことばかりなのに、なんだか不公平ではないだろうか。では、私も近々自伝的な本を出すのかといえば、限りなくNOに近い。近似値というより真の値。従って、不公平は承知の上で、買って読むの一択なのです。

と、この長い自問自答を、店主さんに、例によって会計のときにお話してみた。それに対して店主さんは

「真面目w」

という、優しさの詰まった、うまい返しをくれたのでした。ええい、これが本物のうまい返しだ。なんてシンプルで自然なんだ。同じシチュエーションが訪れた際には、絶対に絶対に真似させてもらいますからね。

ちなみにそのときに購入した本は山本文緒『絶対泣かない』、こだま『夫のちんぽが入らない』これはこの本屋でしか買えないタイトル。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?