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夏の読書感想「バラバ」

「バラバ」って何? と多くの人は思うでしょう。バラバはイエス・キリストの代わりに磔刑を免れ釈放された、新約聖書に登場する極悪犯罪者の名前です。

私が読んだのは岩波文庫刊の小説「バラバ」、著者はスウェーデンの作家ラーゲルクヴィスト、尾崎義訳です。

バラバは実在の人物ですが、この作品は小説。寸でのところで磔刑を免れたバラバのその後の人生を、想像たくましく創造して書かれたフィクションです(聖書にはそこは書かれていません)。

最近の数か月、教会学校で「マルコの福音書」を学ぶ中で、ある時、教会の兄弟と「でも、イエス様の代わりに釈放されたバラバって、その後どうなったのか興味があるよね? 当然、その後、イエス様が十字架に掛けられてから三日後に蘇られて多くの弟子たちに現れたことも見聞きしただろうから、自分の代わりに磔にあった人が神だったと知ったら、どう思ったかしら、ねえ?」なんて会話をしていたら「そのことを書いた小説があるんだけど、読んでみる?」と貸してくれたのでした。

バラバが実際にどのような極悪人だったのか、伝承やなにか記録があったのか調査もしてないので私は知りませんが、小説の中では山賊の設定です。イエス様が語られた「良きサマリヤ人」の例えに出てくるような、”極悪非道な追いはぎ集団の頭”だった想定になっています、さもありなん?な感じ。

さらに、バラバの顔にあった深い傷についても、なんとも不幸で悲しい曰くが設定されています…(映画「サン・オブ・ゴッド」に出てきた、如何にも凶悪犯のバラバも顔にも確か大きな傷があったので、それは正しい伝承とか何かなのかもしれません)。

さて、そのストーリーとは? バラバの生涯に興味があったから例え小説でも読んでみたかったのでしたが…。

私が思うに、イエスの代わりに無罪放免になったバラバが、その後、純粋に(?)元居た世界に戻って残りのこの世の人生を謳歌したとは到底、思えない。

十字架の死から墓に葬られたにも関わらず三日後に蘇ったイエス様のことを、まず噂として耳にしたなら、居ても立っても居られなかったはずで、きっとそこからイエス様のことを調べ、最終的には、自分の代わりに十字架に掛かられたのは自分の罪を贖ってくださるための愛の行為だったと知り、信仰を持つようになったに違いない、という、ありきたりな、いかにも誰でも考えそうな筋書きです…(想像力乏し過ぎ)。

結論だけ言うと、この小説で描かれているバラバは、最終的に信仰を持ちました…、そのところは、ほっとしました。でも、そこまでの経緯は、なかなか複雑で、一回さらっと読んだだけでは私には容易に納得も理解もできるものではありませんでした。でも、結論が、そうだから、小説なんだけど、良かった…、と安堵感はあります。

ネタばれになっちゃうけれど、バラバの最後は、キリスト信者の迫害にあって磔刑になるのです。え? せっかくイエス様が代わりに十字架に掛かってくださったおかげで自分は放免されたのに、結局、磔で人生終わる結末なの? と、事実関係だけ見れば(フィクションですけど…)理不尽にも見えますが、全然そんなことはありません。

だって、恩赦の時に、もしイエス様が釈放されて予定通りにバラバが十字架刑に処されたとしたら、罪の赦しも永遠のいのちもなかったわけです。でも、この小説のバラバはまさかの釈放の後、複雑で悲惨な道をたどりながらも最終的にイエス様を自分の救い主と信じて磔刑を受け入れたんです。つまり行先は天国。この差は、文字通り、「天国と地獄」です。

ここで描かれているバラバの人生の悲惨さといったら、その出生の時からすでにあり得ない悲惨な設定(といっても、現代でも十分世界のどこかで起きていることだと思われます…)ですが、著者は、それでもその悲惨さの中でもイエス様の愛を知り、その救いを知って受け入れることができたなら、この世の後に待っているのはイエス様の待つ天国なんだ、それこそが、人間として生まれてきたことの究極の幸せなんだということを、このバラバの苦しい人生の続きを敢えて想像して描くことで訴えたかったのかな? と思えます。

多分、著者はイエス様の視点を想像して、イエス様だったら釈放された後のバラバをどう導かれたかったのかを最大限、思い描きながら書いたのかもしれません。

と、ここまで書いてみて、自分が救われているの事のありがたさを、日ごろどれだけ軽んじているんだろうと、思わずにいられません…。
もちろん、人生、日々、いろいろありますが、それでもバラバほどの苦難ではないわけですし、何よりイエス様がいつも一緒にいてくださっているわけなので、いろんなことをあれこれ辛がったり、文句いったりしないで、もっと果敢に生きていかなくっちゃ、と思えてきました。

私が借りたのは岩波文庫の15版。岩波書店がこんな超ニッチな、誰が買って読むのだろう?と思われるテーマの本を、文庫に入れたのがすごいし、結局、少なくとも15版まで出版されているということは、日本の人口の1%と言われる希少なクリスチャンの間でニーズがあるのか、クリスチャンでない人たちにもけっこう読まれているのか、よくわかりませんが、読んだ方の感想を伺ってみたいなあ、と思います。

神はそのひとり子を世に遣わし、その方によって私たちに、いのちを得させてくださいました。ここに、神の愛が私たちに示されたのです。
ヨハネの手紙第一 4章9節

イエス様の愛に改めて感謝し、天国でバラバ氏に会えることを期待しつつ。

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