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わたしをつくった本たち

ブックカバーチャレンジのバトンをばんかおりさんからいただきました。でも、わたしの読んで来た本は手に届くところにないことが多いのです。(上の写真も実家の本棚です)
どうしようかなぁと思っていたら、ちょうど絵のチャレンジもいただいて、あ、そうか、表紙のイラストにして一緒にやっちゃえ!と閃きました。
わたしはしつこく同じ本を読み返すタイプで、その中でもわたしをつくってくれた本たちを7冊ご紹介します。

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『イリュージョン』リチャード・バック=作、村上龍=訳

「戦争で死んだ奴はそうしたかったのさ」

「正しいかどうかは知らないさ、ただ、そう考えると楽しいからね、楽しいから信じてるんだよ、重要人物、幸福だと思っている人、世に出る才能に恵まれた人、そういう人は決まって利己的で、自分が最も興味のあるもののためにだけ生きてる、そこに例外なんてものはないね」

14、5才のときから愛読してます。だからわたしはこんな人間になったのかなと思わさせられる本。引用しきれないほど、ものすごくわたしの根幹をつくっている。リチャード・バックといえば有名なのは『かもめのジョナサン』だけれど、わたしは断然こちら。大人になってから初めて原書を読んでみて、村上さんの超!!自由な翻訳に呆れたけれど、それでもわたしの中には彼の翻訳での物語が生きてる。後書きもすばらしいです。
初めてつくったメールアドレスはトラベルエアーという主人公の飛行機の名前から取りました。

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『春になったら莓を摘みに』梨木香歩=作

そうだ
共感してもらいたい
つながっていたい
分かり合いたい
うちとけたい
納得したい
私たちは
本当は
みな

ああ、手元にないのが悔やまれる。「このくらいのことで傷ついていたら、外国で外国人はやっていられない」とか、「救世主願望は持たないことにしてるの」とか、ウエスト夫人の「理解はできないけれど、受け入れる」考え方や(鍵に名前と住所を書いてる!)、アメリカ人の、もうあなたしか見えないのという場の作り方、アフリカ人を初めて見たイギリスの男の子の話「じゃあさ、強い風が吹いたら、その色飛んでっちゃう?すっごい強い風だよ」などなど…(読まないとわからないですね、すみません)
海外に住むなんて夢見ることさえなかった学生の頃に読んでいた。わたしが外国人になるためのいちばん大事な準備を、気づかないうちにしてくれていたと思います。梨木香歩さんはほぼ全作読んでいるけれど中でも好きな本。

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『るきさん』高野文子=作

絵なしでは引用ができない…。
今、わかった。わたしの理想の生活は銭婆じゃなくて、るきさんだ!
高野文子作品は小さい頃に図書館で見つけた『おともだち』にすごく持っていかれました。不安なような、せつないようなあの世界。
その感覚はるきさんにはないのだけれど、実はあの自由さの裏にはそういう部分があるのかも。色合いも細かいところもすごく好きで、繰り返し読んだというかただ眺めているだけで安心できる本です。

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『村上ラヂオ3 サラダ好きのライオン』村上春樹=文、大橋歩=画

引用なし。村上春樹さんには影響を受けた考え方が多すぎて、ひとつを選べそうにありません。どうやって小説家になったのか、の話もとても好き。それに関しては『職業としての小説家』がおすすめです。村上さんの中で好きなのは長編小説よりは短編集(『レキシントンの幽霊』)、そしてふざけたエッセイ集や対談(『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』)なのだけど、これまた手元にない。村上さんもアメリカに住んでいた時期があるので、わたしの外国人の基礎をすごく作ってくれたと思います。
アンアンで連載していたこのシリーズはすごく短い上に字も大きいし、大橋歩さんの版画にほっとするし、隙間時間に読むのに最適です。

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『神様』川上弘美=作

「今日はほんとうに楽しかったです。遠くへ旅行して帰ってきたような気持ちです。熊の神様のお恵みがあなたの上にも降り注ぎますように。それから干し魚はあまりもちませんから、今夜のうちに召し上がるほうがいいと思います」

川上弘美さんも大きな影響を受けたひとり。短編、長編、日記、すべてのお話がわたしの中で混ざって生きつづけている感覚があります。よく見る夢の場面にもなっていそう。その中でも『神様』は特別。物語の静かな力を見せてくれる。大げさなことは何もないのに、すっとその世界に引き込まれる。震災の後に出た『神様 2011』とその後書きを英訳したことがあります。

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『わたしの中の自然に目覚めて生きるのですーあたらしい暮らしのちいさな魔法』服部みれい=作

今すぐにできる尊いことがあります。
それは、
今、ここに生きる、ということです。
過去や未来に生きるのではなく、
ただ、今、を味わうことです。

服部みれいさんはわたしの特別なひと。社会に出た頃から、渡米、転職、結婚、そしてここまでずっと寄り添ってもらっている。本も雑誌も日記本も読んできたけれど、この本がいちばん核で20代からの暗黒期のわたしを支えてくれたと思う。当時はなにかあるたびに答えを探してこの本を開いた。お世話になりました。
今はこんな人がちゃんと今わたしが立っているこの地面の先にいるのだ、という安心感をくれている。そしてさらにラジオで声も聞けるのだ。お話なんかもできちゃうのだ。贅沢だなぁ!みれいさんらぶ!

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『テーブルの上のファーブル』クラフト・エヴィング商會=作

この世は昼でも月下です。

え、こんな自由な本があっていいんだ!?ってワクワクした本。吉田健一、岸本佐知子さんを知ったのもこの本。本やものを作ることの楽しさが詰まっていて、今読むときっと楽しいだろうに。そしてもう絶版みたいなので、実家に無事に保管されていることを祈るのみ。クラフト・エヴィング商會さんのその他の本も大好き。デザインも絵も素敵です。

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これで7冊です。思い出しながらなので、他にもまだあるような、という気持ちがぬぐいきれないのですが、ほんとうに他にもまだあると思います。子供の頃の絵本や、小学生の頃の文庫本や全集、もっと大人になってからの本なんかもわたしをつくってきてくれました。今回の7冊は特に、思春期からの、迷ったり考えたり、心細かったりした時に、手放せなかった本たちです。
文字中毒でトイレさえ本なしでは行けなかったのに、渡米からこっち、日本語を味わう時間を持てなかった数年がありました。新しい言語で頭がいっぱいになっていたのだと思います。だけど、新しい言語を得てさらに日本語の中に深く戻るような経験もしました。
今は手元にない本たちだけれど、確実にわたしの中にある。本って物質であって物質でないのですね。これからもいろんな本といろんな形で出会って行けると思うと心づよいです。
じっくり振り返る機会をくださったばんかおりさんにお礼を申し上げます。ありがとうございました!

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LOVE, Yuko
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