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山王寺棚田の作物(1)

 昨年から棚田に興味を持った。棚田についての知識がないのに、ちょっと出かけてみる。最初に棚田をみようと出かけたのは春先だったので、整備された地形をみて驚いた。学生時代に能登で見たのでおおよその想像はできたけど、この年で改めてみると、農作業は大変だろう、ということ以外に、用水のこと、後継者のこと、米の品質のことなどに思いをめぐらせた。友人に棚田を見たと話すと、わざわざ遠くまで行かなくても、美しい棚田が近くにあると教えられた。(私が見たのは岡山県の棚田)
 島根県雲南市大東町の山王寺、早速出かけ、友達が出来た。
この棚田は展望台が整備され、子供たちに学習して貰うためのたんぼの学校というイベントが催される。見学客向けに棚田カフェもある。
 カフェに入り、アイスクリームを頂く。店主のN氏から勧められたから。
「このアイスクリームにはまこもを粉末にして練りこんであります」とN氏はいう。
「まこも?」
まこも=真菰とは・・・
まこもはイネ科の多年草。米を作る中国や台湾では、聖なる植物と称すところもある。出雲大社の神楽殿の注連縄は稲ではなくこのまこも使って作る。「では、稲みたいな形状ですか?」「そうです。たんぼの水を引く取水口近くに植え、栽培します。たんぼの水を浄化する力を持っています」「このアイスの中に入っているまこもは、粒状?それとも粉ですか?」
「イネ科なのですが、粒が実るのではなく、マコモタケと呼ばれる、細長く太く出てくる茎みたいなものです」私の想像力はここで頓挫。「見ることできますか?」「勿論、秋の短い期間ですが」という会話でこの時は終わった。
9月の初め、棚田を訪れる人々は黄金に輝く稲を見ていたが、私はまこもを見た。
棚田カフェで販売されたまこもを購入し、てんぷら、サラダ、きんぴら、和え物を作った。おいしかった。満腹になって『出雲の国まこも風土記』を読む。イネ科の植物だから、稲と同じように藁として生活を支えていた。多年性で秋の一時期しかまこもたけは出ないが、根が広がり毎年収穫できる。スサノオノミコトの時代から食糧として大事にされたとの記述に納得する。
まこもに出会い、普及させようと、まこも料理を考案するシェフ達はランチを創作し、栽培しようとする人々はネットワークを作る。もちろん美味しく食べたい私のような消費者は新しいレシピを待つ。古来からの貴重な食べ物は、21世紀に生きる私たちに、生きることを教えてくれる。
情熱を傾けてまこも普及のため全国でお話会をされている方がおられる。これからまこもを使った商品がたくさん販売されるという。楽しみだ。


ゆうこの山陰便り №164 加筆修正

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