シングルのスキル in 1930s
マージョリー・ヒリスという女性をご存知だろうか。
1889年、アメリカのイリノイ州生まれ。現在でも有名なファッション誌、ヴォーグの編集者として活躍していたが、何よりその名を有名にしたのは彼女が1936年に出版した”Live Alone and Like it”という本。
その年の全米トップ10入りするほどの売り上げを記録したこの本は、タイトルの通り、様々な理由で一人で生きる女性にエールを送り、快適でエレガントなシングルライフのスキルを多くのケーススタディとともに紹介している。
1936年といえば、日本では二・二六事件が勃発、ヨーロッパではナチス率いるドイツがラインラントに進駐した非常にきな臭い時期。第一次世界大戦後、繁栄を享受していたアメリカも1929年の株式市場崩壊に端を発した世界恐慌の煽りに苦しんでいた頃である。
当時の女性の状況に目を向けるなら、19世紀末以来、タイピスト・速記者といったホワイトカラー職が女性を受け入れ始めたために、アメリカだけ見ても女性労働人口は1880年の235万人から1900年483万人、1920年828万人とうなぎ登りに増加していたとはいえ(大辻千恵子1994)、女性のまっとうなあり方は妻として、母として家庭を切り盛りすること、という価値観は健在で、20代後半も過ぎて独身でいる女性に対してはまだまだ冷たい視線、批判、偏見が非常に根強かった。「オールドミス=結婚しそびれたまま年を取ってしまった女性」という言葉の含むネガティブなニュアンスを、当時の独身女性たちは纏わされていたのである。
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