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山ペンギン 40 泉に行こう

主任に誘われて、女神さまがいる泉を久しぶりに訪ねることになった。

そもそも女神さまは毎日のようにコンビニに来ているのに、なぜわざわざ会いに行こうという発想が出てきたのかわからない。

「何か落とせばきっと出てきてくれるわよね。」

また期限近くの「シークワーサー無果汁」ジュースを格安で買って持参している。

「いや、まずは呼んだほうが・・」
「えいっ!!」

オレの言葉が終わる前に主任が泉にジュースを投げ込んだ。

女神登場。
金銀のシークワーサーか?!・・放り込んだのは無果汁だけど・・・。

「環境を大切にしてくださいね・・・。」

そのまんまジュースをオレたちに返してきた。
「あ、お土産なんですよ。」

お土産というものはだれかの住まいに投げ込んだりしないんです。主任。

「ありがとうございます。専務に渡しておきますね。」

自分は飲まんのかい。

「今日は何か用なのですか?」

「いえいえ、泉の中を見たくって」

なんという距離感のなさ。
人?のテリトリーなのですよ、主任。

「いいですけど、単純に水の中ですから溺れますよ。」

そのまんまの回答。
「残念です・・・・」

何しに来たんだ本当に。付き合うオレもどうかと思うが。

「女神さま、水の中でどうやって住んでるんですか?」

あははっという感じで女神様が笑う。
「ここは職場なんですよ。」

そういえば専務に「持ち場」って言われてたな。

「我々のだれかが水を管理しないと、いろんなものが棲み着くのです。
主に龍ですね。」

「ふうん・・・。」黙っていたイマドが口を開く。

「龍って何かの喩えなの?」

女神が答える。
「人間ではない、なにか力のあるもので、さらには水を好む存在でしょうね。」

「ボクなら中に行けると思う。」

ある程度は息が続くという意味か。

「そうですね、ちらっとなら私の職場をごらんになれるかも。」

「行ってくる。」

イマドと女神が泉に潜った。

3分くらいでイマドがいつになく興奮して現れる。

「すごい!こんなの見た事ない!」

やっぱり神様だけのことはある。

何だろうか。

龍よけの凄い呪符とかを貼り付けた祭壇?

もしくは金銀宝石で飾られた御殿とか?

「水の中なのにパソコンあるんだよ!」


確かにそれはすごい。

ちなみにシンプルな机とパソコン、座り心地の良さそうなイスだけだったそうだ。

「電話はスマホです。」

分かりましたよ。

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