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山ペンギン 15 あるばいと

イマドの仕事先の体育館が建て直しで、奴は仕事にあぶれている。

清掃の仕事と言っても奴のホバークラフト流清掃を必要とするのは広い体育館くらいだろう。

「オレ君、イマド君しばらくここで働いてもらえないかなあ。」

主任が無茶ぶりしてきた。

イマドに確認したら、時給関係なく働くと言う。

オレも大概のことには慣れてきたが、さすがにコンビニのような客の多い店で働くのはどうなんだ・・。

「まずはお試しってことでどうかしら。」

イマドは機械に強い。

「イマド君が入ってくれたら、もしかしたら経営も改善するかも。」

主任の前向きさには頭が下がる。

ペンギンが接客するコンビニは確かにウケるかもしれないが、

この町においてイマドは一人の住人として溶け込んでいる。

「違うのよ。経営改革に関しても彼は何か力を持ってそうな気がするの。」

ペンギンに経営コンサルタントを期待しますか・・。

確かに投資に取り組んでいる奴ではあったが・・。
一度、儲かっているのか確認したが、

「分散投資してるから、突出した儲けはないよ。」とクールな返答だった。

いろんな意味でフクザツだったが、オレは奴と一緒に働くことになった。

奴にできないことは確かになかった。

唯一、フライドチキンをつくることだけは、なんとなく誰も奴にはやらせなかった。

「イマド君、夜のシフトで2時間くらいワンオペになるんだけど、大丈夫かなあ。」

ペンギンしかいない時間帯ができるんだな・・。

「オレ、一緒に入りましょうか?」
「オレ君・・・。確かその日、試験じゃないの?」

その通りだ。

イマドは件の日の夜12時から2時までワンオペとなった。

間の悪いことに、
「金をだせ!」

ワンオペを狙った強盗がお約束のごとく現れた(らしい)。

そしてお約束のごとく女神も出た。
「あなたが欲しいのは金ですか・・金ですか・・?」

最初は「きん」後は「かね」

強盗がひるんでいるうちにイマドはホバークラフトで強盗をノックアウト。

女神は110番した。

オレが知る限り、女神が役に立った唯一の出来事だ。

「オレ君、イマド君にはしばらく働いてもらおうと思うわ。」

経営改善を望めるだけでなく、ボディガードとしても奴は優秀だ。

ちなみにオレは試験に落ちて、再試になった。

当たり前だが、一連の出来事とは関係がない。

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