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写真展を観に佐世保に行く

小春日和の11月末の平日、長崎県佐世保に行って来ました。お目当ては、佐世保市制120周年と針尾送信所100周年を記念して佐世保で開かれている SASEBO ART CONNECT FESTIVALの一環である写真家山本まりこ氏の写真展です。同時に写真家岩永明男氏の写真展もあるということです。山本まりこ氏のエアリーフォトは大好きだし、岩永氏はYou Tube いわなびとんで拝見しているので、とても身近に感じます。
山本まりこ氏の展示は、針尾送信所、岩永明男氏の展示は佐世保駅構内とのことで、この2ヶ所を巡ります。

ところで私は、針尾送信所のことを今回初めて知りました。現地でもらった資料によると、旧日本海軍が1918〜1922年にかけて総工費155万円(現在の約250億円)で建設した鉄筋コンクリート製、高さ136メートルの無線塔が3基、正三角形に配置されているそうです。役目を終えた今は、日本の近代化遺産として重要文化財に指定されています。
無線塔、コンクリート製と聞いて、あまり興味もありませんでしたが、車で向かう途中、突然目に入って来た3本の無線塔は、周囲に高い建物がないせいもあり、凛とした美しい立ち姿が、まるでエジプトのオベリスクのようで、壮大さに感動しました。

送信所内に着いて間近に見ると、やっぱりカッコいい。離れて見たり、近づいて見たり、後ろに回ってみたりと、いろいろな角度から眺めたくなる不思議な魅力があります。
100年も経っているのに、コンクリートが劣化していないことにも驚きました。

山本まりこ氏の写真展は屋外展示で、写真の数も多く、写真も大きくて見応えがありました。木漏れ日に包まれた写真たちは、時間とともに表情を変え、微笑んでいるようで、いつまでも眺めていたいと思いました。


3基の無線塔以外に、今は半分地下室のようになっている2階建ての電信室も残っていて、今回この内部で、佐世保の風景や日常を撮った公募展がありました。ここは外壁にはツタが絡み、内部にもツルが侵入しており、床や壁は崩れかけていて、ラピュタの世界のようだと興奮しました。

そんな寂れた無機質な場所での写真展です。ライトは設置されていますが、半地下なので薄暗いです。でも外の光が2階の窓から差し込んできて、その光の帯がため息が出るほど美しいのです。光に照らされた写真たちは、輝きを増したように見えます。とても廃墟とは思えない、たとえば教会の中のような清らかな空気を感じました。


このように、私にとって針尾送信所は思いがけず、とても魅力的な場所だったので、展示写真もゆっくり観たい、送信所で写真も撮りたい、でも時間は限られているというジレンマで、うれしいパニック状態での見学でした。


後ろ髪を引かれますが、帰る時間が迫ってくるので、佐世保駅に向かいました。
佐世保駅では、2分の1スケールで造られた針尾無線塔の模型の中で、岩永明男氏の写真が展示されていました。山本まりこ氏のふんわりしたエアリーフォトとは真逆の、コントラストも解像度も高い岩永明男氏の写真は、佐世保の背負って来た歴史を考えさせられる写真でした。同じ被写体でもこんな風に捉えるんだと、意識や被写体への向き合い方の違いを感じることができました。どちらの展示も観ることで、佐世保のことをより知ることができ、写真の多様性に触れることができると思います。足を運んでよかったと思いました。

今回は、写真展を観に佐世保を訪れただけでしたが、駅の向こうはすぐ港。町や港を写真を撮りながら歩くのも楽しそうです。佐世保バーガーやレモンステーキ、海軍カレーなどおいしいものもたくさんありそうです。
針尾送信所にも、またゆっくり訪れたいと思う実りの多い1日でした。

写真展は12月18日まで、無料です。