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無期懲役はいつかは出所する!?無期懲役≠終身刑

(本文およそ1900字)

こんにちは、松嶋祐子です。犯罪心理学が専門の大学教員です。
今日はタイトルのことについて書きます。

先日の授業のこと

先日、大学の犯罪心理学の授業で無期懲役判決となった事例を取り上げていた行ったところ、学生から「無期懲役の人が出所することがあるなんて知らなかった」という感想をたくさんもらいました。
無期懲役刑に仮釈放があることは私の中では当たり前になっていたのですが、意外と知られていないことに気付かされたのでここにも書きます。

終身刑ではない

無期懲役というのは終身刑ではありません。終身刑というのはその名の通り残りの生涯を刑務所で過ごすことです。日本には終身刑がありません。日本で最も重い刑というと死刑で、その次は無期懲役になります。そのため、無期懲役というと終身刑と間違われるのかもしれません。

無期懲役というのは期限が定められていない懲役刑という意味です。期限が定まってないだけで終身ではありません。タイトルの通り、いつかは出所する可能性があります。

いつ出所するの?

では、いつ頃になったら出所するのでしょうか?答えは有期刑について考えるとわかります。有期刑というのは期間が定めらえている刑です。テレビで「被告人を懲役〇年の刑に処す。」と裁判官が判決を言い渡している場面を目にしたことがあると思います。あの懲役〇年というのが量刑です。

無期懲役ではこれが決まってないということです。無期懲役は有期刑より重いという考え方なので、有期刑より長くなるのが相場です。

ここでは次の疑問が生じます。有期刑で最も長いものは何年か。答えは、現在では30年です。30年過ぎるのを目安に仮釈放の可能性が出てきます。

しかしながら、誰もが出所できる訳ではなく仮釈放の審査を経なければなりません。実際のところ仮釈放がもらえるのは、ここ最近の実績を見ると全無期懲役の人数の1%未満です。年齢的な問題も大きいのだと思います。判決時50歳以上の方にとっては人の平均寿命を考えるとほぼほぼ終身刑と同じようなものになるでしょう。

仮釈放に当たっては、受刑生活の状況が良好で改善更生の意欲が認められ、出所後の環境も整っている、再犯のおそれががなあ、保護観察を付け社会に返す事で改善につながる、更に、社会的感情もこの事を許すようであるといったが条件となってきます。

30年を経ての社会

私が今回この話をした趣旨は不安を煽りたいわけではありません。30年刑務所で過ごしてから出所してくる。その後の生活のことに思いをはせていただきたい、ちょっと想像してみて欲しいと思ったからです。私はかつて刑務所の心理職として勤務していましたので、常に出所後のことを見据えて事件のことを考える癖が付いています。出所後再犯をさせないーー本人にとっても社会にとっても大事なことです。そのために、出所したら…とその後のことはいつも考えていました。

現在は2023年。30年前というと1993年でした。1993年、あなたは何をしていましたか。まだ生まれていない人も多いでしょう。30年ずっと閉の中にいて、出所してくると世の中は様変わりしています。

ときは平成一桁の時代。スマートフォンなんて当然ありません。それどころかインターネットすらもごく一部の人のものでした。Windowsが発売されたのは1995年です。駅の改札も都心は自動改札になっていたかもしれませんが、まだまだ有人改札の多かった時代。たまごっちもまだ発売されてません。ゲーム機はスーパーファミコンの頃。

そのような時代しか知らなかった人が現在の社会で生活を再開することとなったら、相当の苦労でしょう。支援してくれそうな両親をはじめとする親族は既に他界されていたり、音信不通になっているかもしれません。

裁判員になるかもしれない

無期懲役受刑者のその後のことなど自分とは関係ないと思われるかもしれませんが、もし裁判員に選ばれたら、死刑か無期懲役かを考えなければならない事件を担当することも十分あり得ます。
人によっては出所後のフォローを手厚くすべきと考えるかもしれませんし、仮釈放は無くして全て終身刑にすればよいと思うかもしれません。状況を知って、一人一人が意見を持つことが大事だと考えます。

日常生活で無期懲役刑のことなど考える機会はまずないと思いますが、今度ニュースで大きな事件の判決を見聞きした際には、この人の30年後は……と未来のことを少し考えてみてください。


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