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「売れる人、売れない人 番外編」

さぁ、ここからはおまけですよ。

第8話では
赤面しそうなことを
書いてしまいましたから
ここははっちゃけて
行きましょうね ♪

さて、前に、
「女を落とすのがうまい男は
家具を売るのもうまい」
と言いましたが、
覚えておいででしょうか。

デリバリーの男子組で
唯一家具を売ることができた男子、
ここでは仮に良人君としておきましょう。
その良人君の名セリフがあるので
紹介しておきましょうね。

ある日、かわいい女の子に
ナイトスタンドを売った際、
良人君が言ったセリフはこうです。
(もちろんお客様が
お帰りになられてからですよ)

「オレ、売れた瞬間、
相手がパンツ脱いだと
思うんですよね」

なんともゲスな言い草です。

しかし!しかしなのですよ。

良人君の言葉には
「サイテーッ!」と言って
切って捨てるには惜しい
販売のキモも含まれています。

わたしが勤めていた家具屋は
無難な家具を
扱っていませんでした。

例えば米軍の払い下げ品のチェスト。
デカい、重い、古い、の
3拍子が揃っていました。

そんな家具を売るとき
どうやって相手をその気にさせるか。

お客様が入荷してきた
軍の払い下げ品のチェストを見て
こうおっしゃったとします。

「このチェスト、傷がある」

販売員のあなたは、すかさず

「その傷が味わいなんですよ」

と切り返す。

味わい。なんて便利な言葉なのでしょう。
私もずいぶんお世話になった言葉です。

「重いよね」と言われれば

「だからこそ、存在感があるんですよね」と

確信を持って言う。

販売員たるもの、
そのくらいの機転とボキャブラリーくらいは
常に常備しておかなければ
米軍の払い下げ品なんぞ
100年店に立っていても
売ることなんてできません。

欠点をも魅力に言い換える

どんな内容であろうとも、
臆することなく
いけしゃあしゃあと言ってのける。

販売員は俳優です。
そして店は舞台なのです。

・・・・・・・・・。

こんなことばかり言っていると
まるで私がいた家具屋は
詐欺師かと思われて
しまいそうですね。

そんなことはありません。
わたしのいた家具屋は
素敵でまっとうな家具屋でした。

本当です。

ただし、輸入家具で
しかも中古の家具のような
特徴のあるものを扱う場合、
相手の要求を
すべて満たすことは不可能だと
まずは知るべきです。

そういった商品は
魅力も大きいけれど、
難も多いからです。

けれど、こうも言えましょう。

難もあるけれど、魅力も大きい。

その魅力に
お客様がどの程度
惹かれているか。

今は押すべきか?
引くべきか?

そこを見極めるのが
販売員の仕事です。

私がいた家具屋では
お客を押して押して落とすのは
ご法度でした。
最後に買うと決断するのは
お客自身でなければなりませんでした。

なぜか。

無理に決めさせたものは
キャンセルを招くからです。

他の店はどうか知りませんが
わたしがいた店では
売り上げがゼロよりも
キャンセルの方が悪でした。

最終的な決断は
お客が責任をもってする。
決めたからにはそれを翻させない。

そういう接客が求められました。

だから、
押し倒しちゃならんのですよ。

きっちり惚れさせて、
最後のパンツは自分で脱がせる。

そこが販売員の腕の見せ所でした。

ちなみに、冒頭の話に戻りますが、
その名セリフを吐いた良人君

今回、いろいろ差し障りがあるので
仮名にしましたが、
本名も、いかにもいい人な名前でした。

そんな彼のことを
いつも私はこう思ったものです。

名は体を表すって言うけれど、
あんたほど中身を裏切った名前の男、
いやしないよね。


念のため、言っておきますけど、
私は彼の前で
パンツ脱いでないですから。

誤解なきよう
お願いいたします。

ー  終わり ー

前回の話はこちらから ♪

「売れる人、売れない人⑨」
「売れる人、売れない人⑧」
「売れる人、売れない人⑦」
「売れる人、売れない人⑥」
「売れる人、売れない人⑤」
「売れる人、売れない人④」
「売れる人、売れない人③」
「売れる人、売れない人②」
「売れる人、売れない人①」


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