コーンビーフの缶が変わるそうで

ノザキのコーンビーフ缶ほど、どこの店に行っても迷わずにみつかる商品はない。あのシーチキンでさえ、マグロだカツオだファンシーだフレークだと何種類も棚を占めているのに、コーンビーフは潔くたった一種類。
台形の異形で、深緑にリアルな牛の絵に筆記体の文字。
「コーンビーフを買う」と決意した瞬間から、缶詰売り場でまるでスポットライトを浴びているように目に飛び込んでくる。一直線に飛んで行くことができる、素晴らしい存在。
幼児期のお遣いから自分で買う今日の今日まで、こんなに姿も味も変わらず見つけやすく私に寄り添ってくれている商品はない。

缶詰1個分丸のままのコーンビーフを皿において醤油をかけてほぐして、それを熱々のご飯に載せて食べる。脂の固まった白いところがシャリシャリとしているうちに食らう。
ちゃんとしたおかずがあるときはこんな食べ方は許されないから、どうしようか店屋物にしようか、というときに「コーンビーフでいいわ」と言ってこの食べ方をする。コーンビーフ主菜。
貧乏たらしい食べ方。でもコーンビーフ1缶は400円近くするので、ブリ1切れにも相当するのである。コーンビーフ1缶でコンビニ弁当が買えるのである。なのにそれをあえてせずに私はコーンビーフ1缶を選ぶ。
貧乏たらしいのに貧乏でない食べ方。シンプルで至福のおいしさ。
ただし、これをやるときはほかに繊維質の多い漬物かサラダをとらないと必ず便秘する。そういう代物。

そのノザキノコーンビーフが缶でなくなるんだって。だけどパッケージのデザインはほとんど変わることなく、古くさい深緑と牛の絵が残っている。いいね。

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