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リスボンの日常的カフェのご飯とスープ

前回に、リスボンにはテイクアウト専門のケーキ屋さんがとても少ないという話を書いたけど、その代わり、お菓子やパンをたくさん置いているカフェが、町中に数えきれないくらい立ち並んでおり、そのカフェたちは、お菓子以外にも、たくさんの役割を果たしている。

その一つが、お昼の食事。

大抵のカフェは、お昼になると、定食を出す。そして、日替わりのスープもある。

カフェの奥には小さな厨房がついているところが多くて、お昼になると、カフェ用のテーブルに紙のテーブルクロスやランチョンマットが敷かれ、ランチを食べる人だけが座れるようになったりする。コーヒーだけのお客さんは、端っこにテーブルがいくつか用意されていることもあるし、テラスとカウンターのみ、ということも。

この定食が、どこも大体とても安い。スープやサラダと、メイン、付け合わせなどもついて、6〜8ユーロで、コーヒーやデザートまでついてくる時も。大体メニューはどこも似ていて、焼き魚や肉のグリル、煮込み料理などの、典型的なシンプルなポルトガル料理が食べれることが多い。それでも店ごとに付け合わせや味付けは少しずつ変わるので、そこで働く料理人さんたちの腕やセンスに個性が出る。カフェの料理人さんたちは、女性であることが多いのも、特徴かも知れない。

定食の他に、日替わりのスープも、大体どこのカフェでも置いていて、これが本当に素朴で優しい味で、しかもボリュームタップリでしみじみと美味しい。例えば、

ポルトガルキャベツのスープ
鶏のスープ
野菜のポタージュ
豆やサラミの入ったスープ

などはほんの一例で、バラエティはとても豊か。普段定食などランチを置いていないカフェでもスープだけはやっているカフェも結構あり、こういうところでは、スープとサンドイッチなどでランチを済ませる人が多い。中には、スタンドで立ったままスープとパンを食べている人もちらほら。でも、とにかくスープにボリュームがあるから、これで十分お腹いっぱいになるし、野菜もたくさん取れるから、ちょうどいいのだ。

私がポルトガルに来て間もない頃(15年以上前)、ポルトガル語を勉強するため、街の中心にある下着屋さんで地元の女の子たちに混じって販売員を1年半くらいしていたことがあるけど、その時のお給料は最低賃金でとても安かったから、このスープの販売はとても嬉しかった。

職場の近くに小さなスーパーがあり、そこの奥にパンやサンドイッチを売るテイクアウトのパンコーナーがあった。お昼はそこでもスープを日替わりで売っていた。私はそこで、スープとシンプルなパンを二つとチーズやハムを買い、自分でサンドイッチにしてランチにしていたのだけど、確か一食あたり2ユーロくらいだったと思う。スープは優しい味で野菜や豆がいっぱい入っていてとても美味しかったし、パンも焼きたてで、全然飽きなかった。流石に値上げはしていると思うけど、今でも同じような感じで売っているのかな?あれは本当に救世主だったな。

先日リスボン郊外のカフェで食べたスープとパン。この日のスープは豆と春キャベツのスープ。

久しぶりに、ランチにリスボン郊外のカフェで注文して食べてみたスープ。「今日は豆と春キャベツのスープよ」とカウンターのおばちゃんに言われた。一口飲んでみると、すっごく味が野菜に染みていて美味しい!あれ?でも、具は野菜と豆だけだけど、これは豚で取ったスープだ。だからまるで豚骨スープみたいに濃厚なんだぁ。と思い、今日のランチのメニューを見たら、

黒板に書き出される、本日のランチメニュー。

下から2番目に、「Cozido à Portuguesa(コジード・ア・ポルトゥゲーザ)」と書いてある。これはポルトガルではとてもポピュラーな料理で、地方によって少しずつ変わるけど、色んな部位の豚やチョリソー、豆や野菜を煮込んだもの。これで出た出汁をスープにしたんだなぁ。どおりでめちゃくちゃ濃厚だと思った!

このスープとパン、そしてビール一杯で、なんと2、5ユーロでした。郊外だったらまだまだこんな値段で食べれるんだ。


こうやって、ポルトガルにおけるスープの大事さというか、存在の大きさを書きながら改めて感じていると、私たちの提供していた味噌汁も、地元の人たちにすんなり受け入れられて、人気の品となったのが、とても納得できる。若い人たちが、新しい異文化のものに敏感で、味噌汁や日本食を食べるのはもう日常だけど、ポルトガル人のおじいちゃん、おばあちゃんがうちに来店して、味噌汁を注文して飲んでいるところなんかを見ると、なんだか、日本のものを芯から受け入れられているような感覚になって、とても嬉しい気持ちでジーンときて心の中でこっそり感動したりする。







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