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ヒップホップの歴史を知れば知るほど

ヒップホップでは過去の曲や音源の一部を引用するサンプリングという手法がよく使われる。ヒップホップは元ネタを知らなくてももちろん楽しめる。楽しめるのだが、元ネタを知ることでより楽しむことができる。

サンプリングのおもしろさに気づくと、もっと知りたいという一心で過去の曲を聞くようになったり、無理に慣れない英語の曲を聞き始めたり、英語でヒップホップのデリバリーの意味を調べ始めたり・・・あぁ、最後は自分の話だった。



何をどう学べばいい?

過去を知りたいし英語の曲も聞きたいけれど何を聞けば良い? という時に読んだのが『ライムスター宇多丸の「ラップ史」入門

2018年1月8日の「今日は一日"RAP"三昧」というラジオ番組の内容が一冊にまとめられている。本場のアメリカのラップを知ることで、同じ時期の日本語ラップがどういう進化・成長を遂げたのかが解説されている。


本の後ろの方に番組で流れた曲やBGMでかけた曲が一覧で載っており、その他にも本文に登場する曲がいくつかあり、それを一つのプレイリストにまとめるとSpotifyで聞ける曲だけでも15時間以上ある。本の読みごたえも曲の聴きごたえもとてもある。(寝る前に4ページほど読んでは寝落ちする日々を繰り返し、2カ月以上読んでいた・・・)


試し読み

NHK出版の書籍編集部のnoteで『[第1章]70〜80年代初頭 1973年8月11日、ラップはニューヨークで生まれた』〔前編〕と〔後編〕が読めるようなので気になる方はぜひ!

この本を通して、今まで以上にヒップホップを楽しく聞くことができるようになった。


ヒップホップ誕生

1973年8月11日、ラップはニューヨークで生まれた ということを知っていると、より楽しく聞けるのが・・・

RHYMESTER 「Future Is Born feat. mabanua」

バック・トゥ・1973年夏 まさしく闇に灯った松明
人々が忘れ去っていた街の片隅で…… 誰かが歌い出す

1973年夏というのはヒップホップが生まれた時。
闇に灯った松明はヒップホップの時代に明かりが灯ったことをイメージしている。そして1977年の大停電、電器屋からいろいろなものが盗まれた。大停電の後、急にDJをする人が増えた。闇に灯った松明は、大停電の後、DJ機材を街頭のコンセントに差し込んでパーティーを始めて明かりが灯ったこともイメージしているのだろう。

あと、曲のタイトル「Future Is Born」で、歌詞「バック・トゥ・1973年夏」は、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を意識しているだろし、歌詞「誰かが歌い出す」はRHYMESTER自身の曲「そしてまた歌い出す」を少しサンプリングしているのだろうな・・・とか。もはや"この2小節は長編小説"だと表現するのは誇大妄想家と言われるだろうか。


ヒップホップの国歌(アンセム)

ヒップホップ誕生初期、キーマンとなるDJは3人いた。ブレークビーツを生み出したクール・ハーク、スクラッチを広めたグランドマスター・フラッシュ、ニューヨークでギャング集団を仕切っていたアフリカ・バンバータ

キーマンの1人、クール・ハークに関する曲。

Incredible Bongo Band 「Apache」

クール・ハーク「Apache」の間奏部分のドラムブレイクで客が盛り上がることに気づいた。同じレコードを二枚用意してドラムブレイクの部分を交互にかけて長く延ばすことでもっと盛り上がるんじゃないかと考えて生まれたのがブレークビーツ。この「Apache」という曲は「ヒップホップの国歌(アンセム)」と言われているそうだ。

そのことを知った上で聞くと、さらに楽しめるのが・・・

餓鬼レンジャー 「The Skilled feat. LITTLE & FORK」

韻が固い(韻をたくさん踏んでいる)ので、韻だけでもとても楽しめる。さらに「Apache」を知っていると、ヒップホップの国歌とも言われているこのビートのサンプリングの上でスキルフルなラップをしているとかマジで最高!という楽しみ方もできる。


「The Big Beat」〜「梅田ナイトフィーバー’19」

今回『ライムスター宇多丸の「ラップ史」入門』を読んで、ビリー・スクワイアー「The Big Beat」を二枚使いしてサンプリングしたランD.M.C.「Here We Go」という曲があることを知った。

このランD.M.C.「Here We Go」でdiggy-dum diggy-dum歌っているのを聞いて、餓鬼レンジャーがランディーエムシーとかディギ・ダン ディギ・ダンとか歌っていたなぁと思って思い出したのが餓鬼レンジャー「サタDEFナイツ」。歌詞上は「ダンディーMC言霊ガンマン 弾で起電秘技団DIGG韻男男」か(笑)

この餓鬼レンジャー「サタDEFナイツ」の後半の歌詞「ギラギラミラーボール踊る ジョン・トラボルタのポーズ取る」の部分をサンプリングしている曲が梅田サイファー「梅田ナイトフィーバー’19」

Billy Squier「The Big Beat」をサンプリングしたRun-D.M.C.「Here We Go」をさらにサンプリングをした餓鬼レンジャー「サタDEFナイツ」をさらにさらにサンプリングした梅田サイファー「梅田ナイトフィーバー’19」。

サンプリングにサンプリングを重ねるこの美学にBig up! とか思いながら色々な曲を聞きいたり、これはもしかしてあれの元ネタか?!とか思いながら本を読んでたらそりゃ2カ月かかるか。


ヒップホップの歴史を曲で学ぶ

4ページ読んでは寝落ちする日々を2カ月以上続けたくない人に朗報。(いや、読むスピードは人によりけり)

U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESS 「BUNKA」

この1曲、4分40秒でヒップホップとタブラ、それぞれの歴史が学べる!(曲と本では情報量に差はあるが同じキーパーソンが登場する)

画期的!

 まさに先人たちの偉業、リスペクト。

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