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子どものことは子どもに聞いて②

このコラムは、ソーシャルワーカーのゆっきーこと幸重のSNSなどで反響の多かった記事をまとめたものです。
(今回のコラムは2022.3.30のFacebookのつぶやきから)

ヤングケアラーの子どもの声を無視した滋賀県のヤングケアラー調査

昨日、発表された滋賀県のヤングケアラー調査についての続きです。一晩寝てもやっぱり納得がいきません。今回のコラムは今年1月23日に滋賀県で行われた子ども県議会で質問した小学生の発表原稿(画像)から考えていきたいと思います。

子ども県議会は、今回ヤングケアラー調査を行った滋賀県健康医療福祉部内の子ども青少年局が行っている取り組みで、子どもの権利条約が保障する「子どもの意見表明権」をふまえ、子どもが県政等に対する意見や提言を積極的に表明できる機会づくりを目的にしているそうです。正直、昨年度までの子ども議会の成果報告として、子ども議員に「こころんだいやるカードの図面を子どもたちに考えてもらいました」とか「子どもが楽しめる観光パンフレットをつくりました」などの子ども県議会の紹介を目にして、いいことをしているけど、ソーシャルワーカーとして日々関わっている家や学校がしんどい子どもたちには遠い世界の取り組みやなと思っていました。

ところが2021年度の子ども県議会のニュースやSNSに流れてきた子ども議員の10の提案を読んでびっくりしました。ヤングケアラーや特別支援学級で学ぶ福祉課題の当事者である子どもたちが、しっかりと提案をしていたからです。特別支援学級の中学生の提案もすごくいいのですが今日のコラムの内容から外れるので今回は内容に触れませんが、ぜひリンク先の提案を読んでくださ。さてヤングケアラーである小学生の子どもの提案には、ただただうなずく内容でした。一生懸命自分の思いを伝えた文章で、読むだけでこの子の伝えたい思いや気持ちがすっと伝わってきます。その彼女が一番最初にあげた提言は「ヤングケアラーの実態調査」であり、その中でしっかりと「小学生も含めて欲しい」と訴えています。


今朝のヤングケアラーの実態調査の報道を知って、彼女は何を思うのでしょうか。回答した学校の半分が「ヤングケアラーはいない」と答え、小学生どころか子どもたちにも聞かずに行われた調査を知った時、ヤングケアラーの彼女はどれだけ傷つくか、また大人や政治への信頼をなくすことをしたのか、今回のヤングケアラーの調査をした人たちは自覚しているのでしょうか?

正直、子ども県議会は、このヤングケアラーである彼女の質問をはじめ、福祉課題の当事者である子どもたちの提言が報告され、滋賀県がんばってるやん! ってめちゃめちゃ感激したのですが、結局のところ「子どもの意見表明」をさせるだけで終わっていて、大人たちは本当の意味で子どもの声を聞いていないことを露呈させる結果に終わったようにも思えました。このコラムの最初で紹介した子ども県議会の目的の後半を穿った目で読むと、大人が変わるとは全く書いてないことに気がつきました。

「・・・子どもが県政等に対する意見や提言を積極的に表明できる機会づくりを通して、滋賀県の魅力や問題等に関心をもち、社会に参加する意識を高めるとともに、子どもが自ら考え、自ら行動する力を育むよう支援することを目的としています。子ども県議会は、子ども議員による約半年間の活動の集大成として、また、子どもからの意見を県行政の立場で受け止める場として開催します」

「県行政の立場で受け止める場」とは、どういうことなのでしょうか。同じ
滋賀県健康医療福祉部内で子どもの意見を聞いておきながら、そこで出た子どもの意見を同じ部内で行っている調査において無視するということの深刻さ(子どもたちの声を聞くつもりがないというメッセージにもなりかねない)を、子ども議会の担当者やヤングケアラーの担当者、委託された調査先は考えなかったのでしょうか。一番大事にすべきヤングケアラーである子どものことを考えれば、それぐらいの内部の連携調整や内部で意見は出なかったのかと悔やまれます。

そういえばちょうど一年前に県庁で行われた「子どもの貧困対策キャラバンin滋賀」でも今回と同じようなことが起こったのを思い出しました。イベントでは滋賀県が子どもの声を聞いてすすめる「すまいる・あくしょん」を全面に出して、イベントの目的も子ども目標「今の気持ちを伝えよう」おとな目標「子どもの声を一緒に考える」としておきながら、イベント当日に当事者である貧困課題を抱える子どもたちの声を触れず、子どもの貧困をなくす大人の頑張りだけを語る組織のトップにいる大人たちの態度に余りに腹が立って、壇上で大人げなく怒りをぶちまけてしまったのは、後から礼を欠いた行為だったと個人的には少し反省したのですが、こうやって一年後また同じように当事者の子どもの声を無視することが続いていることに、ソーシャルワーカーである自分の力のなさと子どもの声を施策に生かす姿が見えない滋賀県への落胆を感じます。


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