第5話:責任よりも自由を得た。

家庭の事情で、父の実家を建て直して、そこに両親と私だけで住むことになった。
とは言っても、週末には姉と姪っ子が新しい家に来る。


母は私が仕事が終わって、いつも、同じ電車に乗って帰るのに、毎回毎回『○○時の電車に乗って帰ります。』と連絡を要求するし、お風呂から上がってひとりになりたくても『2階(私の部屋)に行ったらダメ』
会社の人にご飯誘われたので行ったら『何時に帰ってくる?』としつこい連絡。
私も、もう20歳後半に入る頃。そっとして欲しかった。


父からは『免許取れ』『いつになったら正社員になれるんや』ばっかり。


姪っ子は私を見つけると『遊んで!』と言いに来る。
姉は『ひとり遊びも大切』と言って母とお喋りに夢中。
父は自分のきまぐれで姪っ子の相手をする。


心が限界に来たとき、私は父に『姪っ子と遊ぶの疲れた。』とぶつけてみた。
私は『そうか、それは大変やな。』と言葉を待っていた。


……待っていた私がアホらしく思った。
返ってきた言葉は『じゃあ、一人暮らしすれば?』


私の心に火がついた。
言ったな。覚えとけよ。と。


私は『分かった』と一言で返して、すぐにスマホで物件探し。
休日は店舗に行って物件をコピーしてもらったり、家電を探したり。


不思議と、不安な気持ちは無く、逆にワクワクした気持ちでいっぱいだった。


内見もして、引っ越し業者の見積もりもとって、決まってからは早かった。


いろいろと父には小言を言われたが、無視することが出来た。



だって、あの縛られた生活からおさらば出来るから。
一人暮らしは責任もあるが、それよりも得られる自由が大きかった。

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