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税理士事務所ではどんなことに気を付けて税金の申告をしているのか?②前年との比較

このnoteでは税理士事務所で申告書を作成するうえで、私が気を付けていることを書いています。
専業の人がどういった所に気を付けて決算書や申告書を作っているのか?
自分で確定申告をする際にも役に立つ内容ですのでぜひ読んでみてください。

前年との比較を大事にする

まずはざっくりとしたレベルで決算書をつくる


申告書を仕上げるまでに、いきなり100%の状態で仕上がるわけではありません。まずは50%~70%ざっくりした数字を作りこみ、そこから徐々に制度を上げて100%へと近づけていきます。

その際に重視するのが、前年との比較です。

<申告書を作成するまでの流れをざっくりと>
①仕訳を入力する(作業のメインです)
②決算書を作成する
(貸借対照表とか損益計算書のことです)
③申告書を作成する
(税金の計算の明細です)
④内訳書を作成する
(科目ごとの内訳が書いてある書類です)

仕訳を入力していき、だんだん完成に近づいてくると、決算書を作成する前に、前年との比較財務諸表というのを作成します。
今年と去年の財務諸表が一目でわかるので、どこの数字がどう変わったのかを容易に把握することができます。

出来事面から前年との比較をする

去年なかったのに今年あった出来事や出費などをチェックしていきます。
主にチェックする項目は出来事面・金銭面の変化です。

・変わった出来事があったかどうか
1年に何度も連絡を取っているお客様であれば変わった出来事は大体わかるので、決算書の作成に取り掛かる前から、個別にメモを残しておくようにします。

<変わった出来事の例>
マンション建てた
車買った
自宅買った
子どもが就職した・結婚した
などなど

金額にどのような影響があるのかを考える前に、まずは出来事レベルでざっくりとした事情を把握しておきます。特に中小事業者の場合、法人の決算だけでなく個人の年末調整・確定申告も引き受けているケースが多いので、会社に関係ない家族の事情についても把握しておくことが大切です。


自宅を買った→住宅ローン控除あるかな?
とか
子どもが就職→親の扶養から外れるから所得税上がるかな?
とか

出来事によって様々な箇所の税額に影響が出ます。
税理士事務所での仕事に慣れてくると、それぞれの事情ごとに何税のどんな数字に影響があるかなっていうのが話を聞いただけでだいたいわかるようになってきます。

金銭面から前年との比較をする


出来事レベルでの事情を把握したら、次に高額な出費があったかどうかに注目します。

<高額な出費の例>
車を買った。
賃貸マンションの外壁塗装をした。
大口顧客との取引契約をした・契約が終了した。
などです。

建物の修繕となれば出ていく金額は高額です。1000万円以上かかることも珍しくありません。
実は建物に関する支出は結構やっかいでして・・・
修繕費として計上するか、資本的支出として資産計上するかで当期の税額が大きく変わってしまいます。

修繕費とは固定資産の機能を維持したり、現状回復のために支出する費用をいいます。
修繕費は費用処理します。

資本的支出とは固定資産の価値を増加させたり、使用可能な期間を延長させるための支出をいいます。
資本的支出は資産計上して、減価償却費を通じて毎期費用処理していきます。

修繕費として計上できれば全額が当期の費用になるため、その分利益が下がり、納税額も少なくて済みます。
ですが、資本的支出と判定した場合は、毎期減価償却していくことになるので、ちょっとずつしか支出を費用にすることしかできません。
支出は当期にドカーンとありますが、費用もドカーンとは計上できないわけです。

本来は、支出の目的(なんのために支出したのか?)に沿って修繕費か資本的支出かを判断すべきです。
その為、できれば全額当期の修繕費としたい所ではあるのですが・・・
なんでもかんでも費用にしていいわけではありません。

修繕費なのか資本的支出なのか・・・
簿記の問題であれば問題文に書いてあるのですが、実務では
もうどっちかわかんなくね?みたいなケースって結構あるんです。
修繕ともとれるし、資本的支出ともとれるよね・・・みたいな。

高額な出費は税務署も目をつけるので、税務調査の際には重点的に調べられやすいです。もし費用処理していて、それが否認されてしまうと納税額が跳ね上がってしまいます。

税理士は修繕費だと思っていても、税務署が資産計上すべきだと考えている場合があったりします。(そのほうが追徴税額が取れる為)
どっちが正解というか、どっちも正解なんです。
ただの見解の相違なので、その場合こちらも合理的に説明できる資料を準備して、精一杯ごねることになります。
そんな場合は、最終的な落としどころをつける話し合いが行われたりします。

財務諸表の数字に大きな変化がある箇所をチェックする

そんなこんなで大まかな事情や金額の変化を把握しながら進めていくと、だんだんと財務諸表が完成に近づいていきます。
最終の仕上げの段階として、前期と比べて大きな数字の移動がある所を重点的にチェックします。

例えば水道光熱費の金額が明らかに少ないな…となった場合、何か計上し忘れていない?ということを疑います。

水道光熱費は大体の場合毎年一定しているはずです。水道じゃぶじゃぶ流しっぱなしにしちゃったなんてことがなければ跳ね上がるわけでもありません。
電気代が上がっていることを考えれば、去年より今年は高くなっているのが通常です。それにも関わらず金額が少なくなっているというのは、何か入力し忘れのものがあったのでは?と考えるのです。

前年と変わったことがなければ、数値もほぼ一緒だろうということは予想がつくはずです。
ところが、毎期の財務諸表がやり方がぐちゃぐちゃだったとしたら・・・比較できたはずのものができなくなってしまいますよね。
そのために毎期の財務諸表は正確につくっておくことで期間的な比較が可能になり、翌年以降も数字を作っていく際に役に立つのです。

まとめ

今回は税金の申告をする際に、わたしが大切にしている前年との比較というテーマで書きました。
昨年と比べて変化した出来事や、大きな出費に着目することで、前年の数字を参考にしつつ当期の経営状況を反映した財務諸表・申告書を作成することが可能になります。ぜひ、参考にしてみてください。

😊