つながりを「やわらかく」。
つながりにはいろいろあります。親と子、夫と妻、社長と社員、医師と患者、国と主権者、国と納税者。それぞれに見え方や手触りがあると思います。国と主権者なら硬い、厳しいつながり、家族ならやわらかい、ゆるいつながりとか。
自治体と市民のつながりは、どうしても「硬い」方向に振れていきます。そのつながり方が「○○支援」になった場合は、とくに。
なぜなら、支援のための原資が税金なので、「なぜ支援が必要なのか」「どういう支援を行うか」などの説明責任(アカウンタビリティ)が常に発生するからです。「この人には支援が必要です」と「認定」するプロセスがあって初めて、そこに税金を当てることに誰もが合意する。逆にいえば、税金を当てるためには「支援する側」「支援される側」に分けなければならない。ここに曖昧さやゆるさがあってはいけないので、どうしても「硬く」なります。
硬いつながりをそのままにしておくと、つながりが「強者」と「弱者」になったり、「見守り」が「監視」に入れ替わったりします。負のレッテルである「スティグマ」も発生します。
だから「硬い」方向に振れていくつながりを、いつも「やわらかくする」「ゆるくする」意識や取り組みが欠かせません。
「きずなメール事業」は、専門家とともに作った「原稿」を手がかりにして、「硬い」方向に振れていくつながりを、「やわらかくする」「ゆるくする」事業といえます。
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どんな「硬い」つながりを「やわらかく」「ゆるく」しているか例示してみます。
たとえば専門家の助言。専門的なことを医師など「先生」に聞くのは、ハードルが高い。逆に機械的に「医療情報」として提供すると味気ない。「きずなメール」はこれを「読み物」に編集して、市民のスマホに届けます。
たとえば、自治体の相談窓口。対応はしっかりしていますが、普通の人にはハードルが高い。そもそも知られていないことも多い。それを「きずなメール」では、普段からつながり続けることで知ってもらい、利用につなげていく。
たとえば「情報の一元化」。構造上、部署ごとに「縦割り」になってしまいがちな自治体の情報を、「原稿」の中で一つにまとめていきます。これにより市民は、住民票も予防接種も図書館も、「きずなメール」の中で知ることができます。自治体の担当課は、これらの情報を取りまとめるために、自然と他部署とやりとりするようになります。「縦割り」が少しゆるんで、横のコミュニケーションが起こります。ある自治体では、約20近くの部署の情報が、「きずなメール」の自治体情報として一元化されています。
いろんなつながりを「やわらかく」することが、硬くなりがちな「児童虐待防止」の施策を補い、「児童虐待の予防」につながると考えています。
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最初から「やわらかくする」「ゆるくする」ことを目指したわけではありません。自分たちの持っているもの、できることを、時代に合わせて積み重ねていったら、自然とこうなっていきました。
今後ますます、つながりを「やわらかくする」「ゆるくする」役割は、あらゆる形で必要になります。なぜなら、「虐待防止」は圧倒的に正しくて、でも正しいことはすぐに硬くなるから。社会が「正しさ」と、それに伴う「説明責任」を求める限り、あらゆるつながりが硬い方向に振れていきます。硬くなると、触る人は痛いし、扱いづらい。
疲れた時、苦しい時に、焦る時に、硬くなった肩もみほぐしながら
「まあまあ落ち着いて。大丈夫だから」
と言ってくれるような、「やわらかい」つながりを作る施策や事業が、ますます必要な時代が来ていると感じます。
※ http://kizunamail.hatenablog.com/entry/2019/10/18/085321 より転載。
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