詩 あの日曾祖母は小倉にいた
あの日曾祖母は小倉にいた
小倉上空は雲がかかり
米軍機はそのまま長崎へと向かう
あの日曾祖母は小倉にいた
雲の切れ間から西へと向かう
異国の戦闘機を見たような気がすると
祖母に語ったという
あの日曾祖母は小倉にいた
あの日小倉が晴れていたら
許すべきでない偶然
感謝すべきでない選択
私は戦後60年が経った年に
東京で産声を上げる
あの日曾祖母は小倉にいた
責任も義務も権利も喜びも哀しみも後悔も満足も不安感も絶望も希望も怒りも叫びも
あの日の空に何も言わなかった
人が人として生きること
それと同じように
あの日曾祖母は小倉にいた
その事実だけが私が背負うべきものだ
あの日曾祖母は小倉にいた
2022.8.9 雪屋双喜
東京北区に平和祈念像と同じものがある、見に行くといい。
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