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肌で呼吸する今日の私はこの夜の中で居場所を探す
あっちには昨日の砂が積もってしまって固まって
虎をふうっと吹いた風に乗ったままで飛び去った

ああ、戦争の星に住んでいる

どこにも逃げ場がないようにと隠れようのない世界が作られた
私を手のひらで支えながら誰かの怒りに揺さぶられる
平和と言う「ただそれだけ」は今の私には知り得ない

ああ、やはり戦争の時代に生きている

誰にも泣いてほしくないと言ってしまう大人にはなれなかった
悲しみの傍で思うのは空腹でも痛みでも悲しみですらない
共感で繋がるしかないのなら私たちは永遠に孤独の集合

ああ、きっと
あなたも戦争を知らずに死んでいく


花火が咲いた

二十を過ぎた東京に花火は咲いて
そこかしこで見上げる花火を遠くから見つめる
私はただこの夜に居たくない

私は戦争も知らずに花火を見る

あの火が東京の空に輝くことを恐れずに見上げている
私はあの日途切れていたかもしれない命を抱え
他人事のように花火を見る

私は戦争の時代に居ない
私の心は戦争の星に居ない

不完全で欠落した私は今も居場所はここにはない
人の死を
簡単に消費する私が花火を悲しむべきではない

人の命を
名前も知らないあの人の痛みを
知らず知らず見上げている

私は花火を見ている

今私は東京の夜に花火を見ている
一つまた一つと咲いては散る

煙が風に靡く
ああ、目を凝らしその旗の色を確かめる

2023.8.7 ~ 12
雪屋双喜


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