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詩 雑歌

雨後立ち寄る湯屋の前
匂う熱の中に故郷がいる
ほてっとした懐かしさに
浸った今日は日曜日

十月になって寒くなったので
秋冬物を探し出す
引っ張り出したコートのポッケが
苦笑いで詰まってる

日の当たる百日紅の花が
最近やっと全部散ってしまった
秋になるのか冬になるのか
訊きそこねたから困ってしまう

窓を開けたまま寝るなよと
昔から父に怒られる
布団につかまる朝さえも
もったいないと思える年頃に

東京の空は鈍い雨を蓄えている
ときより降る霧のような雨は
思い出の中とは随分違って
どこにいるんだか分らなくなる

運動会の終わりにメダルをかけて
親の手を引く子どもらは
何年先まで今日を覚えているだろうか
どうか思い出せるように仕舞っていてほしい

人と言うのは
と語りだすほどもなく曖昧で
昨日と同じなのにどこか違って
変わらない思い出が今日も特別に見える

2023.10.8 雑歌
雪屋双喜

記憶でできてると言ったのは誰だったか

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