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雨夜の

だから愛をもっと垂れ流して
ゆだった肌をひたりと寄せて
万事投げ捨て歌う貴方を傍で見たい

皓皓として曖昧な光の抱擁
夢に溶かして恋をしよう

忘れた青い林檎をとって
そしたら一つ投げてよこして
ほどけた砂の跡を指先でなぞる

蓋し夜を叩くにも腕が要るらしい
だから愛をもっとずっと垂れ流して
ほてっと頬を紅く染めて月の照る庭へ

不思議な音を間に流し
今夜僕らは愛を食らう
絡んだ心音が鏡に垂れる

空腹は貴方で満ちた
幸福は貴方で知った
残酷な水槽に貴方を知った

だから愛をもっと満たして
触れた端から溶けてって

2023.8.21
雨夜の
雪屋双喜

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