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詩 ベーシックな私のインカムなロス


私だけ毎日100万円もらえるタイプの

ベーシックインカムを導入して

半分くらいは毎日寄付して

残った50万で本を買う

読まれない本が毎日100冊くらいは積まれていって

ブックロス

ほんとは結局ロスしていないけど


食品を買っても食べきれない

それはたぶんだけど

はらぺこさんまで届かないから悪いこと

本を買っても読み切れない

読まれない本を

あおむしさんまで届けられたら

そう考えるのは

私が毎日100万円つかえるタイプの

グッドでナイスなコンシューマーじゃ

ないからだろう


ロスのしっぽに恋を重ねて

西海岸の愛を両手の隙間に埋めていく

道に迷ったままの単語で覚えたてのあなたを探す

そのときまでには届くようになっていて


毎日もらっても

もらっても

受け止めきれないほどに恵まれても

私はきっとロスしてしまう

ロスしたままで生きてしまう


だって本当になくしたことのない

未だ私はロスを食べない

ロスも知らない自意識を幸不幸で括られて

生まれつきの完全であるが故に不完全なまま


足りないだけ自分のままで

本を食べて

愛を飲み干して

この空さえもきっといつかは奪ってほしいと願ってしまって


不謹慎な欲望が

今も私に蔓延って

ただ傷つきたい私はロスも知らずに大人になった

薄っぺらな悲しみを私だけが知ればいい

だから


私だけが毎日100万円もらえるタイプの

ベーシックインカムを導入して

それをそのまま奪っていって



雪屋双喜
ベーシックな私のインカムなロス
2023.5.26 ~ 7.23

自由の実感には制限が必要で、権利行使の欲求は日常息を潜めてる。
潜めた息の呼吸の合間に、人は自分の本性を知るだけ

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