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読書記録 途方もなく霧は流れる



唯川恵先生著
新潮社 2012年

雨の日はゆっくり家で本のページをめくる、そんな時間もいいのかなと、思えます。

今日は、唯川恵さんの作品を初めて読んでみました。



◎あらすじ
主人公の梶木岳夫は、霧の立ち込め始めた道を軽井沢に向かっていた。

目指すのは建築家だった父が建てた別荘だった。

岳夫はもうじき50歳。そして、長年勤めた国内で有数の航空会社の営業職をリストラされたばかりだった。


岳夫には、家族はいない、いや妻と娘がいたのだが、数年前に離婚した。


リストラされたが、ある程度まとまった退職金がでたし、失業保険もでるはずだ。だからしばらくは、金銭的には困らない。

そして、そんな時期に実母が亡くなった。亡くなる前に母の世話をよくしてくれた、実姉と相談し、岳夫は遺産として、軽井沢の別荘を相続したのだった。


別荘について、父が建てた家は作りはしっかりしているものの、リフォームは必要かと思われた。

とりあえず、岳夫はガラス窓にカーテンをつけようと思い、ホームセンターを訪れる。


ホームセンターのカーテン売り場で出会ったのは、明るく応対しながら、岳夫の家の状況を掴んで、アドバイスする、まだ20代の恵理だった。


恵理の勧めでカーテンを買うための窓のサイズを測るメジャーを購入した岳夫は、恵理に
「この近所のおいしいお店」
をたずねる。

その店での出会いや軽井沢での生活が岳夫に様々な変化をもたらしていく。



◎気になった箇所

俺は50だ。誰が見たって分別のある大人だ。それなのに大切なことは何ひとつわかっていない気がする。
俺はこれでよかったのか。人生をどこかで間違えたのではないか。

中略
生きるって何なんだ。死ぬって何なんだ。
いい年をして、俺はこんな青臭いことばかり考えている。
けれど、もしかしたら、真実というのは青臭さの中にこそ存在しているんじゃないかと思うんだ。
206ページ



◎感想

✴︎岳夫を軽井沢に導いたのは、幼い頃別れた父なのだろうか、物語の要所要所で建築の仕事をしていた父が思い出されている。

✴︎✴︎
父との関係を掘り下げていく中で、岳夫は、新しい土地での暮らしを営み、挫折や失敗があっても日々くらしていく中で、再び自分の中に何かを見つけ出していったような気がする。

✴︎✴︎✴︎
私も適応障害になり、一度立ち止まり、歩みをゆっくりすることで見えてきたものを時に感じることがある。

この本は、目をつぶり深い呼吸を繰り返して、再び開いた目の前には、高い空が広がっているような、そんな読後感かもしれない。

◎今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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