読書記録 不時着する流星たち
小川洋子先生著
角川書店 2017年
久しぶりに図書館で小川洋子先生の本を手にとりました。繊細な描写の小川ワールドに浸りたくて。
でも、キチンとリサーチしてから、借りていないので、次は図書館のサイトからリサーチしようと、思っています。
「流星たち」とタイトルにあるように、世に現れたさまざまな流星さんたちのお話、短編集です。
長くなるので、一つか二つ選んで記録するのに、悩みました。どれも魅惑的な流星さんたちだから。
★臨時実験補助員
◎あらすじ
主人公の私は20代の学生。ある時、心理学研究室が募集した実験補助員のアルバイトをする。
それは、2人組になり、切手の貼られた大量の手紙を、うっかり落としたかのように、担当地区のあちこちに置いていく、というものだった。
私は自分より少し年上の女性「あなた」と組むことになった。
手紙をおくという仕事は、目立ちすぎてもよくないが、誰にも発見されなければ意味がない。この微妙な按配を見定める能力にあなたは長けていた。
あなたは、お菓子作りの先生だった。そして赤ん坊を産んで半年もたたないという呟きを裏づけるかのように、時折、ワンピースの胸の辺りがうっすら染みが滲んでいた。
◎気になった箇所
92ページ
別の人と二人組になってみるといっそう、いかにあなたの見つけ出す置き場所が魅惑的であるか、いかに私たちのコンビネーションが絶妙であったかが、よく分かった。
あなた以外の人とでは、手紙実験の補助員はただ歩き疲れるだけの退屈な仕事に過ぎなかった。
◎感想
何気ない仕事のなかに、丁寧にその意図を汲んで、よりよく効果的な結果が得られるような、行為に高めていける、「あなた」
そのあなたの存在に気づき、共有する時間を大切に思い、別れの切なさすら感じる私。
そんな出会いは人生の中で、そう多くない。目の前にいる人との交流のなかに見えない大切なものを、探していけるといいと、思う。
小川先生のこの短編集は、海外、国内を問わずドキュメンタリー、事実に基づいて、そこに居合わせた人の日常を膨らませ、ちょっと不思議で魅力的な物語に仕上げている。
正に小川洋子ワールドだ。
今、私の前を通り過ぎていく、あなたにも、私には見えない物語の世界が広がっているのだろうか。
◎今日も最後まで、読んでいただきありがとうございました。
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