GitLabに学ぶ世界最先端のリモート組織のつくりかた (第四部)9章10章 読んだまとめ


第4部は会社としての制度について主に触れている。
章の構成は下記の通り。
・9章:パフォーマンスに関する考え方
・10章:人事制度の運用について
・11章:マネジメントについて
・12章:メンバーのコンディションについて
その中で記事では9、10についてまとめていく。

個人のパフォーマンスを引き出す

「成果」と「行動」の2軸で考える。
それぞれに対する目標設定が重要で、組織におけるフォーカスポイントに対して、自分がどの部分で貢献できるかを合意する。
成果は主に役割に対するアウトカムを意味する。
行動はグレードに応じたコンピテンシーをどれだけ発揮できるかという観点で計測する。(具体的にはGitLabで規定したものが本に掲載されている)

OKRとノーススターKPI

OKRは組織として重要な何かを明確にすることでリソースを集中させるもの(ここで詳しくは言及しない)
OKRにリンクする中でも全社員が注目する唯一の指標を「ノーススターKPI」という。プロダクトの成長に必要不可欠な指標である。
OKRとKPIを組み合わせてフォーカスと責任をはっきりさせる。

意思決定プロセス

一般的に目にする意思決定プロセスは2種類ある。
・ヒエラルキー型(トップダウン)
・コンセンサス型(ボトムアップ)
これらはスピードと納得度を含めた質のトレードオフになっている。

GitLabではこれらを両立させる仕組みを採用している。
「データ収集フェーズ」と「意思決定フェーズ」を明確に分割し、それぞれプロセスを動かすやり方をしている。
情報を可能な限り集め、出揃ったらDRIが意思決定を行うやり方。
DRIの決定に対して反論・疑問は歓迎する。

DRI(直轄責任者)
DRIの決定には従うというルール。正しいかどうかはユーザなどのフィードバックで検証することで明らかにする。
「同意しない、コミットする」が原則。
多数決で決めるは基本NG。

スキルと意思

チームに課題がたまり(1on1などで不満が出てきたりする)思いやりがない態度、振る舞いの懸念が表面化することがあるかもしれない。
チームのパフォーマンス低下に繋がるため、「スキル」「意思」のどちらに問題があるかを特定して、根本的に課題を解決していく。

スキルの課題は技術力、ソフトスキルなど。
対応策としては原因を特定した上でコーチング・リソースの提供・メンターをアサインなどで改善を目指す。
意思の課題はよりセンシティブなケースがある。
GitLabではチームメンバー・リレーションズ・スペシャリストというグループがあり、関係性構築の専門的なノウハウを貯めている。

不健全な制約に抵抗する

ルールが形骸化などした時に、健全にルールの見直しを行う。
毎年ルールやプロセスに無駄がないか見直す時期を設定している。
指摘される側にルールも効果的。例えば理由に「前からやっているから」を採用してはいけない、など。

Key Talent

会社の状況を左右する重要な人材をKey Talentと言ったりする。
退職すると機能不全に陥りそうな、代役が務まらない人。
(人事的な評価に有利になるということではないことに注意)
会社側としては突然の退職とならないよう丁寧に向き合う必要はあるが、必ず後継者の育成はしてもらう。
Key Talentになる人材は成長する機会や適切な報酬を常に求めている。これが現職で実現できない場合に退職を考え出す。

人事制度

GitLabでは制度のほとんどをWebに公開している。外部に公開することで順守徹底する意思にもなっている。
主な特徴は下記の通り
・等級はJob Gradeを基準に決定しており、どうすると次の等級へ進めるか定められている
・マネジメント・個人貢献というテーブルがそれぞれ用意されている
・四半期に一度昇格が行われている
・マネージャーは昇格ドキュメントを作成し、メンバーを選出
・ポジションが空いた場合は社外にも公開される

タレント評価

9-BOXという「パフォーマンス」と「成長力」を軸に3段ずつ組み合わせ9つのボックスに分けた評価軸がある。これを元にメンバーへのキャリア開発などについてのフィードバックを1on1を通じて行なっている。

パフォーマンス評価
2軸の視点で評価しており、具体的には以下。
・成果(ポジションで果たすべき責任やKPI指標など)
・コンピテンシー要素やリモートワーク能力など
割合は、成果:コンピテンシー=6:4。
評価結果としては「Developing(開発中)」「Performing(貢献)」「Exceeding(卓越)」の3段階で行なっている。

成長力評価
特定の期間で生産性を高める行動を取っているか。才能とは異なることに注意。
こちらは定性的な視点が必要になる。4軸の視点で評価している。
・適応性:新しいスキルを学んで活用している
・拡張性:領域外への責任を拡張する性質
・一貫性:変化がある状況でも成果を出し続ける能力・コミットメント
・セルフ・アウェアネス:自らを客観的に見つめる能力
こちらも同じく評価結果を「Developing(開発中)」「Performing(貢献)」「Exceeding(卓越)」の3段階で行なっている。

報酬

公正さや透明性をベースに設計されている。
(Salesなど例外はあるが)社内で公開されている報酬計算システムに則って同じルールで適応されるので一貫性がある。
地域によって係数はある。
メンバー個人で他のメンバーの活躍を推薦し、1000ドルのボーナスを支給される制度がある。これによりお互い称賛し合うモチベーションにもつながっている。
評価制度との関連は年に一度。評価に基づいて報酬額が見直される。
基本下げることはない。財務のインパクトとしては微々たるものであるので、モチベーションを上げる方向で向き合っていく。

後継者計画(サクセッションプラン)は経営課題として用意

経営を安定化させるためには冗長性の確保が必要。リスクヘッジの側面もあるが、将来を担う優秀な人材と能力開発による成長という側面でもある。
部長クラス以上の役割を持っているメンバーがセクセッションプランを実施する。現状と将来のビジネス目標を見た上で、後継者候補がどれくらいで育成していくのか見極めていく。後継者がいない場合は外部リソースや採用を検討する。

とはいえ全ての人が昇格を目指す必要もない。
どっかのコンサルみたいな昇格or退職みたいな極論という考え方は持たず、大きな役割を持ちたくない人はそれで良しとしている。ここの温度感のすり合わせをマネージャー・メンバー間で揃えていく必要がある。

読書会の感想

DRIの役割が大きすぎる、やりたい人いるのか?という意見を持つ人が多かった。これは本人の力量もだが、周りの理解(賛成しない、コミットするのようなもの)がないと難しい印象。
DRIはやりたくないという人が多数だが、チームメンバー・リレーション・スペシャリスト(仲裁屋と表現されていた笑)はやってみたいという人が何人かいた。
わたしは正直どちらもやりたくない。

意思決定のやり方などを通じて、実際に自社に当てはめた時に
・現状は何が当てはまるのか
・どうしていくのが理想なのか
という話ができたのは面白かった。
実際この辺課題かもねーという話で気付きや課題意識を複数人で持つことはお互いの認識を揃えることに意外とパワーもいるので、輪読会という認識が揃うタイミングは貴重な機会になっていると言えそう。


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