GitLabに学ぶ世界最先端のリモート組織のつくりかた (第四部)11章12章 読んだまとめ


マネージャーの役割とマネジメント

マネージャー不要論が流行った時期があったようで、実際にGoogleでマネージャー撤廃の動きを試みたことがあった(Project Oxygen)。
結果はパフォーマンスの低下につながり、マネージャーは必要だということを示す形になったらしい。

親愛さはパフォーマンスを向上させる

リーダー・メンバーの関係性が成熟すると、ネガティブを含めたより良いフィードバックを求め合うようになる。
これらはメンバー間の性格の相性がどうしても大事になってくる。マネージャーは関係性の構築をする必要がある。
ダニエル・キムの成功循環モデルでも指摘されている。

ダニエル・キムの成功循環モデル
(④から)→①関係の質
→②思考の質
→③行動の質
→④結果の質

マネージャの責任:メンバーを繋ぎ止める

「社員は会社を去るのではなく、上司を去る」と言われるほどマネージャの影響力は絶大。メンバーが減ることの多くはネガティブが大きい。
GitLabではメンバーをどれだけ繋ぎ止められているかという在籍率をマネージャーの定量的な数値目標として管理している。
一方で退職することも健全な選択肢としても捉えているので、全てを否定するわけではなく、活躍する意欲・能力があっても活かせない状況を避けたい。
日常的にメンバーのキャリア計画と構築に寄り添って支援する必要がある。
メンバーは「活躍できて」「能力が成長できて」「報酬が見合ってる」なら辞める理由はない。

マネージャの責任:メンバーの目標の設定

まずは目標設定でフォーカスを定めることが重要。ここで良い問いが立てられれば半分は終わりのようなもの。
GitLabで目標を立てるために活用している「SMART」というフレームワークがある。
・具体的(Specific)
・計測可能(Measureable)
・達成可能(Achievable)
・経営目標との連携(Related)
・時間制約がある(Time bound)
の5つを守ること。

マネージャの責任:リアルタイムフィードバック

定期的に良質なフィードバックを行うことは避けられない。
メンバーが良質に(ポジティブに)受け取ってもらえるよう日常的な信頼関係が重要。
GitLabではフィードバックを提供する「クルーシャル・カンバセーション」というフレームワークがある。(ただし、この本にはクルーシャル・カンバセーションについての具体的なものは載っていない)
対象は「反対意見」「重要な結果」「強い感情」に踏み込む対話である。
危険はないよ、認識揃えよう、目的は一緒だよというノウハウを提供されている。

フィードバックが最も効果的に機能するのは事象が起きた直後。理想を言えば常にフィードバックしている状態が良い。時間が立つと効果はどうしても薄まる。
マネージャー自身もフィードバックに対してどう向き合うかも重要。メンバーからのフィードバックに丁寧に向き合う姿を見せることで信頼関係も向上する一因となる。

パフォーマンス不足の対応

これがマネージャの最も困難な役割のひとつ。伝えられる側、伝える側双方にストレスがかかる。しかし放置するとチーム全体への悪影響だったり、優秀なメンバーの流出にも繋がりかねないため、向き合うしかない。
メンバーもあえて低いパフォーマンスとしているわけではないので、根本原因に向き合っていくしかない。
可能な限り具体的な実例とともに説明を行い、協力するという前向きなメッセージとして受け止めてもらうことが望ましい。
1ヶ月間サポートして効果が見られない場合は、GitLabの場合「チームメンバー・リレーションズ・スペシャリスト」に協力を仰ぐこともある。
それでもだめな場合は会社公式プロジェクトとして設定。(PIP)

PIP(パフォーマンス改善計画)
多くの企業ではリストラ施策として解雇を正当化するために活用してきたが、GitLabでは改善のプロジェクトとしてコミットしている。
・目標
・現状の評価と改善の方向性
・改善の手順
これらをドキュメントに書き留めていく。マネージャは改善を望んでおり、サポートする旨を伝えながらPIPに取り組む。
チームメンバー・リレーションズ・スペシャリストとも連携する。
ただしPIPが行われていることは他のメンバーに開示はしない。

マネージャーの増やし方

GitLabでは5つのコンピテンシーを設定し、マネジメント能力の開発プログラムとして提供することで、安定的にマネージャが活躍できる環境を用意する。(開発プログラムの具体はこの本には記載なし)
【5つのコンピテンシー】
・感情的知性(EQ):チームに対する共感や理解、課題の客観的視点
・FB文化の体現:自信がFBの模範となる姿を見せる
・コーチング:メンバーを導くための能力
・衝突の解決:望ましいコンフリクトを促し、避けるべきを排除(社内政治などは避けるべきに含まれる)
・高業績チームの構築:継続的に成果を残す

コンディショニングを実現する

リモートワークは心身のバランスを意図せず崩しやすい特性はある。
パフォーマンスを「あげる」ことも大事だが「下げない」ことを意識することも重要。

感受性の違いを理解する

メンバーによって感受性は異なる。自分はOKでも他人にはNGということ・ものが存在することは留意する必要がある。
感受性が高いと周囲の環境から影響を強く受けやすい。
逆に低いと、周囲に注意を払わず行動するため、賛同が得られにくい。
リモートワークでは支援を必要とするメンバーに気づきにくい場合があるため、インフォーマルコミュニケーション(雑談など)の機会を設ける必要はある。

休暇を取らない人がいることは弱点

理由は2つ。「①疲弊」と「②属人化」。
休むと他の人がカバーする体制が生まれる。また、他の人が業務を担当することで異なる視点が加わり、より良い進め方の発見の可能性もある。
属人性を高める振る舞いをGitLabでは「知的謙虚さが欠けている」とみなされる。
GitLabでは1年で少なくとも2週間連続の休暇を取ることを推奨されている。

休暇は完全に休む!

どうせ休むなら仕事の連絡すら見ないくらい徹底的にせよ!
そのためにGitLabで行っている工夫は下記の通り。
・休暇日数の2倍以上前にチームに通達(10日休むなら20日前には)
・不在の自動応答を設定
・カレンダーにも不在を設定(自動で辞退させる)
・重要なプロジェクトは十分な説明をマネージャにする
休暇明けは正直すぐにパフォーマンスは出ないことは把握済み。それでも休暇はとろう!
リフレッシュしたなら戻った時にメンバーと気軽に雑談でも繰り返し、意図的に場を設けて話をしよう。

運動はいいぞ (?)

脳を整えるためには毎日20〜30分のウォーキングを続けると良い。うつ病・認知症の予防などにもこれが効く事例がある。
リモートワークだと通勤の時間もなくなり、階段の登り降りも無くなり、季節の移り変わりを感じる機会も減り・・・という状況は知らず知らず脳を蝕む可能性がある。(あくまで可能性)
意図的に週2回・20分以上の有酸素運動は人体のメンテナンスのために推奨している。(あくまで推奨)

読書会の感想

全体を通してマネージャの負荷が大きいという感想が目立った。(マネージャになりたくないという方も)参加者はエンジニアがほとんどだったので、自分たちも去ってきたよなぁと。
リアルタイムフィードバックについて、
・中長期のフィードバックには向かないよね
・短期間過ぎても個人の調子のブレがあるので困るところもありそう
という話も出た。何にでも「これやれば解決!」な銀の弾丸は無いので、武器の一つとして持つが良いんだろうなと。

全体を通して日常的に信頼関係を作ることがスタートライン。
インフォーマルコミュニケーションを意図的に作ったり提供したりするなど工夫をしつつも、自然発生する雰囲気をどうすれば作っていけるか考えていきたい。
ていうか・・・マネージャって大変だね。とはいえマネージャ自身も社員の一人でしかないので、部下とそりが合わずに辞めるケースもある事を知っておきたい。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?