Measure What Mattersの第一部読んだまとめ

いわゆるOKRと呼ばれる取り組みについて書かれた本。
会社でも取り組み始めたし良本との話だったで内容をまとめる。

歴史的な背景

アンディ・グローブという人物がこれまでの専門知識を持つものが偉いという評価基準から、実績重視へと導いた。
「あなたが何を知っているかなどどうでもいい。重要なのは実行と実績だ」

この原型はピーター・ドラッガーの手法に従っている。
命令を下す者と従う者というモデルを完全に否定して、信頼と尊敬に基づくコミュニティになるべきだと言っている。人は進む道を自分で選択すると最後までやり切る可能性が高まる。

アンディ・グローブが残したOKR概要
・絞り込む
・目標はボトムアップで
・押し付けない
・常に柔軟な対応で
・失敗を恐れない
・手段であって武器ではない
・辛抱強く、決然と

その最たる例としてインテルの「クラッシュ作戦」が挙げられる。
インテル製品の強豪が現れた段階で、何に注力するか。(新商品を作るのか、売り方を変えるのかなど)それをOKRを使って全社員に展開し、急旋回させる。
意思決定から行動までの速さが功を奏して大成功を収めた事例だった。

優先事項にフォーカス

多くの企業 (企業の2/3程度) が組織に最重要な事項が伝達できていないと感じている。更に幹部も最優先課題を2つ以上挙げられる人物は半分程度にとどまった。
何をだけではなく「なぜ」がセットで伝えないと、従業員のやりがいを満たせない。うんざりするほど繰り返してようやく耳を傾ける。

OKRの「目的」と「主要な結果」はどちらも大事。
目標は人々を鼓舞させるもので、主要な結果は身近なもの。
主要な結果は次の特徴を持出せると良い。
・3〜5つである(多いと散漫になる)
・達成困難である

1年以上の長期と4半期程度の短期のOKRを併用するプロセスもある。
目を向けるのは短期の方だ。
期間が厳密に決まっているわけではないので、会社のフェーズなどによって変えていくと良さそうだろう。

ただし、フォード・ピントの悲劇のような「主要な結果」は別の重要な特性を犠牲にして達成するようなことはあってはならない。
数値目標となる主要な結果は品質を示すものでなければならない。

また、OKRは途中で修正したり破棄することもできることは忘れてはいけない。
目標や主要な結果が決める段階で全て見えないこともある。

OKRは多くの提案にノーを言えるようにするためのもの。絞り込むことが大切。

会社もそうだが、個人レベルでも役には立つ。
「これが自分のゴール。今日すべきことはなんだろう」
そう考えると周りのことよりもそのゴールについて考えることができる。
有能なリーダーは自分が受け持っている仕事を手放していく。要するに分業していく。

OKRは初めから上手くはいかない。振り返って改善しながら自分たちに合うものにしていこう。
導入はリーダー達から行うのも良い。リーダーが示すことで自ずと付いてくる。

アラインメントと連携

目標は公開した方が効果的だ。透明性高く堂々と反対意見を述べられると疑心暗鬼はなくなる。足の引っ張り合いもなくなる。
少なくともそう言う研究結果はあるようだ。(それが絶対とも思わないが。)

会社の目標が定まれば、全従業員は組織のビジョンに合わせる必要がある。これをアラインメントという。
このアラインメントは難易度が高く、戦略実行の最大の障壁となることも多い。

勘違いしてはいけないのが、上位下達のみだといけない。次の4つの弊害が生じるリスクがある。
・機敏性の欠如: 目標設定に時間がかかる
・柔軟性の欠如: 目標設定が手間になることで途中での見直しはしなくなる
・コントリビューターが軽んじられる: 最前線の従業員の意見は無視される傾向にある
・組織の連携が一面的になる: いわゆる縦社会になりがち

googleの20%ルールはある意味上位下達の反意語かもしれない。Gメールはボトムアップから何かを生み出すことは企業にとっても良い最たる例だ。
目標はどのように達成するかは自分で決める。他人に決められると意欲は低下する。

目標を公開すれば部門を超えた連携に良い影響を与える。
どの部門にいても何を遂行しているのかが分かる。透明性によって誰かが失敗ばかりすれば皆が調べ出す。マネジメントの負担が0のまま連携が生まれる好循環が生まれる。

アラインメントは突き詰めると社員に会社は何を期待するかを分からせること。
ある部門のOKR達成には他の部門の協力が不可欠なことがある。部門間のアラインメントは必要不可欠で、相互依存性を明確にするのが大事。
一例ではあるが次のような基本的な問いに応えられる必要がある。
・すべての部門が必要とする協力を受けられているか
・負荷がかかり過ぎている部門はないか
・負荷がかかり過ぎている部門はどうやって目標を現実のものにできるか

暗黙の依存関係は怖いものだ。M&Aなどがあった場合は余計に。
異なる企業文化があるためアラインメントが上手くいかず、様々な部門が期待を寄せることもある。
その場合はOKRを使って一方的にでも手の内を全てさらけ出そう。限界があることが伝わり、指摘もできるようにもなる。

フォーカスとアラインメントは表裏一体だ。どちらもかけてはならない。
フォーカスだけが先行して別のチームで異なるモノを作ったりする可能性もある。

トラッキングと責任の明確

OKRは生き物で、常に状況によって変化し適合するべきだ。つまりトラッキング(追跡)ができている状態だ。
トラッキングするためには世にあるプラットフォームを使うと良い。デジタルなダッシュボードを数クリックだけで編集、評価ができる。
これを行うと次のOKRの価値を引き出せる
・全員の目標が可視化: 上司だろうが部下だろうが
・エンゲージメントを促す: 意欲の維持につながる
・社内ネットワーキングを促す: 同じようなことをやっている人が分かる
・時間、コスト、ストレスを軽減する

OKRを機能させるにはチーム全員で一斉に取り組む必要がある。
腰が重い人などもいるだろうが、これに一番効果的なのは「OKRの番人」を任命することだ。
何かメールでもなんでもいいので送り続けるのが重要とのこと。

期中にトラッキングするのは%ゲージのレベルで示してあると良く、頻度としては週次が望ましい。
行動計画がなければ目の前の事象に振り回される。
・目標が青ゾーンならばそのまま継続が良い。
・黄色ゾーンならば更新すると良い。
・赤ゾーンならば有用性がなくなっていないかを意識して、廃止するのも良い手だ
・必要に応じて新たなOKRを開始することもある

主要な結果の採点を0〜1.0の尺度で測ると分かりやすい。
0.6以上なら良いと言えそうなレベルだ。
ただし、数字に固執するのも良くない。何かを3つ達成する目標だったとして、2つしか達成できなかったとしても、そのうちの1本が場外ホームランだったのなら0.9としても良い。あくまで評価の参考とするのが良い。

また、経験したことは必ず振り返りを行う。
教育哲学者のジョン・デューイはこう言う。
「われわれは経験からは学習しない。経験を振り返ることで学習するのだ」

ストレッチ

目標は困難であるほどパフォーマンスは上がる。ストレッチ目標は当たり前をとんでもないレベルで行うと言うのも良い。
Googleでは10倍主義という目標を10倍して一見無理そうな目標を立てることがある。実際Gメールは初めストレージを1人100MB目標だったのが、それを捨てて1GBストレージの提供に至った例もある。
そのためにはアクションも大事だが、何を打ち切るかという意思決定も重要だ。

限界に挑戦する欲求というものがあるという心理学者がいる。
次の5つの欲求が順番に土台を築いていく。ピラミッドの頂点が自己実現の欲求だ。
・生理的欲求
・安全の欲求
・所属と愛の欲求
・尊厳の欲求
・自己実現の欲求

状況に応じて飛躍ではなく日進月歩を選択することもある。
主要な結果(目標)については売上高や予想ユーザー数のみではなく、「○○までにスタートさせること」など期限にしたり、「この対象にメールを送る」など無難にするなど。
とはいえ、時には発破もかける。

少し先の進歩を見るなら、現状のものを紹介料するだけで済むが、100倍のものを作るとなった途端、0から考えることになる。
更にリーダーは部下に挑戦させるため目標を引き上げることも必要だ。
Googleの目標を高めることの上手いラリーはこう鼓舞する。
「自分で嫌になる程ワクワクしてほしい」
「不可能と言われることを健全に否定してほしい」


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