見出し画像

ビジネスモデル研究:日立物流

ES

今回の分析は日立物流さん。
同社が掲げる【スマートロジスティクス】の実現で欠かせないのは、高精度な需要予測と高効率な在庫管理

とりわけtoC製品のメーカーさん向け物流となると、考慮に入れないといけないのは「XXのスーパーではXXというイベントを行うから10%増し」などの、担当営業しか知らない情報。

この情報は受発注データから取得することはできないため、そのまま需要予測を行うと誤差になります。

そのためイベント要因性がある製品は、担当営業に「なんらかの形でデータ入力」してもらうことになります。これが実はすごい大変(だって、現場の人の工数上がりますから)。

そこで今日取り上げるのは、このイベントデータを入力する仕組みと、そのデータを需要予測に反映させる仕組み(特願2018-85182)についての日立物流さんの出願を通じて、いかに現場にデータを入力させるモチベーションを構築しているのかみてみましょう。

ビジネスモデル

既存の在庫管理システムへの実装、オプション料金の徴収。またアライアンス先へのOEMならびに販売代理店へのサービス提供。

技術

長年のtoB向けの在庫管理・発注管理システム構築のノウハウ。最近では機械学習などのAI系処理を既存提供システムへ導入することも盛んに実施。

解決すべき制約

本来「過去の受発注データ」という100%客観で作成した需要予測に、あえて「現場の営業の感覚」という主観要因を取り込むというのは、データサイエンス的には好手ではない。

一方で現場運用として「100%機械が需要予測したもの」を受け入れられるかというと、実はそれも心的ハードルが高い(これは現場を知らないとわからないと思う......弊社もこれで昔苦労した)

世の中の需要予測AI系のプロジェクトのほとんどにおいて、この「データサイエンス的アプローチと現場の(ファジーな)納得感」をいかに得るのかというジレンマが、DX実装の大きなハードルとなっているのだ。

制約解消方法

そこで「営業があらかじめ入力しておいたイベント要因」を使った予測を、「あえて営業に確認してもらって、感覚にあうものを選んでもらう」という確認ステップを踏むために、わざわざインターフェースを用意しているところがミソ(図中22:可視化部)。

画像1

(特願2018-85182より抜粋。難しそうな図だが、やってることは出荷実績と変動要因を一緒に検討して、出荷予測するよってこと)

これはノウハウ業務の機械化に対する現場の反応を知った上で、効率化を図るため編み出された折衷案だと考える。

在庫管理する現場だけでなく、システムもアルゴリズムもわかっているからこそ書けるこの特許。日立物流さんのDXの取り組みの深さが、このたった1報から伺い知ることができます。すげえ。

横展開

これ、実はアルゴリズム特許に見せかけたインターフェース特許だと思うんですよ。全国に営業が各小売店担当してるメーカーさんや卸ってざらなので、インターネットさえあれば、データベースには本来自動で蓄積されない現場のイベント情報を、中央で集約して、より高い精度の需要予測ができるようになる。

データの利用規約さえなんとかなれば、イベント要因のパターン化、またそれを学習した機械学習モデルのAPI売り(OEM)も可能なんだよな、と夢が広がります。1品番・1コールあたり0.01円とかで課金、みたいなビジネスの出来上がりです。巨人だからできるビジネス。

さいごに

日立物流さんのDXへの取り組み凄まじいです。私たちのようなベンチャーは、こういった巨人の動きを注視しないとぺちゃんこになってしまうわけですが、こういう会社さんと一緒に取り組める可能性があるのもベンチャーの醍醐味です。たのしい。

🥝

=======

TRYETINGでは「ノーコードAIクラウド・UMWELT(ウムヴェルト)」を開発・提供しています!Spreadsheetなどをデータベースがわりにしてデータ処理・機械学習などを、ノーコードで簡単に作れる、RPA・AI処理・サーバーが一つになった製品です。

もし工数大きい業務の自動化・高精度化・データ活用などのDX課題を抱えている場合は、お気軽に15〜30分程度で無料相談乗れますので、お問い合わせください!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?